上総博物館,琵琶湖文化館など

2008年度の開始する4月1日をタイミングとして,博物館の閉館や名称変更などがあちこちで行われています。
メモがてら,そのいくつかを紹介。いくつかは,追記予定。

千葉県立上総博物館
 2007年5月14日〜2008年3月31日まで工事のため休館中でしたが,3月31日をもって県立博物館としての使命を終了し,4月以降は木更津市立の博物館として地域の新たな教育拠点として生まれ変わるとのこと。
矢板市立郷土資料館
 1980年に開館。建物の老朽化等もあり,移転のため,4月1日から当分の館閉館とのこと。
目黒区守屋教育会館郷土資料室
 1971年の開設。3月31日をもって閉館。なお,目黒区では今年9月に「めぐろ歴史資料館」を開館予定。
横浜こども科学館
 横浜市行政の方針に従い,ネーミングライツを導入。4月1日から名称(愛称)を「はまぎん こども宇宙科学館(Hamagin Space Science Center)」に変更する。ネーミングライツの趣旨に則り,愛称の広範な周知と浸透を図るため,正式名称ではなく,愛称のみを使ってほしいとのこと。
滋賀県立琵琶湖文化館
 1961年開館。公の施設の見直しの中で3月30日をもって展示公開終了し,休館。なお,コレクションと研究機能は保持し,展示や講演会は他の施設を活用して実施していくとのこと。再開を目指す文化館の取組と,それを支援する人々の活動を応援します。

7月16日追記

京都新聞の7月16日の記事から

重文含む16点を所有者に返還
休館して3カ月がたった琵琶湖文化館滋賀県大津市)がこのほど、重要文化財を含む寄託品3件16点を所有者に返還した。いずれも「展示・公開という前提がなくなった」との理由で返還を求められたという。文化館は「滋賀の文化財は滋賀で保管したい。将来のためにも、持ち主には引き続き寄託をお願いしたい」と訴えている。
 返還したうち、重要文化財は国所有の金銅種子華鬘(しゅじけまん)と刺繍(ししゅう)三昧耶幡(さまやばん)。いずれも神社の装飾具で、兵主大社野洲市)所蔵を文化庁が買い上げ、文化館に寄託していた。休館を機に、奈良国立博物館奈良市)に移された。
 このほか、2件は個人所有で、絵画など5点と陶芸など工芸品9点。いずれも未指定品という。また、別に個人1件から返還要請があるという。
 琵琶湖文化館は県内の個人や寺院から寄託を受けた文化財5000点余りを収蔵する。老朽化や耐震上の問題から今年4月に休館し、文化財の県外流出が懸念されていた。文化館は「今後は文化財の展示・公開は他県立施設を利用して考えたい。県の財政改革プログラム後に文化館がいい方向に進むためにも、所有者には理解を求めたい」としている。

組織としての琵琶湖文化館は存続しており,また適切な保管能力は持っているものと思われます。
 とはいえ,公開を行わないということで,寄託品の返納を求める人が出てくるのも理解できないわけではありません。
文化庁所有の2点は,保管・活用の能力のある奈良国立博物館に移されたということで,滋賀から離れたのは残念ですが,人類共通の財産としては適切な処置であろうと思います。
一方,個人所有のものについては,文化財としても指定を受けていない,ある意味「完全な私有財産」ですので頭が痛いところですが,当然博物館クラスのモノたちでしょうから,個人保管ではなく,適切な保管と できれば公開ができる博物館(県外でも国外でも良いですけれども)に再寄託していただきたいというのが個人的な願いです。
一般への公開機能をほとんど有しない,しかしコレクションと研究には定評のある博物館も国際的には存在しています。琵琶湖文化館はいま,「一時的に」休館していますけれども,公開承認施設(文化財保護法第53条)として認められた施設であるだけでなく,全国16館しか認められていない勧告出品館(文化財保護法第48条?:詳細は未確認:勧告・承認出品施設とも言う)です。寄託者には冷静な対応を期待したいところです。

8月5日追記 木更津市郷土博物館金のすず(旧千葉県立上総博物館)について

8月5日の毎日新聞千葉版の記事から

木更津市郷土博物館金のすず:夏休み期間、無料開放 10月の再出発を前に
県から木更津市に譲渡された旧県立上総博物館(同市太田)が「市郷土博物館金のすず」として再出発、10月1日に開館する。夏休み期間の31日まで、特別開館として無料で開放している。
 同博物館は初の県立博物館として1971年に開館、上総地方の文化と歴史の移り変わりを伝えてきた。昨年4月、県から市に譲渡された。
 特別開館では「書画の魅力・千代倉桜舟の世界」と題して、地元出身の書家、千代倉桜舟(故人)の作品を紹介。同市が所蔵する地元出身の画家の作品も展示している。
 また、「金鈴塚の輝き」として、金鈴塚古墳から出土し、国の重要文化財に指定されている約1400年前の金鈴や太刀、土器なども出品した。展示室の一部を開放し、職員が展示物を整理する様子も見学できる。
 3階集会室には「むかしのあそびコーナー」を開設。折り紙、塗り絵、お手玉、けん玉、ゴム鉄砲、ビー玉などを置き、昭和の遊びを楽しんでもらう。【児玉賢二】

「金のすず」とは,木更津市太田の前方後円墳「二子塚」で1950年8月に金の鈴が見つかり,金鈴塚古墳と名付けられたことに由来しているようです。ここには木更津市立金鈴塚遺物保存館がありましたが,県立上総博物館の市への移管とともに一体的に整備するため,やはり2008年3月末で閉館となっています。

9月26日追記

9月21日に,目黒区立第二中学校跡地にめぐろ歴史資料館がオープンしています。

10月2日追記

10月2日の東京新聞千葉版の記事から

『新たな文化拠点に』 木更津 県から移譲の博物館開館
重要文化財の金鈴塚古墳出土品などを収蔵する木更津市太田の市郷土博物館「金のすず」が一日、オープンした。県立博物館を地元に移譲した最初のケースで、市は「新たな文化拠点として活用したい」としている。
 県は財政再建の一環で県立博物館の地元移譲を進めている。県内で最も古い県立上総博物館を耐震化して今年四月に市に移譲。市は隣接する金鈴塚遺物保存館を併合し、市立博物館として再出発させた。今後上総博物館時代の「友の会」を土台にしたサークル活動も再開する方針。
 館内では、六−七世紀の金鈴塚古墳で見つかった直径約一センチの金の鈴などの出土品約二百七十点を展示。上総掘りの道具や、市が所有する書画も併せて紹介している。
 同日の記念式典に出席した水越勇雄市長は「新たな芸術文化の核施設と位置付け、潤いと生きがいが持てる町づくりに役立てたい」とあいさつ。録音した金の鈴の音色を披露し、テープカットで開館を祝った。
 開館は午前九時−午後五時。月曜休館。中学生以下と六十五歳以上無料。 (岡村淳司)

おめでとうございます。より市民に近いところで,博物館の活動,研究や資料の保存,教育活動が展開されることを期待します。
 そして,さらに,周囲市町村の文化機関との連携,県立博物館との連携を引き続き,強化されることを期待します。
 少なくても,県立博物館は,当博物館が市に移管されたからといって,「もう知らない」というスタンスではなく,対等の博物館としてより積極的に連携協力に努めていただくよう期待します(もちろん干渉せよということではありません)。

2009年5月7日追記

まだ行けておりませんが,2008年9月21日に目黒区めぐろ歴史資料館がオープンしております。職員総数7名(内学芸員1名)とのこと。学芸員も少ないな。