公立の美術館・歴史博物館の組織・運営状況に関する調査結果(文化庁)

1月21日の朝日新聞の記事から

館長の半分は非常勤 公立の美術館・博物館調査

2008年01月22日10時22分

 館長は半数が非常勤、かたや数少ない職員が何とか切り盛り――。文化庁が全国の公立美術館・博物館の運営実態を、初めて調査した結果がまとまった。多くの施設で人もお金も足りない窮状がうかがえる。
 03年の指定管理者制度の開始など、美術館・博物館をめぐる環境が大きく変わったことを踏まえ、現状を分析しようと、同庁が07年1月、全国の558館へアンケートを送り、550館から回答を得た。
 調査によると、館長は常勤49%、非常勤51%。経歴別では行政のみの経験者が55%で最も多かった。
 館長以外の職員数の平均は、都道府県立22人、市区立9人、町村立5人。結果をもとに同庁が試算した平均像では、町村立施設の場合、職員5人で、開館は年300日に及ぶという。
 支出に目を転じると、資料収集費(06年度)は1000〜50万円の施設が19%。予算を計上していない所も40%あった。
 一方、指定管理者制度を導入しているのは17%にとどまった。うち財団法人の管理者が91%で、株式会社・有限会社は8%。委任の範囲は84%が「学芸業務と管理業務の両方」と回答した。制度が施設の組織や運営の現状にどう影響しているのかについて、調査は具体的に分析していない。
 同庁美術館・歴史博物館室の関根新市室長は「運営の継続性を重視しているからか、自治体による直営が意外と多い。財政面などで厳しいこともわかったので、各館が元気になり、地域に密着して活動できるような対策をとりたい」と話している。

元データは,「『美術館・博物館支援方策策定事業〜まちに活きるミュージアム〜』における公立の美術館・歴史博物館の組織・運営状況に関する調査結果」から。
2007年12月5日発売の文化庁月報12月号に,調査結果の概要が既に収録されています。公表されてからしばらくたって,今回朝日新聞に掲載されたわけですね。
支援方策策定事業自体の目的は「公立館の管理運営に資するため、ガイドラインを作成する」こと。2007年度は私立の美術館・歴史博物館の組織・運営状況の調査を行うこととなっているようです。


今回公表された2006年度調査は,対象は,公立の総合博物館,歴史博物館,美術博物館のうち,博物館法上の登録博物館及び博物館相当施設。550館が回答(うち美術館が192館)。回収率が98.6%というのは,さすがに国が行う調査ですね。


指定管理者については,株式会社・有限会社が8館(1.5%)。そもそも指定管理者制度の導入のしやすさも館種ごとに異なりますので(ある調査では民間事業者が指定管理者となっている割合が,科学館,歴史博物館,美術館で高く,総合博物館,郷土博物館,自然史博物館は0という話も),館種を広げると割合はもう少し低くなることも予想されますが。
館長の勤務形態は常勤と非常勤がほぼ同数。非常勤館長の場合は,館の運営へのコントロールがどうしても制限されがちですので,いわゆる最高経営(執行)責任者≠館長という館が結構多いことがわかります(そもそも最高経営責任者という概念がない館,即ち自律性を持った組織という形態を取っていない館も多いことが予想されます)。
常設展観覧料が大人を含め無料の館は95館(17%)。
企画展は515館(94%)が実施。
都道府県立博物館を中央値で見ると,館長を除く職員数が19人(うち学芸系職員10人:最大57,最少1)。管理費・事業費支出額(人件費・資料収集費を除く)が1億4000万円。入館者数が55000人。
 市区立博物館では,館長を除く職員数が8人(うち学芸系職員3人:最大26,最少0)。管理費・事業費支出額が2800万円。入館者数が21000人。
 町村立博物館では,館長を除く職員数が5人(うち学芸系職員1人:最大7,最少0)。管理費・事業費支出額が1200万円。入館者数が10000人。
 といったところと。
まあ,一つ一つの博物館のミッション,役割,地域との関係性は全て異なるから,中央値や平均値は何の意味も持たないのですけれども。

1月23日追記

毎日新聞の1月18日の記事を見ると,今回の調査結果の文化庁発表があったのは1月18日となっていますね。朝日新聞社さん,疑ってごめんなさい。

2月21日追記 長崎県の包括外部監査結果報告書

平成19年3月に出ているものですが,気がついていなかった長崎県平成18年度包括外部監査の結果報告書です。
指定管理者制度を導入している長崎県美術館長崎歴史文化博物館の監査結果が出ています。