鉄の歴史館の館長に行政側の推薦した人が就任予定
岩手県釜石市の鉄の歴史館において,その指定管理者が,元教員で鉄の歴史に詳しい中川氏を任命したところ,釜石市行政がそれを承認せず,書類上,鉄の歴史館館長が不在のまま据え置かれたという不幸な事件(この件は2008年5月21日のエントリー「釜石市の鉄の歴史館」で紹介いたしました)の続報です。
中川氏が市民オンブズマンのメンバーのひとりであり,また釜石市を相手として行政訴訟を提起していることから,釜石市行政は承認していないのではないかと言われてきましたが,その件が新聞等で報道されてからも市行政は不作為を貫いてきたようです。
館長は不在のまま据え置かれ,鉄の歴史館にとっては大変不幸な期間となりました。
さて,3月29日の岩手日報の記事から
「館長不在」解消へ 釜石・鉄の歴史館
釜石市立鉄の歴史館の館長が「不在」となっている問題で、市と同館の指定管理者の陸中海岸グランドホテル(野村亨平社長)は、3月末で市を退職する佐々木諭教育次長(60)を4月から館長に配置することで合意した。新年度を前に収拾したが、問題が長期化したことは、指定管理者制度の運用に課題を残した。
この問題は同社が2008年度から、市内在住の元教諭で、製鉄技法の伝承に長年取り組んでいる中川淳さん(75)を館長に据えようとしたが、市が同意しなかった。中川さんは過去に、旧釜石市民病院の公金支出問題をめぐり、市を相手に住民訴訟を起こしたことがある。
市と同社は1年間、館長人事をめぐり協議を続けてきたが、なかなか進展せず。新年度を目前に控え、市が推薦した佐々木次長を配置することで折り合い、指定管理者が譲歩する形で決着した。
中川さんは市から認められない状態でこの1年、実質的な館長として業務に当たった。今後は非常勤で運営を手伝う。新館長にエールを送る一方、「市はわたしが館長として認められない理由を一度も示さなかった」と不快感をあらわにする。
市によると、指定管理施設での職員の配置については、市と指定管理者が結ぶ協定書に「両者で協議しなければならない」とあるだけ。双方は今後、詳細な規定について検討するという。
博物館という機関の運営にあたり,館長の果たす役割は大変大きなものです。これまで実質鉄の歴史博物館館長であり,製鉄史の掘り起こしに取り組んできた現中川氏に代えて,広聴広報室長、市教委生涯学習スポーツ課長など,釜石市や釜石市教育委員会の行政を担当してきた行政マンが館長に就任するとのことです。
釜石市はなぜ鉄の歴史館に,わざわざ指定管理者制度を導入したのか,わけがわかりません。ホームページのようにやることはやらないくせに,指定管理者が担う鉄の歴史館の運営に行政マンを送り込む。そんなつもりではないのかもしれませんが,やっていることがひじょうにみっともなく見えてきます。
この間の責任を,館の設置者の釜石市長はじめ市行政はどうとるのか。ホームページをはじめ,市の分担すべきことをきちんと果たすことができるのか。問われています。