大阪府立現代美術センター所蔵絵画の紛失

大阪府報道発表資料から

現代美術センター所蔵絵画の紛失について
平成17年度に病院事業局に対して貸し出されていた現代美術センター所蔵の絵画が紛失していることが判明したので、お知らせします。
このような事態を招きましたことに対し深くお詫びいたしますとともに、今後、再発防止に向けて下記のとおり対処してまいります。

1 紛失した絵画
・作 者:木村嘉子
 ・作品名:作品 17−59
 ・サイズ:116cm×116cm
 ・設置場所:病院事業局次長室(府庁本館4階北側執務室内)
 ※平成17年度時点
 ・借用期間:平成17年4月1日〜平成18年3月31日
 ・評価額 132万5千円(寄贈当初)
2 本件の概要
・ 平成17年度、現代美術センターから病院事業局に対し1年間の絵画の貸出しが行われました。 
 ・ その後、平成18年度から平成21年度まで、現代美術センターの運営を指定管理者が行うこととなりましたが、本件作品の貸出しの延長、更新の手続きがされないまま貸出しが継続されていました。
 ・ 平成22年4月に現代美術センターの運営を指定管理者から府の直接実施方式に変更したことに伴い、長期にわたる貸し出し作品の所在確認を行ったところ、本件絵画について詳細が確認できなかったため、関係者及び庁内での捜索を行った結果、紛失したことが判明しました。
 ・ 調査の結果、平成18年度に旧病院事業局の大部分の本庁機能が府立病院機構へ引き継がれることとなり、平成18年3月31日に移転作業を行った際、紛失した可能性が高いものと考えています。
 ・ こうした事実確認が遅れた点については、指定管理者において、18年度以降の毎年の更新手続きが一部の作品でなされていなかったこととともに、本府としても、指定管理者への当時の引継ぎや、指定管理者から毎年貸出状況の報告を受ける際に十分な確認ができていなかったことが主な要因と認識しています。
 ・ なお、本件絵画は作者から大阪府に寄贈されたものであり、5月6日に本件絵画の紛失について作者にお詫びと状況説明を行いました。
3 今後の対応
(1) 作品管理の徹底と事務改善
・作品の貸出期間中も、現物確認を行うなど定期的に設置状況を確認します。
 ・貸出先において日常的な管理を行う管理責任者を設置することとします。
 ・組織改正や設置場所が変わる場合は、変更届を必ず徴し、状況確認を徹底します。
 ・貸出作品に責任担当者、貸付期間、管理上の注意事項等を添付し、事故の未然防止に努めます。
(2) 関係職員への処分等については、今後、事案についての十分な調査を行った上で適切に対応していきます。
=連絡先=
(略)

平成18年度から指定管理者が現代美術センターの運営を行っていたことで紛失したことの発見が遅れたという言い訳。平成22年度から直営に戻して,紛失が判明したということです。運営主体が代わる指定管理者制度が,将来に継承すべき博物館資料の管理に不向きであることは,本ブログでも何度か主張してきたこと。しかし,今回は指定管理者の責は,ほとんどない。
最も問われるべきことは,まだ直営時代の府立現代美術センターが病院事業局にコレクションを貸し出したこと。
学芸員もいない,温湿度管理等も防虫対策もされないところにコレクションを貸し出したことが最も問われるべきことです。あろうことか,病院事業局次長室とはあまりのバカらしさに呆れてしまいます。
今後の対応に「貸出作品に責任担当者、貸付期間、管理上の注意事項等を添付し、事故の未然防止に努めます。」などとありますが,そもそも,学芸員が居る博物館や美術館以外には貸し出さないとすれば良いこと。
最も良い対応は,知事部局から教育委員会所管に移し,コレクションを府民共有の財産として保管し,子どもや孫の世代まで伝えていく博物館としてきちんと位置づけることではないですか。

7月31日追記

7月31日の産経関西の記事から

大阪府に美術家協会寄贈 絵画24点不明 10年以上放置
大阪府が寄贈を受けた絵画の所在が不明となっていたにもかかわらず、10年以上にわたり所在確認のための本格的な調査をしていなかったことが30日、分かった。所在不明となっているのは、昭和59年に寄贈された104点のうち24点の絵画で、大阪の風景が描かれた作品。当時の評価額で70〜15万円だといい、評価額の総額は643万円にのぼるという。
府によると、絵画は府美術家協会から寄贈を受けた後、平成3年ごろから成人病センターといった府関係機関に貸し出されるなどしていた。
保管倉庫で9年に調査したところ17点の所在が不明に。また、成人病センターに貸し出された44点のうち、7点の所在は分からないままと分かった。しかし、こうした事実を公表していなかったうえ、庁内調査もしていなかった。
府では、今年5月に府現代美術センターが管理する絵画1点の紛失が発覚したばかり。7月中旬に、担当職員が「まだ現物確認できていない絵画がある」と上司に報告し、あらためて24点の所在不明が判明した。
府文化課は「所在不明の絵画は、記録を残さずに府の関係機関に貸し出されている可能性もある」と説明しており、今後、全庁調査を行う方針。同課は「寄贈受けた作品が貴重な財産だという認識に欠けていた。管理を担当者任せにしていたことにも問題があった」としている。

だから,何でそんなところに貸し出したのかと(ry
大阪府の報道発表資料はこちら(7月30日14時)。

平成22年5月10日、現代美術センターが所蔵していた絵画1点の紛失を公表したところですが、下記のとおり、今回新たに、データベースに登録していない作品が104点あり、その内の24点の絵画が所在不明であることが判明しましたのでお知らせします。
 このような事態を招きましたことに対し深くお詫びいたします。

1 所在不明となっている絵画
 ・内 容:昭和59年に大阪府に寄贈された104点の作品のうち、
  ①成人病センター貸出中の44作品のうちの7点(H17年度から所在不明)
  ②倉庫等にないもの17点(H9年度から所在不明)
 評価額:台帳上の評価額合計 643万円
 ・作 者:大阪府美術家協会会員他
2 本件の概要
・7月12日、現代美術センターの担当者から、データベースで管理している作品(7,778点)以外にも府が所蔵している作品が約100点あり、その一部が現物確認できていないとの報告がありました。
・このため、詳細について調査したところ、それらは大阪府美術家協会が昭和59年に開催された「大阪百景」展に出品された作品等104点で、同年、府が寄贈を受けたものであることがわかりました。
・府では、これらの作品を平成3年頃から府の関係機関等に貸し出してきましたが、定期的な点検や更新等の手続きを行わないままとなっていました。また、府の現代美術コレクションとは異なるものとしてデータベースに登録していなかったため、組織としてその存在を認識せず、5月の絵画紛失の際の調査対象から漏れてしまったものです。
・担当者は、5月の絵画紛失の公表の際、データベースに登録していない作品があり、そのうちのいくつかが所在不明となっている可能性があることに気付いていましたが、詳細が不明であったためその段階では上司に報告せず、その後、これらについて更にチェックを行ったところ所在不明であることが明らかになったため、上司に報告するに至ったものです。
・今回、このような事態を招いた原因は、報告よりも調査を優先させた担当者の判断の誤りもありますが、何よりも、組織として、寄贈を受けた作品は府民の貴重な財産であるとの認識が欠けていたこと、絵画の管理を担当者任せにし、組織的なチェックができていなかったことにあると考えています。
3 今後の対応
 ① 大阪府の全所属と関係機関に照会等を行い、全力で捜索を行います。
 ② 絵画の管理体制や組織マネジメントのあり方など、抜本的な対策を検討してまいります。


12月28日追記

denさんのコメントに触発され,とりあえず,大阪モノレール美術館に関する府議会での関連発言を拾ってみます。
1996年3月19日文化労働常任委員会。その前からのやりとりも含め,何となくシナリオができているようなやりとりにも見えます。

・・・
◆(田中義郎君) これまで大阪府の主催の展覧会の開催、市町村との連携のもとに府民が所蔵作品を鑑賞できる機会を提供されてきたことは、評価をいたしたいと思います。しかし、私はもう一歩進んで、大阪府の所蔵作品の貸し出しをまた民間企業までも拡大してはどうかなと、このような考えも持つわけでございます。
 民間の建物のエントランスやロビー、また多くの府民が利用される場所にもすぐれた府の所蔵作品を展示することで、府民が芸術に触れる機会がより一層広がるのではないか。また、大阪がアートにあふれ、大阪のイメージアップにもつながるのではないか。もちろん管理の問題など検討すべき課題もあろうとは思いますけれども、積極的に進めて頂きたいなと思うわけでございますけれども、その点はいかがでございますか。
◎文化課長(松本薫君) 先ほど来御説明申し上げましたように、現代芸術文化センターの開館に向けまして、府がこれまで収集してきた府民の貴重な財産でございます美術作品につきましては、現代芸術文化センター開館までの間も府民の身近なところですぐれた芸術作品を鑑賞して頂けるような府有施設での展覧会の開催とか府下の市町村、また海外へも貸し出しをしておりますが、そういったところで積極的に行ってきたところでございますが、今先生お示しのように、民間企業へも貸し出し対象を拡大するということは、府民の芸術鑑賞機会のより一層の拡大につながりますとともに、大阪を文化の薫り高い都市としていく上で非常に効果的であろうかと思います。
 先生お示しの民間企業への貸し出しにつきましては、今後展示場所、期間、展示方法など、貸し出しに当たっての条件についての検討を進め、できれば来年度、八年度にできるだけ早い時期にそれが実現できるように努めてまいりたいと考えております。
◆(田中義郎君) 民間企業への貸し出しの拡大、非常に効果をもたらすと思います。前向きに検討して頂けると思いますので、どうぞよろしくお願いをいたしたいと思います。

1998年3月12日総務常任委員会

◆(中川治君) 朝からいろんな討議がありました。私も、幾つか準備してきておった点でダブるものもたくさんあります。とりあえず軽い話からいかせていただきたいと思います。
 ことしの予算で、モノレールの駅舎の中に現代芸術文化センター保有の絵画を展示をしようと。一人でもお客さんがふえたらええなという試みであると聞いております。たしか一年半ほど前に冗談半分でそんなこと言うたことあるんですけれども、実現ということになりました。ただ、率直に言うて、あの絵を見にモノレール駅の中に入っていこうというふうになるのかなと。私は、余りならんのやないかなというふうな気がします。
 一つ御提案なんですけれども、去年ヴァルドワーズへ行ってまいりました。ヴァルドワーズ県というのは、フランスのパリコミューンの後、画家たちがフランスで非常に廃退的な生活を送っておった。これではいかんということで、新しく心機一転出直しだということで大量に画家がヴァルドワーズへ移動しまして、そこからフランスの印象派が始まったと言われている地域でございまして、私も行きましたときに、いろんな意味でシャガールセザンヌやミロやモネやマネやドガ、そういう伝統を見てまいりました。
 毎年といいますか、毎月一つ、例えばゴッホの本物、あるいはシャガールの本物というものをヴァルドワーズの友好ということを通じてひとつ御協力いただけないかと。毎月一枚持ってきてほしいということになれば、それを見たさに一カ月十万人ぐらいの人は見にくるんと違うかな。十万人行かんでも二万人。二万人行きますと、入場料だけで五千万円ぐらいもうけということに一カ月でなるわけであります。
 そういう意味で、黒川部長一緒に行かれましたし、僕らが見せてもらってないオランダのシーボルトが持って帰った秘蔵の絵というようなやつをたしか知事と部長は見てこられたと思います。そういうやつを一つ、一点でええと思うんです、モノレール駅舎の中に飾るということをできるだけ安くできれば、ささいなことですけれども、絵を見たさにモノレールに乗るという人もふえるんやないかな。そういう意味での国際交流という意味で、つてを利用して積極的にやったらどうかなということを思います。冒頭で済みませんけれども、部長の御意見お聞かせください。
◎企画調整部長(黒川芳朝君) ただいま先生御指摘のありました大阪モノレールの駅舎に美術品を展示していこうという、これは文化部が今検討中でございまして、確かに先生おっしゃいますように、トリエンナーレで収蔵しました作品をことしの五月ごろから駅舎のコンコースに展示していこうと、こういうこと。それでは先生は人が集まらんのではないかと、こういうことだろうと思います。
 確かに昨年秋ヴァルドワーズ県を訪問いたしまして、例えば印象派ユトリロの美術館でございますとか、ピサロ美術館、あるいはドービニー美術館、それぞれ著名な印象派の方々の絵画を収蔵する美術館を持っておられる。そういう意味で、大阪府とヴァルドワーズ県というのは友好関係にございますので、そういう展示ができればいいなというふうにも思います。
 また、先ほどございましたオランダのライデン博物館、これは大阪の千里にございます国立民族学博物館がモデルにした博物館でございますが、そこにシーボルトコレクション、ちょうど江戸の末期からのかなりの日本のこれは貴重な資料をコレクションとして持っておりまして、シーボルトコレクション約六千点ぐらいの日本に関する資料がある。中でも浮世絵コレクションが一千点ぐらいある。そういう意味で、我々としても、その一部しかまだ見せていただけなかったわけですが、そういうものを何かの機会に大阪に持ってこれればいいなというふうなことを思ったこともございます。
 ただ、先生お示しの果たしてモノレールの駅舎のコンコースに飾っていいのかどうか。確かにそれを見に人は来られると思いますが、非常に貴重な資料、また高価な資料でもございますので、安全面とかその辺の種々の課題はあろうかと思います。
 ただ、例えばオランダのライデン国立民族学博物館との関係でいいますと、西暦二〇〇〇年にちょうど日蘭修好四百年というふうな記念すべき年になりますので、例えばそういうときにシーボルトコレクションを大阪に何とか持ち込んで、友好の一つの交流展をやるというふうなことが可能かもわかりませんし、いろんな多面的なところでちょっと御検討させていただくということで、必ずしもモノレールでうまくいくかどうかというのはちょっと確証は持てませんが、御提案の趣旨を踏まえまして何とか前向きな方向で考えてまいりたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

2000年10月16日教育文化常任委員会

◆(岩下学君) こうした収集、所蔵されております美術作品は、府民の財産ともいうべきものであり、少しでも多くの方々に見ていただくべきであると私は考えますが、これらの作品が多くの府民の目に触れられるようにするためには、どのような活用方策を講じておられるのか、お聞きしたいと思います。
◎文化課長(冨岡久生君) 収集美術作品の活用方策についてのお尋ねでございますが、美術作品は、常設展示それから所蔵作品展としての特別展示、要請におこたえしての貸し出し、この三つの方法で活用を図っているところでございます。
 常設展示は、モノレール美術館のほか二カ所で行っております。モノレール美術館は、大阪モノレールの全駅に大阪トリエンナーレの入賞作品を中心とした彫刻四十一点を展示しておりまして、モノレールの乗客の皆さんに鑑賞していただいているものでございます。
 また、本年四月には、りんくうタウンワシントンホテル内に、作品五十五点を展示する大阪府りんくう現代美術空間、これは略称ルーカスと呼んでおりますが、これを開設いたしました。さらに、先月九月三十日には、規模は小そうございますが、大阪港にできました海岸通ギャラリーに作品九点の常設展示室をオープンしたところでございます。
 次に、所蔵作品展ですが、府立現代美術センターにおきまして、年二回、それぞれ二週間展覧会を開催しております。今年度は、七月に花博写真美術館出展作品によります写真展、二十世紀写真の巨匠たち、八月には、大阪トリエンナーレの過去の入賞作品の展覧会、大阪トリエンナーレコレクションを開催したところでございます。
 最後に、三つ目の貸し出しでございますが、これは府民に身近なところで、すぐれた美術作品を鑑賞していただくため、大阪府や市町村の公共施設に対しまして、主に常設展示として貸し出しを行ってきたものでございます。平成八年度からは、民間施設にも貸し出しを行っております。
◆(岩下学君) 常設展示、特別展示、貸し出しという三つの方法で府民に見せておられるということですが、私は多くの府民に広く鑑賞の機会を提供するには、身近なところで作品を見ることができる貸出事業がより効果的であると考えております。
 そこで、貸し出しの条件及び現在の貸出実績はどうなっているのか、特に長期にわたる貸し出しを中心にお聞かせ願いたいと思います。
◎文化課長(冨岡久生君) 貸し出しの条件でございますが、公共施設、民間施設のいずれでありましても、不特定多数の府民が利用される施設であること、そして展示場所が例えばエントランス、ロビーなど多くの方に鑑賞していただける場所であること、これを条件としております。
 なお、作品の展示場所や展示期間などによりまして管理上問題のある場合もありますので、現場を慎重に調査した上で判断することとしております。
 また、貸し出しに際して料金はいただいておりませんが、輸送に関する費用や保険料などにつきましては、貸し出し先の負担としております。
 次に、長期にわたる貸し出しの実績でございますが、現在十九施設に九十九点の作品を常設展示として貸し出ししております。主な貸し出し先と展示点数を申し上げますと、中之島リーガロイヤルホテルなどの民間三施設に十点、曽根崎地下歩道などの国の三施設に二十三点、図書館や公民館といった市町村の施設五施設でございますが、これに二十四点、それから府立中央図書館などの府関係八施設に計四十二点となっております。
 なお、このほか、府庁内の知事室等に計三十点を貸し出ししております

モノレール美術館は常設展示の一環なんですね。それにしても,府庁内の執務室への美術作品の貸し出しをさらっと付け加えています。