野毛山動物園の命名権(ネーミングライツ)販売の状況

2007年12月12日のエントリーで,横浜市の横浜開港資料館や歴史博物館,横浜こども科学館野毛山動物園ネーミングライツのことを取り上げましたが,野毛山動物園ネーミングライツ販売状況がニュースになっています。
3月3日の神奈川新聞の記事から

ネーミングライツ応募ゼロ、募集を継続/野毛山動物園
横浜市野毛山動物園(同市西区)のネーミングライツ命名権)のスポンサーを募集していたが、期限の二月二十九日までに一社の応募もなかった。市は募集を継続する。
 同動物園は小学生の遠足や社会教育の場として市民に親しまれてきたこともあり、ネーミングライツ導入に疑問や戸惑いの声が出ている。そのため、企業側も名乗りを上げるのに慎重な構えを示しているようだ。環境創造局は「募集を継続し、企業が名乗りを上げてくれるのを期待したい」としている。
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ネーミングライツの市の希望条件は年間五千万円以上で契約期間は五年以上。絶対条件ではないが、名称に「野毛山」を使用することも希望している。

動物園の公共性については,横浜市行政(環境創造局)より,企業,地域の方が感度が高かったようですね。
PPP(Public Private Partnership)というコンセプトを矮小化して,いたずらに野毛山動物園命名権独占販売に固執するのではなく,より広く市民・地域企業との直接的・間接的連携構築を図る方向で,アニマルペアレントのような市民・企業サポーター制度の導入,多額の寄付に対する飼育ケージへの名称付与などの制度の導入,案内掲示・パンフレットへの広告の拡大などを検討すべきでしょう。


それにしても,様々な反対を押し切って野毛山動物園指定管理者制度を導入したばっかりです(今年4月から指定管理者の運営へ移行)。
動物園への指定管理者制度導入については,数年で指定管理者が替わる可能性があり,飼育係と動物との信頼がはぐくめない,動物園の持つ研究機能が破壊される,希少種の保存のような長期的な視点が持てないなど,動物園の存在意義にそもそも関わる問題が山積していて肯んぜないところです。
けれども,とにかく,横浜市では指定管理者導入により民間的手法を導入するわけです。ここで名称を変更するなんて,指定管理者制度を実はないがしろにするようなものです。今回は,ズーラシアで経験を積んでいる(財)横浜市緑の協会が指定管理者ですから,文句も言わないでしょうが,普通に企業が指定管理者になっていたら,今回の命名権騒動,「待ってくれ!」と言いたいところではないでしょうか。


なんだか,横浜市行政は,ふらふらして,効率の悪い道を選んでいるように感じます。


4月からの指定管理者が幸い財団法人です。野毛山動物園の運営のためという使途を指定した寄付を受けることも可能でしょう。寄付が利益となって株主配当に化ける心配もありません。企業,市民からの広範な寄付・支援・ボランティアを受ける方向で再検討すべきです。

3月14日 追記

北海道・室蘭市青少年科学館の事例
3月14日の室蘭民報の記事から

日鋼室蘭が科学館にデジタルプラネタリウム寄贈
日本製鋼所室蘭製作所(佐藤育男所長)が13日、創業100周年記念事業として室蘭市青少年科学館に道内初のデジタルプラネタリウムシステムを寄贈した。この日、同科学館で贈呈式、試写会が行われ、近隣小学校の児童らに"宇宙旅行体験"を楽しんでもらった。
 昨年から実施している同製作所100周年記念事業の最後を締めくくる。寄贈されたシステムは、従来の装置では無理だった星のズームアップが可能で、ロケットで宇宙旅行をしているような感覚が味わえる。2つの映像を映すことでどの席から見ても天地が逆にならず、音響もドーム空間に伝達しやすい機器を使っている。
 贈呈式では日鋼室蘭製作所の程田厚哉総務グループマネジャーが盛田満教育長に目録を贈呈。続いて開いた試写会には、同科学館近隣の常盤、武揚、天沢、地球岬の4小学校の6年生合わせて約110人を招待し、2回に分けて初公開のデジタル映像を投影した。
 ドームスクリーンにカラフルな太陽系の9つの惑星が名前付きで登場。土星がぐんぐんと大きくなり、輪をくぐり抜ける。地球はアジア、ヨーロッパ、アフリカなどの各大陸、日本列島が青い海の中にくっきり。最後には室蘭の地形が分かるまで拡大され、宇宙から帰還したような映像に歓声が上がった。
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プログラミングに時間を要するため一般公開の開始時期は未定。小川征一館長は「夏休みまでにはスタートさせたい」と話している。
 また、同館3階の日鋼室蘭紹介ブースも100周年を記念してリニューアル中で、今月中に新たなパネルなどが展示される。

なかなか大型の寄贈ですね。
こういう事例だったら,寄贈に対する感謝の意を表するために,例えば館内のプラネタリウムのドームに「日鋼室蘭ドーム」と,館が命名するのは大賛成です。