博物館法施行規則を改正する省令案パブリックコメント開始(4月22日まで)

1月18日のエントリー『博物館法施行規則改正関連(パブリックコメント開始)』や2月19日のエントリー『学芸員養成の充実方策について(報告)が出ています』,2月25日のエントリー『博物館法施行規則改定関連のパブコメ結果』で紹介しました件の続報です。
4月1日から博物館法施行規則を改正する省令案についてのパブリックコメントが開始されました。
パブリックコメントの締切は,4月22日(水)。行政手続法には意見募集に於いて『意見提出期間は、』『公示の日から起算して三十日以上でなければならない。』となっていますが,21日しか確保されていません。
さて,今回の施行規則改定は,特に大学に於いて学芸員を取得する学生に(もちろん大学にも)大きな影響を与えるものです。
修得すべき科目の増加は,一見,学芸員資格の価値を高めるように見えます。しかし,いたずらな増加は,歴史や考古,自然史等の各研究分野に全力投球している学生や院生が学芸員資格を取得することを妨げる方向にも働き,改悪ともなります。
そのため,私も今回は,再度,強く意見を出そうと思っています。意見はおいおい作成しますが,おおまかなポイントは以下のところかと考えています。

博物館資料保存論

新設は行うべきでない。
 重要な分野ではありますが,新設して出来た科目の中味は,極めて技術的な内容となることが予想される。しかも歴史や考古,美術,自然史,動植物園により求められる技術の内容は大きく異なる。そのため,大学の博物館学課程に於いて,強制的に取得させても十分な成果が得られず,いたずらに学芸員の専門性を損なうものとなりかねないと考えます。
 もちろん,美術等に分野を絞って,博物館資料保存演習が行われる大学が出てくることは歓迎します。
 むしろ,強制するものとして科目を新設するのではなく,既存の「博物館資料論」の中で,資料保存に関する基礎的な考え方・概念を学び,考えさせることが,大学の学芸員課程では重要だろうと考えます。

博物館展示論・博物館教育論

統合して博物館展示・教育論として新設すべき。
 これまで博物館の展示については「博物館資料論」で扱ってきました。また教育普及活動については「博物館経営論」で扱ってきました。今日,市民が主体的に考えることに対して,博物館がどれほど貢献できるかということが大きな課題になっています。そのため,展示や教育について取り扱う科目が新設されることは歓迎します。
 しかし,ここも,いたずらに増加させるべきではないという観点から,展示・教育論として統合すべきと考えます。
 その際その中味は,技術的な内容に流れるのではなく,広く人々の学習に貢献するという観点から,博物館の展示や教育について学生が主体的に考える機会となるような内容とすることが大事だろうと思います。


博物館情報メディア論についても,若干いいたいことがありますが,もう少しここは私自身整理してみたいと思います。


細かなことですが,改定(改正?改悪?)時の経過措置等が書かれていますが,このままでは問題があります。
パブリックコメントにあがっている省令案では,施行日以前,例えば大学3年生までに「博物館学」及び「視聴覚教育メディア論」を取得していても,再度大学4年生に於いて「博物館情報・メディア論」を履修し修得しなければ,学芸員資格が認められない可能性があります。


古い言葉で「でもしか教員」という言葉があります。学芸員についても,現状,とりあえず資格だけでも取って置くかという学生がそれなりの数居るだろうことは想像できます。それは博物館・美術館等に主体的に関心を持つ人々が増えるチャンスで,それなりに良いことだと思っています。
今回,案となっている改定案がなされたとしても,「とりあえず資格だけでも取っておくか」という学生は,それなりに学芸員課程を履修するでしょう。そのことについては問題視する気はありません。問題は,負担を重くしてしまうことにより,例えば平安時代史,例えば考古科学,例えば昆虫学等の分野に強く関心を持ち,学生時代に研究能力も養い,また人々に伝えることに喜びを見いだしている学生を排除してしまうのではないかということです。科目が増えるということは○曜日の○限目の科目を履修しなければならないということです。科目が増えるたびに,特に理系の学生や,教育に関心のある学生の履修のチャンスが減り,専門性や教育に指向する学生を結果として学芸員から排除してしまいかねません。
結果として学芸員資格の価値が下がってしまいかねません。博物館側としても,学芸員資格をさらに軽視することになりかねません。
極めて問題のある省令改定です。

司書,社会教育主事に関しても今回パブコメに。

社会教育主事については「社会教育主事講習等規程の一部を改正する省令案について」が,司書については図書館法施行規則の一部を改正する省令案について」がパブコメにあがっています。
いずれも4月22日までです。

5月13日追記

4月30日に博物館法施行規則の一部を改正する省令が公布されています。5月13日のエントリーで少し触れました。