指定管理者の話題 指定管理者解除−蒲郡市 等

蒲郡市市民会館の指定管理者について,公共料金や清掃業者への支払いが滞ったことから,市が改善を勧告していたところ,指定管理者から「辞退届け」が提出されたとのこと。
 どうやら,指定管理者(有限会社)は破産してしまったようです。
http://www.tonichi.net/news.php?mode=view&id=16594&categoryid=1

早くも指定管理者を解除
 蒲郡市教育委員会は28日、未払いなど不適切な状況を理由に、市民会館指定管理者のイマジン(八百富町、高木彰社長)の指定を取り消したと発表した。指定後わずか7カ月余りで取り消したことについて、市による選定経緯などが問われている。同社によると、現在破産手続きを進めているという。
 市民会館を管轄する市教委によると、ホールや会議室の使用料として受け取った代金の未納付が続き、公共料金や清掃業者などへの支払いが滞ったのが理由。9月分の電気料金の未納がきっかけで市教委が調査し改善を勧告したが、その後同社が22日付で辞退届けを提出した。
 同社への管理委託料約1億1000万円(年間)のうち、前払い分など約1600万円が債権として残っているため、市は清算を求めることにしている。利用者への影響を防ぐため当面は市が直営するが、07年度の早いうちに新たな指定管理者を選定するとしている。
 同社は昨年3月まで、市都市施設管理協会のもとで、照明や音響などの舞台装置管理を請け負っていたが、市民会館への指定管理者制度導入による募集に応募し、5社の中から選定された。
 選定理由として、市民会館の中心事業である舞台づくりに精通し、ホール利用の新分野開拓などが期待されたため。民間活力による公共施設の有効利用を図る取り組みが裏目に出た形となった。
 同市では、選定委に企業経営に詳しい有識者を加えるなど対策を取るとしている。

東海日日新聞 11月29日 

岡山県立博物館等

岡山県立博物館,岡山県立美術館の指定管理者についてもニュースになっていました。
 岡山県立博物館の指定管理者の候補がビルメンテナンス会社等の共同事業体であるサピックス・三要電熱工業共同事業体に,岡山県立美術館が同じくビルメンテナンス会社のアトラクティブ大永。
 これは一体どういうことかと良く見てみると,9月の県議会で条例改正があり,例えば岡山県立美術館条例では


(1) 岡山県立美術館(以下「美術館」という)の管理に関する業務のうち(2)の業務は,指定管理者に行わせるものとする。
(2) 指定管理者の業務は,美術館の施設及び設備の維持管理に関することとする。

と改正されたことによるんですね。
 つまり,資料の収集,保存,調査研究,展示,教育普及活動等のミュージアムの本来業務は,引き続き県が行い,施設の維持管理を指定管理者が行うということです。
 おそらく,これまで警備,電気設備メンテナンス,建物メンテナンス,植栽管理等をそれぞれ,別々に競争入札をして委託していたものを,一括で指定管理者に委ねることにより効率化を図ろうとするものでしょう。
経費の削減&博物館活動の質の維持向上を考えれば,現時点で最も良い選択肢の一つではあるんでしょう。
 一つだけ問題を挙げると,これまで例えば植栽管理など,別々に地元の業者(大きいところか小さいところかわかりませんが)に委託して来たのに対して,地元とは言え,比較的大きな企業でなければ受注できない可能性が大きくなったということでしょうね。

お茶の郷

別な施設ですが,静岡県島田市(旧金谷町)の「お茶の郷」はお茶に関する博物館機能と観光機能を併せ持つ施設です。ここも指定管理者候補が決定したというニュースが出ています。指定管理者候補はハラダ製茶(島田市)と静岡鉄道グループの静鉄レストラン(牧之原市)による共同企業体
 学芸員がいて,お茶や茶器に関する企画展の開催や図録他関係書籍の出版等を行うなど,単なる展示施設ではなく,やはり「博物館」と言えるところですが,ここについては,全業務を指定管理者が担当するようです。
 現在の学芸員が継続して雇用されるのかどうかはうかがい知れませんが,ハラダ製茶が中心となっていますので,調査研究,資料の収集保存等の質は,維持・向上できるのではないか,していただければと思います。

倉敷市瀬戸大橋架橋記念館

2004〜2006年度に指定管理者となっていた児島商工会議所に替わり,ビルメンテナンス会社の(株)さんびる(島根県松江市)が2007年度からの指定管理者の候補に選定されたとのこと。
 選定委員会での選定理由を見てみると,児島商工会議所については,2年半の実績を生かした提案,地域との連携,そして指定管理者制度導入前に比して,利用者数を3倍以上に増やしたという実績は評価されたものの,提案額が高価(児島商工会議所が5年で1億8250万円,(株)さんびるが1億5917万円)で,費用削減についての提案が十分でなかったことや,提案書中で具体的かつ詳細な記述が省略されている部分があったことなどがマイナスとして働いたようです。
 協定等ですが,指定管理者はあらかじめ,指定管理料月額の4か月分の保証金を市に納めることとなっており,指定管理者の責により,市が指定管理を取り消したときには,保証金を没収するとされています。また,指定管理者が正当な理由無く運営管理を実施しないときは,日割り計算で指定管理料を減額するほか,1日に付き指定管理料(5年分総額)の1/2000の違約金を徴収するとされています。
 一つだけ気になるのは「『架橋記念館指定管理者制度適用実施方針』に対する質問・回答」で紹介されているのですが,応募者から「橋の博物館としての機能は終了した,と聞いていますが」というところ。まあ,確かに架橋記念館条例を見ると,施設の事業として


(1) 橋に関する模型の展示
(2) 施設及び施設の附属設備(以下「施設等」という。)の提供
(3) 前2号に掲げるもののほか,施設設置の目的にふさわしい事業

しかありませんから,資料の収集はもちろん,一次資料の保存,調査研究はやっていないようですけれども。
 昔は,学芸員もいたところなんですけれどもね。

12月7日追記 蒲郡市市民会館の指定管理者取り消し続報

中日新聞に愛知県蒲郡市市民会館の指定管理者取り消しについて続報が出ていました。
http://www.chunichi.co.jp/00/ach/20061207/lcl_____ach_____012.shtml

蒲郡市、管理者指定取り消し
業者選定に再考必要
 蒲郡市指定管理者制度により市民会館の管理運営を任せていた業者が、資金繰りの悪化から破たんし、市は指定を取り消した。県内では初のケースとなった。しかし、指定取り消しは群馬県新潟県で相次いでおり、選定の在り方の問題点が浮かび上がる。 (原誠司)
 11月27日朝、蒲郡市民会館事務室に怒声が響いた。市教育委員会の職員に「市に責任はないのか」と詰め寄る下請け業者。居所が分からない指定管理者の会社社長への怒りが、債権者として同じ立場の市に向けられた姿だった。
 市は4月から市民会館の管理運営を、市内にある舞台装置管理会社イマジンに委託。例年1億2000万円前後だった運営費が1億900万円に抑えられた。同社はそこから照明や空調、清掃などを専門業者に任せた。だが、9月に未払いが発覚、社長は11月22日に「金の工面ができない」と市に申告、市は26日付で指定を取り消した。未払い金は2000万円を超えるという。
 市は翌日、会館を直営としたため利用に支障は出ていないが、先払いした委託金のうち、業務が行われない12月分など1600万円の回収の見込みも立っていない。債権者や市民からの問い合わせで一時混乱し、運営を直営にするため条例の一部改正も迫られている。「ちゃんとした業者をなぜ選べなかったのか」。市の責任を問う声は、市民や市議の間でくすぶる。
 市の指定管理者は公募市民3人と助役ら市幹部の計7人でつくる選定委員会で決める。市民会館の場合、5業者が応募。受託見積額でイマジンは3番目だったが、1990年から市民会館で舞台運営の実績があることなどを評価して決めた。
 選定委には貸借対照表損益計算書など財務諸表を提示。同社は2004年期で200万円の黒字を計上していた。今回の事態に陥った理由を、同業者や市は「個人的な借り入れなど財務諸表にない原因があったのでは」とみる。
 思わぬトラブルに、市は「会計士など財務の専門家を選定委に加えたい」と再発防止策を示している。しかし、専門家からは「財務諸表のチェックだけでは、今回のような問題は防げない」との指摘もある。財務内容の厳しい会社は、税金を払ってでもあえて黒字の決算書を提出して信用を高め、実入りの大きい公共事業の受注を考える例も多いからだ。
 公認会計士の大岩敏郎さん(蒲郡市中央本町)は「選定委に提出する財務諸表の正確さを高めるため、税理士の一筆を加えるさせるような厳密さを考えるほうが効果がある」と提案する。
 群馬県では、11月29日に群馬へリポート(前橋市)の管理運営を任せていた航空会社が、経営不振による業務縮小で指定が取り消された。担当者は「選定委に経営診断士を入れており、それ以上の手だてを今は考えられない」と戸惑う。業者破たんによる管理者指定の取り消しは、新潟県のスキー場や山梨県の保養施設などでも起きており、業者の選定方法の検討が求められている。
 <指定管理者制度> 地方自治体の公共施設を、指定を受けた民間企業、公益法人NPOなどが管理者として運営していく制度。サービス向上と経費節減を目的に、2003年の地方自治法の一部改正により導入された。
中日新聞 12月7日

違約金などが指定管理協定に盛り込まれていたとしても,指定管理者に支払い能力がなければ違約金はとりっぱぐれてしまいます。
 今回の場合は,協定書の中味が分かりませんので,違約金条項があるのかどうかはわかりませんが,先払いした委託金の回収も不可能となっています。
 そのため,あらかじめ,「保証金」を指定管理者に納付させる例もあるようですが,そのような協定書になっていたのかどうかもわかりません。
保証金も,それなりに問題があります。保証金を義務づけると,やはり資金を持たない,地元の会社やNPOが指定管理者となることを阻害する作用を持ちます。特に地域の文化振興やコミュニティ機能活性化を担う博物館や文化ホール,図書館,公民館については,地元に密着した非営利組織が担うことによって,住民や地元企業からの寄附やボランティアなどのフィランソロピーの受け皿として,機能の一層の充実を図るチャンスともなりえますが,まさにその部分を阻害してしまうわけです。
さて,もう一つの問題は,市が所有する施設の下請けを行っていた業者等への未払い問題。責任分担としては,指定管理者が唯一責任を持つわけです。
 また,当然,当該施設は指定管理者の所有物では無く,担保にも何にもなりえないもの。
とはいえ,下請け業者としては,納得いかないところでしょう。市に何らかの道義的責任があることも確かですし。
これは,何らかの制度的手続きが今後必要になるかもしれませんね。
宇都宮市 指定管理者制度推進ガイドラインから

  • (4) 協定保証金
    • 指定管理者制度では,公共的団体等に限らず,広く民間企業等が参入するため,倒産等による債務不履行のリスクが存在します。
    • ・ こうしたリスクを予め回避するとともに,指定管理者に対し,協定書等に定める債務を履行させるため,「協定保証金」を納付させることとします。
    • ・ ただし,次のように,「他に担保がある場合」や「協定内容の確実な履行が明らかな場合」などは,協定保証金を免除できることとします(宇都宮市契約規則第33〜35条を準用)。
      • ア 協定保証金に代えて,確実な担保の提供がある場合
      • イ 類似施設の経営実績や受託実績(指定管理者としての実績等)から,信頼性・安定性が確実な場合
      • ウ 指定管理者が市の外郭団体である場合
      • エ 指定管理者が地域団体である場合
    • ・ なお,協定保証金の額は,契約保証金に準じ,指定管理料(指定期間が複数年度にわたる場合は,初年度に支払われるべき指定管理料)の100分の10以上とし,指定管理者に指定する日までに納付させます。
お茶の郷学芸員募集中 1月12日追記

ハラダ製茶株式会社が正社員としてお茶の郷博物館学芸員を募集しています。
http://career.mycom.co.jp/jobset/index.cfm?fuseaction=mrjt_Jobinfo_form&bookmark_flg=1&client_id=78832&plan_id=1&contract_id=1&job_seq_no=1&ty=0
仕事内容は「指定管理者制度により島田市より「お茶の郷」の管理業務を受託致しました。お茶に関してお持ちの知識、経験を多くの人に広めて下さい。」と書かれています。応募資格は学芸員資格所持者。採用予定人数は1〜2名。待遇は正社員ですから,1日8時間,週5日勤務で月給20万円以上,ボーナス有り。
学芸員資格を有する方で、お茶について勉強し、お茶文化を普及させていきたい方。日本茶インストラクター資格保持者歓迎」を求めているとのこと。
キャッチフレーズは次の通り

ハラダ製茶が強力バックアップ。自分の能力を発揮できる環境が整えられています。

博物館内の展示やイベントの企画・運営をはじめ、外部への情報発信や普及・広報活動など、博物館全体にわたるプロデューサー的な役割を担っていただきます。実行に当たっては、ハラダ製茶が全面的にサポートするため、博物館のコンセプトや基本方針に沿っていれば、これまでの常識を覆すような思い切った施策も可能。自分の能力を活かし、さらに高めることができます。