自民党千葉市議団の指定管理者制度への姿勢

2月25日の読売新聞千葉版の記事から

コスト削減 議会に異論−千葉市35施設 民間委託
千葉市が35か所のスポーツ施設の運営を新年度から指定管理者制度の導入で民間委託する議案が、28日の市議会教育未来委員会(11人)で審議される。選定から外れた外郭団体「市スポーツ振興財団」は、約30人の職員が仕事を失う形となり、他の外郭団体に転籍する方向だ。ただ、議会には選定方法などを巡って反発も出ており、「市長野党」が多数を占める同委員会での審議の行方が注目される。(武田泰介)
■コスト削減
 「(民間側の)テルウェルの提案は自分たちの会社でやっている事業を単に市の施設を借りてやるだけ。施設費がかからず安くできるが、正しい市民還元の方法なのか甚だ疑問だ」
 自民党市議団の小川智之幹事長は24日の予算特別委員会で、今回の指定管理者選定に疑問を呈した。
 外部委員5人でつくる市の選定評価委員会は1月、35施設の管理者にNTT関連会社「テルウェル東日本」と「スポーツクラブNAS」の企業グループを選定するよう答申。財団との競合で6項目にわたる審査の結果、合計点で企業グループが上回ったためだ。
 勝敗を分けたのは、配点(計300点)の3分の1を占める人件費などの「管理経費」。市職員に準じた財団の高い給与がネックとなり、35施設を一括公募したこともあって大きな差がついた。熊谷俊人市長は「前回の選定から5年も準備期間があったのに、コスト削減などを進めてこなかった財団側にも問題がある」と手厳しい。
■問題視
 議会側が今回の選定を問題視する根拠の一つとしているのが、昨年12月に総務省が全国の自治体に出した通達だ。総務相指定管理者制度について「外注によるコストカットのツール(道具)に使われてきたきらいがある」と発言。経費削減で非正規雇用が増え、「官製ワーキングプア」を大量に生む結果になったとして、見直しを促す内容だ。
 小川氏も18日の代表質疑でこれを引用。別の市議も「今回の選定は通達違反だ」と批判する。
 もう一つが、コスト削減の効果そのものに対する疑念だ。市人事課によると、同財団が選定から外れた施設の職員は計31人で、人件費は平均年約900万円。単純計算すると合計で年2億7000万円。民間委託で施設自体の運営コストは減っても、職員を解雇するわけではないので、この分の人件費はかかり続ける。
 折しも、市は各外郭団体に出している計103人の派遣職員を順次引き揚げる方針で、空いたポストに財団のプロパー職員を充てるなどして雇用調整を図る考え。だが、議会からは「トータルでコスト削減にならない」(自民市議)との批判が出ている。
■市長野党
 今回の議案が審議される市議会教育未来委員会は市長野党の自民、共産で過半数。仮に否決せずに継続審査となっても、4月に市議の改選を迎えるため、審議未了で「廃案」となる可能性も出てきた。
 市はすでにプロパー職員の大半の転籍先を内定しており、議会承認が得られなければ混乱も予想される。「場合によっては内定取り消しもあり得る」といい、審議の行方を見守っている。
千葉市が民間委託する方針の主なスポーツ施設
 ▽高洲市民プール▽千葉市武道館▽宮野木スポーツセンター▽千葉市相撲場▽千葉公園(野球場、体育館など)▽稲毛海浜公園(球技場など)▽花島公園(庭球場、トレーニング施設など)▽花島コミュニティセンター
指定管理者制度> 公共施設の管理・運営を民間企業や団体などに委託することで、市民サービスの向上やコスト削減を図る仕組み。千葉市は、スポーツ施設やコミュニティセンターなど計80施設について新年度からの委託に向けて管理者を公募。委託期間は5年間で、外郭団体による運営は65施設から24施設に減る結果となった。
(2011年2月25日 読売新聞)

自民党政権下で進められてきた地方自治体への指定管理者制度導入は,現在でも進められているところですが,民主党政権下で,総務大臣が言っているように,一定の反省または見直しも示唆されているところですね。
それを根拠にして市の執行部を批判するのが自民党市議団というところが,不思議です。
きっと,自民党市議団は,自ら導入を進めようとしてきた指定管理者制度に対しての姿勢を変更したんでしょうね。歓迎すべきことです。

3月1日追記

3月1日の東京新聞千葉版の記事から

千葉市議会が継続審査 スポーツ施設 指定管理者議案で
千葉市議会の教育未来委員会(松戸敏雄委員長)が二十八日開かれ、市の三十五のスポーツ施設の指定管理者を東京都内の民間企業グループと定める議案が、最大会派の自民などの意向で継続審査となった。
 市議会は四月に改選されるため、同議案は廃案となる可能性が高いが、熊谷俊人市長は成立に向け、三月中に臨時議会を招集する方向で、各会派と調整する考えを示した。
継続審査になったのは、市高洲市民プール(美浜区)など三十五施設について、四月から五年間、一括管理する指定管理者を同グループとする議案。
 市の外郭団体で、現在の指定管理者の市スポーツ振興財団も申請していたが落選した。このため、同財団の三十一人が余剰人員となり、市側は他の財団に転籍させる方針を示している。
 委員会では、自民議員が「職員を転籍させることで財政効果が得られず、行政改革上も問題がある」などとして継続審査を主張。共産議員も議案に反対する意見を述べ、継続審査に同調した。
委員会後、熊谷市長は報道陣に「改選を控えて継続とするのは、議会の役割を放棄したことになり残念だ。コスト面の批判は筋違いで、臨時議会で十分に説明して理解を得たい」と述べた。
 臨時議会が実現しなければ事実上の廃案が決まり、熊谷市長は専決処分か市直営による施設管理を選ぶ必要がある。熊谷市長は「望ましくはないが、議案通りの専決処分も選択肢」と話した。 (小川直人)

教育未来委員会での採決結果は,委員長を除いて,賛成5,反対4,欠席1で継続審議が決まったとのこと。議案自体には民主,公明系の会派が賛成,共産が反対。自民党は保留というところだったんでしょうね。そのために継続審議か否かの採決で,自民党が継続審議に賛成。共産党は本来的には継続審議ではなく即否決したいところを,次善の策,実を取るものとして,継続審議に賛成したという構図。
継続審議−廃案なら専決処分は確かに市長の選択肢。市長の専決処分を批判し,封じ込めるためには,自民党は3月の臨時議会で否決とすべきであるが,そこまで筋を通せるかどうか。