指定管理者の話題 (ソレイユの丘+ぐんまフラワーパーク)

指定管理者制度については、このブログでたくさん触れているところである。
http://d.hatena.ne.jp/ironsand/20060822#p1 http://d.hatena.ne.jp/ironsand/20060607#p1 http://d.hatena.ne.jp/ironsand/20060607#p3 http://d.hatena.ne.jp/ironsand/20060531#p1 http://d.hatena.ne.jp/ironsand/20060526#p1 http://d.hatena.ne.jp/ironsand/20060526#p2 http://d.hatena.ne.jp/ironsand/20060519#p1
群馬県立のぐんまフラワーパークもいろいろと報道されているようです。
http://blogs.yahoo.co.jp/ccrgoto/17754741.htmlのブログにありますが,「『指定管理者制度』により民間委託されて以来、芝生の面積が2倍になり、花の本数が半減するなど、サービスの低下が目立っているそうです。利用者からもクレームが県に寄せられているとのこと。」とのこと。元記事は毎日新聞ですね。

ぐんまフラワーパーク:大花壇に偽りあり!? 芝生倍増、花は半減−−委託後 /群馬

 ◇民間委託後
 今年度から民間委託となった県施設「ぐんまフラワーパーク」(前橋市柏倉町)の正面大花壇が6月以降、激変した。芝生の面積が従来の2倍に拡大。逆に花の本数は半減し、関係者から「手入れが楽な芝にしたのでは」との声が漏れている。パーク側は「芝を増やしたのは花を引き立たせるため」と説明するが“大花壇に偽りあり”の状態が続いている。
 大花壇は入り口正面の配置で同パークの目玉。5月の大型連休までは「10万本のチューリップ」が見ごろだったが、同月下旬になると、花は枯れたまま放置され、所管の県蚕糸園芸課が委託先の「ぐんまフラワー管理」(前橋市、久門渡社長)に植え替えを要請した。ところが、同社は6月初旬に、芝生面積をそれまでの28%から花壇全体(4890平方メートル)の57%に拡大する申請を県に提出。県は「デザインの一環」としている点を考慮して承認した。この結果、例年、8月には約5万本の花が咲くが、今年は半分以下の2万本程度となってしまった。
 その後、同課には「最近、花が少なくなった」などの問い合わせがあるという。関係者からは「民間委託になったのに、来場者の声を無視している」「花を減らしたのは人手不足の解消策なのでは」など疑問の声も出ている。こうした声に、同社の久門圭子事業部長は「デザイン上の問題。今、芝が目立つのは冬にバラを植えるための移行期間」と話している。【桝谷敦子】

8月15日 毎日新聞朝刊

また,その5日前にはこんな記事も。

ぐんまフラワーパーク:記念セレモニーの日、700万人未達成だった /群馬

 ◇「初歩的集計ミス」
 県が今年度から運営を民間に委託している「ぐんまフラワーパーク」(前橋市柏倉町)は開園時からの累計入場者数が700万人に達したとして、5月4日に記念セレモニーを開いたが、実際には未達だったことが9日明らかになった。5月4日時点では約4万1000人が不足しており、実際に700万人に達したのは同月28日だった。同パークは「初歩的な集計ミス」と説明している。
 所管の県蚕糸園芸課によると、5月上旬に、前年度までの累計入場者数(約688万人)を示す資料を見た同課職員が疑問を抱き、同パークの運営会社「ぐんまフラワー管理」(前橋市、久門渡社長)に問い合わせたのがきっかけで、発覚した。約1カ月後、同社から「誤りがあった」と謝罪があったという。
 同社の久門圭子取締役は「引き継ぎ業務の慌しさの中で、数字の解釈を誤ったとしか考えられない」と述べている。また、客足の増加を当て込み、意図的に大型連休中に合わせたと指摘されている点については「お客さんが多い時期はかえって混乱を招く。そうした意図はない」と否定した。一方、同課は「作為はなく、単純ミス」として、調査する考えはないという。【桝谷敦子】

8月10日毎日新聞朝刊

はたまた,その2日前の記事には

ぐんまフラワーパーク:役員2人含む5人が辞職 業務委託巡り社長と対立 /群馬

 指定管理者制度に基づいて、4月に県が民間に業務委託した「ぐんまフラワーパーク」(前橋市柏倉町)で、役員2人を含む計5人が、6月中に辞職していたことが7日、分かった。関係者によると、うち元社員2人は7月下旬に労働基準監督署に未払い賃金の補償などを求める申し立てをしており、同署が行政指導を視野に調査を進めている。だが、委託元である当の県は静観の構えで、調査などに踏み切る考えはないという。
 同パークは、赤城高原牧場クローネンベルク(ドイツ村)の経営者らが出資する「株式会社ぐんまフラワー管理」が管理・運営を請け負っている。同社によると、県との協定で、4月に社員16人を雇用、役員5人を選任した。6月ごろに、久門渡社長と役員の対立が表面化し、総務部長や支配人など5人が退社した。同パークを管轄する県蚕糸園芸課もこうした事態を把握しており、同課の霜垣みよ子主幹は「働く環境はしっかりしてもらいたいが」と困惑している。
 役員らが退社した理由には、指定管理者制度で業務委託を受けた会社が別会社に業務委託することを禁じているにもかかわらず、同社が営業や経理などの一部を関連会社(本社・愛媛県西条市)に委託していたことにある。役員らはこの事実を県に報告。「協定違反はない」とする久門社長と対立した。霜垣主幹は「確かに不可解な部分は多いが、業務報告は年度単位なので、現段階で調べるつもりはない」とし、「業務委託禁止」を黙認する格好になっている。【桝谷敦子】

毎日新聞 2006年8月8日

繁忙期の8月13日から15日までは夜間開館(午後5時から9時まで延長)をし,かつ夜間の入園料は無料とするなどのサービスの向上も図ってはいるようですが(訂正:指定管理者制度導入前から夜間開館はやっていた。ただ無料ではなかったとのこと)。
http://titoh44.blog29.fc2.com/blog-entry-249.htmlによると,指定管理者の「ぐんまフラワー管理」の85%出資者は「赤城高原開発」というところで,全国に21ものファームパークを展開し成功させている株式会社ファーム(愛媛県西条市,久門渡社長)の傘下だそうです。ファームパークというコンセプトは,まだまだ可能性もあると思いますが,(株)ファーム自身,長崎あぐりの丘からの撤退,山口ニュージーランド村の休園,四国ニュージーランド村の休園など,必ずしもビジネスとしてうまくいくかは別問題(「あぐりの丘」では,長崎市議会での2000年12月頃の議論を見ると,ファームによる地元採用者の不当解雇や施設管理状況の悪化が見られているようです。この状況に対してファームは全社的に対応せず,あくまで,「あぐりの丘」部分だけでの損益バランスを考えていたのではないかと思います。その姿勢は利潤を追求する企業としては当然かもしれません。むしろ問題は長崎市。違約金条項も含め,仕様書,契約書をきっちりと固め,市民へ状況を公開するという部分が不十分だったと思います。)。住民からの支持,支援が不可欠なものでしょう。
続けての報道は指定管理者にとっても痛手でしょうが,これを機会に,行政も当事者責任を認め,指定管理者ともども住民の信頼回復に努めることが必要な状況かと思います。

ファームパークについての10施設の事例研究等 10月6日追記

ファームパークについての10施設の事例研究が出ています。
http://www.city.niigata.niigata.jp/info/syoku_hana/kouryuaguri/iinnkai/01/kentousiryou.pdf
新潟市の「食と花にいがた交流センター(仮称)」基本計画の一部です。ファームパークの在り方についてそれなりに参考になります。
また,横須賀市ソレイユの丘については,長井海の手公園整備に係るPFI事業者選定委員会が行った「(仮称)長井海の手公園整備等事業 提案審査結果」http://www.city.yokosuka.kanagawa.jp/pfi/030704.htmlもファームパークの在り方について参考になります。横須賀市にとって農業公園とはどのようなものか,委員にとって様々に異なる視点があがっています。 それにしても,この選定委員会の委員の有識者の割合がもっと多ければ,選定結果も異なってきたように思うのは読み過ぎでしょうか。

長井海の手公園ソレイユの丘の事業者の選定経緯 10月18日追記

http://www.city.yokosuka.kanagawa.jp/kansa/data/04082601.docに2004年8月26日付の横須賀市監査委員会の事務監査請求に係る監査の結果について出ています。ソレイユの丘の事業者の選定過程についての監査の結果です。
市民からの監査請求の要旨は,「選定委員会委員が『公園整備事業提案審査の過程に納得がいかない』として途中辞任したこと,内部委員と外部委員の評価があまりにも違いすぎるなど,評価が適切に解されたかについて,監査を求めているもの。
提案審査は価格だけでなく,事業内容の提案について選定委員会で総合的に行われます。
選定委員会委員は慶應義塾大学総合政策学部教授 駒井正晶氏,千葉大学園芸学部助教授 赤坂信氏,横須賀商工会議所専務理事 鈴木泰浩氏,團紀彦建築設計事務所代表 團紀彦氏,平倉直子建築設計事務所主宰 平倉直子氏,横須賀市企画調整部長 鈴木一隆氏,横須賀市緑政部長 礒部日出男氏,横須賀市土木部長 安東崇夫氏,横須賀市下水道部長 柳田隆氏の9名。すなわち,外部委員5名,内部委員(市職員)4名でした。
選定委員会による総合的な審査の結果,総合得点(平均)としては,1位のファームグループが63.041点,2位のダイヤモンドリースグループが61.024点,3位は55.810点,4位は41.913点でした。1位と2位は僅差だったと言えるでしょう。
金額はファームが75億9715万円,ダイヤモンドリースが73億496万円であり,市の支出軽減の面では,ダイヤモンドリースの方がリードしています。
一方事業内容についてはファームが34.195点,ダイヤモンドリースが31.024点となっています。これだけ見ると,ファームの提案内容が優れていたのだと思ってしまいますが,よく見てみると疑問も出てきます。
事業内容の評価について,外部委員だけの点数の平均を見てみると,1位はダイヤモンドリースの40.200点。ファームは3位の27.475点。市職員だけの点数の平均を見てみると,ダイヤモンドリースは3位の19.563点,1位はファームの42.594点と大きく評価が違っています。実際,外部委員の5名のうち4名はダイヤモンドリースが1位となったのに対し,市職員は4名中4名ともファームを1位としたもの。市職員はダイヤモンドリースを4名中3名は3位,4名中1名は4位と極めて低く評価しています。
具体的な選定の経過は次のようになっています。2003年5月9日に提案の受付が〆切られ,5月23日の第6回選定委員会で応募者のプレゼンテーションの実施等が行われました。その後,2003年6月20日の選定委員会でまさに点数付けによる事業者の選定が行われました。26日,團委員は委員を辞任。27日に行政上の手続きが終わり,市としての事業者の選定が決定。30日に事業者選定結果の公表。7月3日に團委員は「提案審査の過程に納得がいかない」と記した辞任届を提出。7月4日提案審査結果の公表となっています。
少し面白いのは内閣府PFI推進のページhttp://www8.cao.go.jp/pfi/index.htmlからたどれる長井海の手公園の資料http://www8.cao.go.jp/pfi/project_documents2_02.html#project040の「提案審査結果」(PDFファイル)や,横須賀市のページhttp://www.city.yokosuka.kanagawa.jp/pfi/030704.htmlからたどれる「提案審査結果」(PDFファイル)の日付はの日付が6月25日付けになっていることです。一方同じく横須賀市のページからたどれる「提案審査結果」(wordファイル)の日付は7月となっています。
想像するに,6月20日に選定委員会があったのち,速やかに決定,公表するつもりで市(PFI導入について横須賀市が業務委託した日本総合研究所が具体的には文書作成作業をしているようですが)が動き始めたところで,外部委員との間で何らかのやりとりがあって,手続きが伸びてしまったのではないでしょうか。
もちろん,これだけの経緯で,市職員に何らかの作為があったと言うことはできません。しかし,外部委員の審査表は審査委員会の開催に先だって"開封"状態で事務局(市職員)が集めていますから,外部委員の点数を見てから内部委員(市職員)が審査表を作成,または修正したことは可能だったわけです。当然その証拠はありませんが,個人的には後出しじゃんけんがあったような,ひじょうに疑問が残ってしまう審査過程だと思います。

2007年2月12日 追記

2006年9月18日付け産経新聞群馬版から

ぐんまフラワーパーク、民間参入で“混迷”

 今年度から指定管理者制度を導入した「ぐんまフラワーパーク」(前橋市柏倉町)が、混迷している。急激なコスト削減が響いて入園者数は前年度を下回り、社屋・パートも相次ぎ退社。運営会社が相乗効果を狙った赤城高原牧場クローネンベルク「ドイツ村」(同市苗ケ島町)での不祥事発覚も相次いでいる。県は「民間参入のプラス面もあり、総合的に判断しなけばならない」(高木勉副知事)との見解だが、関係者からは早急な是正指導を求める声が高まっている。
■花より芝生…
 「前はもっと花があった。ちょっと拍子抜けですね」
 栃木県佐野市から5年ぶりに訪れた夫婦は、中央のパークタワーから大花壇を見下ろしながら、がっかりした表情を見せた。
 フラワーパークを運営する「ぐんまフラワー管理」(久門渡社長)は6月上旬、大花壇の芝生面積をそれまでの28%から57%に拡大する申請を県に提出。県蚕糸園芸課は「デザインの変更」として承認した。その後から、「花が少ない」との声が増え始めた。
 事業計画では、積極的な活用をうたった「花と緑の学習館」は今月に入って、ようやく講座が開かれる。
 入園者は8月末現在で前年度より3万1395人少ない18万552人。8月13〜15日に入園無料で夜間営業を行った効果で、 8月は前年度を7912人上回った。夜間営業は9、10月も予定しているが、「低迷する入園者をかさ上げするためのまやかしだ」と批判する声も出ている。
■基本給も半減
 ぐんまフラワー管理の試用期間を終え、正社員となった男性は、7月の給与明細書を見て愕然とした。
 基本給が13万円と半減。調整手当などがついて額面は30万円となったが、100時間を超えた残業手当は、全くついていなかったからだ。
 6月には役員2人と総務部長、支配人ら5人が退社。元社員2人が7月、前橋労働基準監督署に未払い賞金の補償を求めて申し立てた。
 実は、同社の就業規則では「職務手当」「調整手当」などは時間外労働に対する固定的給与と定められている。だが、入社時にはその説明が一切なかったという。
 同社はドイツ村を運営する第三セクター「赤城高原開発」(久門渡社長)が85%出資して設立した。この給与制度は、全国でドイツ村など観光型農業公園22施設を展開する「ファーム」(本社・愛媛県西姦市、久門社長)が統一採用している。
 藤田直樹総務部次長は「仕事が減る冬場は残業しなくても払われる。繁忙期と閑散期の差が激しいこの業界に対応した制度で、違法ではない」と説明する。
■元幹部が忠告
 昨夏、今回の事態を予言し、指定管理者選定に当たって、県にメールで忠告していた人がいる。ファームの元幹部だ。
 「借金で首が回らぬ状態の企業が、なぜ官の施設を運営したがるのか、それは企業存続をかけての挑戦です。ここで得られた利益は、すべて借金の返済にまわり、しぼりとられます。その後、残るのは労働問題、園の衰退です」
 実際、ファームは今年4月決算で約137倍円の負債を抱え、経営再建中。3月に長崎市の「あぐりの丘」から撤退し、「山口ニュージーランド村」「四国ニュージーランド村」「愛媛わんわん村」が相次いで閉休園した。ドイツ村では、食品衛生管理者を名義借りするなど、不祥事が次々と判明している。
 5月24日開かれたぐんまフラワー管理の取締役会。ファームが「あぐりの丘」で使っていた列車型バスの購入予算に、新車並みの1890万円を計上した。これに「利益相反行為だ」などと役員3人が反対して議案を否決した。それが引き金となり、役員2人は6月に辞任した。
 一連の問題について、県蚕糸園芸課の吉田孝男課長は「入園者の減少は悪天候や競合施設が増えたことも要因。会計処理については、 1年間の決算を見てみないとなんとも言えない」と静観する。
 県との基本協定では、「不正行為があったときは指定管理者の指定を取り消せる」と定められている。11日の定例記者会見で、小寺弘之知事は「法律や規則に照らして、きちんと指導していかなければいけない」と明言した。
 多難な船出を乗り蓼見、県民に愛される「花園」として再生されるのか──。県の対応も含め、今後の動向が注目される。