東工大吉川教授のごみ発電技術続報

5月1日のエントリー「いちき串木野市(鹿児島県)ごみ発電問題」や,5月26日のエントリー「東京工業大教授の責任」に関連する一件。
8月9日の南日本新聞の記事から

いちき串木野ごみ発電施設 市が業者を損賠提訴へ 「改善要請に応じない」
いちき串木野市のごみ処理発電施設「市来一般廃棄物利用エネルギーセンター」が計画通りの機能を発揮していない問題で、同市は8日までに、建設を請け負った業者らが施設の改善要請に応じないなどとして、センターを設計、施工した業者らを相手に損害賠償請求訴訟を起こす方針を固めた。賠償請求額などは未定。
 同市は8月中にも、訴訟内容を詰め、市議会の調査特別委員会に説明する。9月4日開会の市議会定例会に提案する2008年度一般会計補正予算案に訴訟費用を計上する見通し。
 施設はごみ処理で発生するガスで発電する仕組み。旧市来町が総事業費約10億円で建設、2004年4月に稼働した。しかし、稼働直後から不調が続き、機能を向上させる改修工事も行われたが、発電機能は復旧しなかった。ごみ処理も一時停止するなど、処理能力は計画の約3割にとどまっている。
 市は06年8月、基本設計業者に対し、改修工事の代金支払いを求める民事調停を鹿児島簡裁に申し立てたが、成立しなかった。
 総事業費には、国庫補助金2億4700万円、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NED0)補助金約6400万円も含まれており、会計検査院から「補助金の効果が認められない」と指摘を受けていた。

設計した業者とは(株)エコミート・ソリューションズでしょうか。

8月20日追記

8月20日の西日本新聞の記事から

ごみ処理発電 計画倒れ 10億円賠償求め提訴へ 考案の大学教授ら相手に
鹿児島県いちき串木野市は19日、旧市来町が建設したごみ処理発電施設をめぐり、当初の計画通りに稼働しないため発電ができず、施設の改善要請にも応じないなどとして、施設を考案した大学院教授、基本設計会社、施工会社の3者を相手取り、建設費や改修費など総額約10億4700万円の損害賠償請求訴訟を10月にも鹿児島地裁に起こす方針を明らかにした。
 同日の市議会特別委員会に報告した。市側は訴訟関連議案と訴訟費用377万円を盛り込んだ本年度一般会計補正予算案を来月4日開会の市議会に提案。議会の議決を得れば提訴する。
 施設は一般ごみと肉骨粉を焼き、発生するガスで発電する計画。合併前の旧市来町が2004年、全国で初めて完成させた。総事業費約9億9300万円のうち約3億円が国などからの補助。
 ところが、ガスに不純物が混じり発電できず、改修工事を7回重ねたものの、発電は断念。ごみ処理量も当初計画の約3割にとどまっている。会計検査院はこれまで2回、「補助金の効果が認められない」と指摘し、補助金返還を求める可能性を示唆している。
 同市は原因を専門業者に依頼して検証。結果を3者に送って改善を要請したが、回答はないという。基本設計会社には06年、改修工事費5000万円の半額の支払いを求めて、鹿児島簡裁に民事調停を申し立てたが、不調に終わった。同市の田中正幸副市長は「裁判で責任を追及したい」と話している。

8月9日の南日本新聞の記事では「業者ら」となっていましたが,今日の記事では市の方針として「教授、基本設計会社、施工会社」の三者となっていますね。教授とは吉川邦夫氏,基本設計会社とは(株)エコミート・ソリューションズでしょう。施工会社は三井三池製作所でしょうか。
 基本設計会社との契約や工事の仕様書の詳細はわかりませんので,先行きは何ともわかりませんが,エコミート・ソリューションズとの契約に至るまでの過程が結構重要になってくるような気がします。

10月2日追記 いよいよ裁判へ。

9月29日のKTS鹿児島テレビのニュースから

ごみ発電施設問題損害賠償訴訟へ
いちき串木野市のごみ処理発電施設が計画通りに稼動していない問題でいちき串木野市は早ければ来月中にも業者などを相手取って総額10億4700万円余りの損害賠償を求める裁判を起こすことになりました。
 これはきょう開かれた市議会の最終本会議で関連する議案が賛成多数で可決されて決まったものです。
 この問題をめぐってはいちき串木野市の度重なる改善要求に対し業者側が誠意ある対応を示していないとして市が業者などを相手取って総額10億4700万円余りの損害賠償を求める裁判を起こす方針を決め関連する2つの議案を今度の議会に提出していました。
 ・・・採決の結果裁判の承認を求める議案は12対9の賛成多数で可決されました。
 きょうの議会での議決を受けていちき串木野市では弁護士と協議の上早ければ来月中にも鹿児島地裁に裁判を起こすことにしています。

いよいよですね。
ちなみに,以前のエントリーで書いたつくば市の風車問題(vs.早稲田大学)については9月29日に東京地裁で判決が出ました。全然違うケースなので参考にも何にもなりませんが,大学側の「契約上の債務不履行」を厳しく見た判決となっております。
 東京新聞の9月30日の記事から

風車回らず発電事業失敗 早大に2億円賠償命令
小中学校に設置した風車が回らず発電事業が失敗したとして、茨城県つくば市が業務委託先の早稲田大学などに約二億九千八百万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は二十九日、「期待された発電量が得られないことを認識しながら、市への報告を怠った」として、早大に約二億九百万円の賠償を命じた。早大側は即日控訴した。
 荒井勉裁判長(萩原秀紀裁判長が代読)は「期待された発電量が得られないことを市側に報告せず、風車の消費電力が発電量を大幅に上回ることを説明しなかった」と指摘。契約上の債務不履行により、早大側に賠償責任があると判断した。
 一方で「風の状況など慎重な検討を迫る材料がそろっていたのに、自ら調査を実施せず、早大側の調査結果をうのみにした」と市側の過失も認定。早大の賠償額を七割と算定した。風車を製造した「イーアンドイー」(大阪市)については「発電量達成を保証したとは言えない」と市側の請求を棄却した。
 判決によると、つくば市は二〇〇四年、風力発電で小中学校の電気代の一部をまかない、発電相当額の地域通貨を発行して市民に二酸化炭素排出削減を促すため、風力発電事業の基本計画策定などを早大に委託。市は約三億円をかけ、小中学校に計二十三基の風車を設置した。
 早大側は秒速二メートルの風で風車が回り始めると説明していたが、実際には秒速四メートルで稼働する風車を設置。設置場所の風速の大半が秒速二メートルを下回ったため、風車が回らず、発電量は予定の四分の一程度にとどまった。・・・・

10月3日追記 朝日新聞の報道

10月3日の朝日新聞の記事から

ごみ発電施設「失敗」 地元自治体、補助金3億円返還へ
ごみを処理しながら発電して年間2千万円の収入が見込まれる「世界初の施設」として、鹿児島県いちき串木野市が導入したごみ処理施設について、会計検査院が「施設の審査が不十分で、計画通りに稼働していない」と指摘していたことが分かった。指摘を受け、環境省などは同市に国の補助金約3億1千万円の返還を求める考えだ。
 市は返還に応じる意向で、開発した東京工業大学大学院教授やメーカーらを相手取り、建設費など約10億5千万円の損害賠償訴訟を起こす方針を固めている。
施設は「市来一般廃棄物利用エネルギーセンター」(同市)。技術開発をしたのは東工大大学院の吉川邦夫教授(55)で、同教授が社長を務める設計会社「エコミート・ソリューションズ」(神奈川県相模原市)が設計、三井三池製作所(東京都中央区)が建設を担当。国庫補助金など総額9億9千万円で建設し、04年4月に完成した。
 一般ごみを焼却し、発生したガスでディーゼル発電できるのが特徴で、1日24トンのごみを処理し、売電で年間2千万円の収入を見込んでいたが、ごみ焼却から高純度のガスが安定的に出なかったことからほとんど発電出来ず、機器の不具合もあり、ごみ処理も当初計画の3割弱という。
 田中正幸副市長は「税金で建設するごみ処理施設で、実験はあり得ない。講演では実行可能だと話していたはずだ」とし、「(教授から)抜本的な助言はもらっていないし、今では音さたもない」という。
 吉川教授は取材に対し、「改善について、市にはアドバイスをしている。実行してくれればいい。もともと共同研究という位置づけで、完全に能力を発揮するまで3年はかかる」と説明している。

これまで地方紙の記事や地方版等では記事になっていましたが,全国紙の全国版に本件が掲載されたのは初めてのように思います。
 吉川邦夫教授の「共同研究という位置づけ」が,東京工業大学発ビジネスベンチャーの経営者という立場から言えるのか,司法の場でも,社会的にも注目されてくるものと思います。

11月7日追記 会計検査院報告

11月7日の会計検査院の検査報告に,市来一般廃棄物利用エネルギーセンターの件が触れられていることについて,11月7日のエントリーで触れています。