市来一般廃棄物利用エネルギーセンター地裁判決

2008年5月1日のエントリー「いちき串木野市(鹿児島県)ごみ発電問題」,2008年5月26日のエントリー「東京工業大教授の責任」,2008年8月9日のエントリー「東工大吉川教授のごみ発電技術続報」,2008年11月7日のエントリー「市来一般廃棄物利用エネルギーセンター問題続報」で触れてきた市来一般廃棄物利用エネルギーセンターの件。
いちき串木野市は2009年2月16日に,施設を設計・施工した業者らを相手どって,総額9億8000万円あまりの損害賠償請求訴訟を鹿児島地裁に起こしていましたが,昨日2013年4月24日鹿児島地裁での判決が出ました。
その件についての新聞等の報道は次のとおり。
まず,4月25日の朝日新聞の記事から

ごみ発電失敗、業者訴えた市敗訴 鹿児島・いちき串木野
鹿児島県いちき串木野市のごみ処理発電施設が計画通り稼働しなかったのは基本設計や施工に問題があったためだとして、市が設計や施工を請け負った業者らに約10億円の損害賠償を求めていた訴訟の判決で、鹿児島地裁は24日、市の訴えを棄却した。
被告は、発電方式の提唱者である東京工業大学吉川邦夫教授、吉川教授が代表を務めるエコミート・ソリューションズ(EMS、神奈川県)、施工した三井三池製作所(東京都)。
施設は、市に合併する前の旧市来(いちき)町が2004年、国や外郭団体の補助金約3億円を含む約10億円で建設。一般ごみと食肉加工場の肉骨粉を混ぜて蒸し焼きにし、発生したガスで発電する「世界初の施設」とされた。だが、完成直後からほとんど発電できず、ごみ処理量も計画の3分の1程度にとどまった。08年に会計検査院から補助金は不当と指摘されて稼働停止し、現在は市が国に補助金を返還しながら、施設の売却を進めている。
判決は「吉川教授、EMS、市来町が、計画段階から、実用化を目指し実証的性格を持つ施設と認識していた」と指摘。問題が起きたのは不適切なごみの分別などが影響したためで、「必要な調査や検討を十分にしなかったり、設計に欠陥があったりしたとは認められない」とした。三井三池については「性能を保証した契約ではなく、発注仕様書に沿って施工されたもの」とした。

記事を見るに、「吉川教授、EMS、市来町が、計画段階から、実用化を目指し実証的性格を持つ施設と認識していた」「必要な調査や検討を十分にしなかったり、設計に欠陥があったりしたとは認められない」の部分,思いっきり判決は間違えているように個人的には思う(もちろん,裁判で被告がどんな主張を行ったのか知るよしもないが)。
西日本新聞の記事から

ごみ発電訴訟、いちき串木野市敗訴 鹿児島地裁判決
計画通りに稼働しなかったごみ処理発電施設をめぐり、鹿児島県いちき串木野市が、施設を考案した研究者や施工業者など3者に対し約9億8千万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、鹿児島地裁は24日、市の請求を棄却した。
 判決理由で吉村真幸裁判長は、契約書の記載内容などから「前例のない施設で、完全な実用施設ではなく、試行錯誤を繰り返す実証的なものだと市側は認識していた」と指摘。産業廃棄物が混ざるなど、ごみ分別が適切でなかったことなども施設がうまく稼働しなかった原因と判断した。
3者は、東京工業大大学院の吉川邦夫教授▽吉川教授が役員を務める設計会社エコミート・ソリューションズ(EMS、相模原市)▽ごみ処理部分を施工した三井三池製作所(東京)。
 判決によると、施設は合併前の旧市来町が発注。一般廃棄物肉骨粉を燃やして生じたガスで発電する新技術を活用し、建設費約10億円で2004年に稼働したが、ほとんど発電できず、ごみ処理能力も予定の約3割にとどまり、08年末に運転を停止した。
 田畑誠一市長は「主張が認められず非常に残念。控訴するかは弁護士と相談して検討する」としている。
 3者側は「主張を理解してもらった妥当な判決内容だ」とコメントした。

また,西日本新聞では関連記事も掲載。

10億円の“粗大ごみ” ずさん行政のつけ、市民に
計画通りに稼働しなかったごみ処理発電施設をめぐる損害賠償請求訴訟で、鹿児島県いちき串木野市は施工業者などの責任を主張したが、浮き彫りになったのは、補助金に依存した箱もの行政のずさんぶりだ。
施設をめぐっては、完成検査で発注者の旧市来町が、主燃料である一般廃棄物肉骨粉を燃やして生じるガスを入れずに、補助燃料の軽油のみで発電しただけで「施設は完成した」と国に届け出る一方で、「未完成の施設を責任を持って完成させる」という念書を施工業者側と交わすなどの不透明な対応が既に明らかになっている。
 鹿児島地裁はこうした経緯を踏まえた上で「一般廃棄物肉骨粉を同時に処理することが相当困難であることは市来町も認識していた」などと認定し、市側全面敗訴の判決を言い渡した。
施設には国が約3億円の補助金を交付していたが、予定された機能が発揮されていないことを理由に会計検査院が不当と判断。2009年度から18年度まで毎年度2400万円ずつ返還中だ。
 市は施設を売却しようと「最低価格1万円」などで5回の入札を繰り返したものの、いずれも不調。昨年、施設を分割して公売にかけ、発電施設だけが211万円で落札されたが、ごみ処理施設本体は売却や解体の見込みは立たない。解体費は1億数千万円に上るとみられ、年約10万円の管理費も積み上がっていく。
 裁判による「損害回収」の当ては外れ、増える一方の負担に、田畑誠一市長は「市で解体処理せざるをえない」と話す。
鹿児島オンブズマンの続博治代表は「新技術を検証しないままに導入した行政の責任と、導入を認めた議会が機能していなかったことを総括すべきだ」と指摘した。

KTS鹿児島テレビのニュースでは

いちき串木野市・ごみ処理発電施設訴訟 棄却判決
いちき串木野市が建設したごみ処理発電施設をめぐり、施設が十分に機能しなかったのは設計業者に責任があるとして市がおよそ10億円の損害賠償を求めている裁判で、鹿児島地裁は24日、いちき串木野市の請求を棄却しました。
問題のごみ処理発施設はいちき串木野市が2004年に総額10億円をかけて建設したものですが、システムトラブルが相次ぐなどして予定通りの機能を発揮せず、2008年には施設の稼働を停止しました。
 この施設の建設には国の補助金が充てられていましたが、いちき串木野市会計検査院から「不当な補助金の支出」と指摘され、総額2億4000万円の返還を求められました。
 裁判では原告のいちき串木野市が、施設が機能しなかったのは設計を担当した神奈川県の「エコミート・ソリューションズ」などに責任があるとしておよそ10億円の損害賠償を求めていました。
判決で鹿児島地裁の吉村真幸裁判長は、「施設が完全な実用段階にないことはいちき串木野市サイドも認識していてトラブルが伴うことは当然に予想された」という「エコミート・ソリューションズ」の主張を認め、いちき串木野市の請求を棄却しました。
 判決について「エコミート・ソリューションズ」側は「妥当な判決内容」としている一方、原告のいちき串木野市・田畑誠一市長は「主張が認められず誠に遺憾。今後については、弁護士と相談して決めたい」とコメントしています。