「みちあむ」閉館?

河北新報の3月18日の記事から。

「みちあむ」突然閉館 特定財源無駄遣い批判を意識? 仙台
全国唯一の「道路博物館」とされる東北地方整備局の道路資料館「みちあむ」(仙台市青葉区)が、何の前触れもなく閉館していたことが18日、分かった。整備局は「運営費を道路特定財源から支出していることが国会で指摘されたため」と説明している。
 道路特定財源のあきれた使い道が次々と明らかになり「無用な批判は浴びたくない」とばかりに、こっそりと店じまいしたとみられる。
正面玄関に「みちあむ閉館のお知らせ」が張り出されたのは11日朝で、その日から玄関は閉ざされ、電話は留守番電話のメッセージが流れるだけとなった。
 閉館の方針は慌ただしく決まったらしい。宮城県文化振興財団など公共機関のホームページでは、いまだに「みちあむ」が紹介されている。国道48号沿いに数カ所ある案内看板もそのままだ。
東北地方整備局は「国会で取り上げられ、道路特定財源の使途を総点検することになった。国民から疑念を抱かれないよう、最終的には国土交通省に設置される改革本部の結論を得て存廃を決めたい」(道路計画第二課)と話している。
みちあむは1988年6月に開館。運営は社団法人東北建設協会に委託し、道路特定財源から毎年約4000万円が委託費として支払われていた。道路の歴史などを解説するパネルなどが展示され、昨年の入館者は約1万7000人だった。
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協会の阿部純一事務長は「東北地方整備局から閉館の理由は聞かされていない。入館者は年々増えており、残念だ」と話している。
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まず,本来的に,「みちあむ」は博物館と言える施設ではないということは言っておきたいですね。
大阪府立博物館のエントリー等で書いたところですが,博物館は本来的には,研究とともに資料を収集・保存し,未来へ伝え,また展示その他様々な方法で,資料やそれにまつわる情報を提供するところ。
 もちろん,資料の収集・継承を基本としながら,様々なバリエーションがあるところが博物館の博物館たる所以だと思いますが。
「みちあむ」を実際に見たことがありませんので,どれほど博物館ぽい施設かはわかりません。また,どれほど,将来に引き継ぐべきオリジナル資料があるのかもわかりません。
ただ,公共に開かれたという面での公共性を持つ博物館が,その公共性に関する議論もなく,突然公開を止めるということはありえません。
よって,「みちあむ」は博物館ではないし,公共性を持たない施設だと判断することができます。


新聞記事も「道路博物館」なんて枕詞を付けないでほしいところです。


博物館ではないにしても,道路に関する普及のための施設なんですから,どうどうと道路財源を使って利用していれば良いと思うのですが。せっかく建物も中味も整備してあるのですから。
 一方的なPR施設であることを止めて,そこで議論ができるような運営が行われれば,むしろ公共性は向上することでしょう。
 ああ,もったいない。


今後は,国交省の改革本部での検討に委ねられるようですが,再開・一層の充実を含め前向きな結論を期待したいところです。道路博物館というコンセプトは,土木の面からも,生活の面からも,そして大気汚染や自然保護との観点からも,様々な調査研究と情報発信,議論が期待できるものだと思います。
また,もし閉館の結論に至ってしまったならば,未来に引き継ぐべき資料があるのであれば,きちんとした博物館に寄贈していただきたいと期待するところです。


ちなみに,本日はまだ,資料館の公式ページ(オリジナル)(魚拓)は,何事もなかったように公開中です。

3月20日追記

「みちあむ」(仙台市)のほか,国交省北陸地方整備局の「萬代橋・柳都大橋資料館」(新潟市:1985年4月オープン),近畿地方整備局の「京の道資料館」(京都市:2001年11月オープン)と「防災資料館メイプルルート29」(宍栗市:2002年11月)も閉館しているとのことです。

5月2日追記

4月19日の毎日新聞宮城版の記事から

みちあむ:仙台の道路資料館、20年の歴史に幕 特定財源問題の余波受け
国土交通省道路特定財源で運営していた道路資料館「みちあむ」(仙台市青葉区折立1)が18日、閉館となった。年間約3900万円の費用を投入していたPR施設について、同省が「国民の目線から見て不適切な広報広聴」と判断したため。道路特定財源を巡る問題の余波を受け、20年の歴史にひっそりと幕を下ろした。【青木純、比嘉洋】
みちあむは資料置き場になっていた旧仙台西国道維持出張所の建物を活用し、道路に関するPRを行うため、88年5月、東北道仙台宮城インターチェンジ脇に開設された。
 約300平方メートルの施設内には、道路建設の工法や意義を説明するDVD260本、道路の断面の実物などを展示し、最近5年間はトイレがあることを示す看板を設置した効果で利用者数は増加傾向にあり、昨年度は1万7300人が利用した。
 だが、マッサージチェアやカラオケセットの購入など、道路特定財源を原資とする「道路整備特別会計」の不適切な使途が全国で判明。みちあむも、運営を社団法人東北建設協会と山形市のイベント企画会社に委託し、同会計から委託料が支払われていたことから、同省の「使途見直し」の対象に。3月11日、入り口ドアに「当面の間、閉鎖(閉館)」と張り紙して休館していたが、同省が今月17日に支出打ち切りを決め、正式に閉館した。
 同省東北地方整備局は「道路はあって当たり前のものではない。利用者に理解を深めてもらうための施設が必要だと思うのだが」と困惑しつつ、「使途が100%支持されていないのも確か。いささかの疑念も持たれないためには仕方ない」。近く看板などの撤去作業を開始し、建物は元通り資料置き場に戻されるという。

休館していましたが,正式に閉館したようです。
「困惑しつつ」というのは共感できます。どのような資料,どのような展示があったのかわかりませんが,「資料館」として保存・公開すべき資料を所有していたのであれば,閉館した「みちあむ」でない,どこか他のところで保存や公開ができれば良いんですけれども。