指定管理者の遵法責任

企業の社会的責任という言葉が一般的になっている。株主や取引先,従業員はもとより,地域社会等広い意味でのステークホルダーに理解いただくことが,企業経営にもプラスになるからである。少なくても,廃棄物処理その他の法律を遵守することは,責任であろう。
http://d.hatena.ne.jp/ironsand/20060925#p1http://d.hatena.ne.jp/ironsand/20060913#p1http://d.hatena.ne.jp/ironsand/20060823#p1で触れているファームパークについて,また新たな報道があった。

ぐんまフラワー管理 残業代含め固定給

 ぐんまフラワーパーク(前橋市柏倉町)の指定管理者となっている「ぐんまフラワー管理」(久門渡社長)が社員に示した労働条件通知書で、残業代が固定した給与に含まれていたことが二十五日までに、分かった。月百時間を超える含み残業もあり、群馬労働局は「実際に働けば、過労死を招きかねない過重労働にあたる」と指摘している。
 上毛新聞社の取材に対して、同社の総務担当は残業代込みの給与体系を認めた上で、「すべて残業せよというのでなく、マックスを示した。残業のない月も同額を支給するし、社員の同意を得ている」と説明。アルバイトの処遇を含め、「問題があれば改善したい」と話している。
 フラワー管理によると、通知書は八月末、総務担当者が準社員を含む全社員を対象に説明会を開き、直接手渡した。日付は八月一日付で、社長名で記されている。
 主な内容は勤務時間、休日、給与、賞与や退職金の有無。このうち、給与は基本給、手当、通勤手当と総額が記され、特記事項で給与の含み残業時間が書かれている。残業時間は勤務実態に合わせて社員ごとに異なり、月に数十時間から多い人は二百時間に及ぶ。
 アルバイトには時給、勤務時間が示された登録確認書が渡され、こちらは特記事項で「当日の天候により勤務を延期または取り消す場合がある」と書かれている。
 同社はサービス残業を強いられるなど労務管理に問題があるとして、元社員から前橋労働基準監督署に告発されている。
 労働条件通知書は労働基準法で、労働契約の締結に際して書面の交付が義務付けられている。
 板垣労務管理事務所の板垣忍副所長は、同社の通知書は二つの点で問題があると指摘。「百時間を超えるような残業は健康管理上、大いに問題。残業代は基本給などと分け、時間に見合う額を支給していないと、支給していることにならない」と説明する。
 群馬労働局は「仮に労使が合意し、納得していても、適切な労務管理といえない」(監督課)として、双方による自主的な改善を求めている。


(上毛新聞 2006年9月26日)

これに関連して,

ぐんまフラワーパーク、労基法違反…条件、書面通知せず

 群馬県立ぐんまフラワーパーク(前橋市柏倉町)で、従業員に対し、採用時に義務づけられている契約期間や時給などについての書面通知が行われず、労働基準法に違反していたことが26日、わかった。
 労基法は、正社員、アルバイトを問わず、従業員を採用する場合は、契約期間や業務内容、賃金などの条件を書面で示し、本人に通知するよう定めている。
 しかし、指定管理者制度に基づき、4月から管理・運営を県から委託された「ぐんまフラワー管理」(前橋市、久門渡社長)は、通知をせず、正社員ら約30人に書面通知を始めたのは8月30日だった。同社総務経理部の佐藤守喜課長は「業務が立て込み、通知が遅れてしまった」と話している。
(2006年9月27日 読売新聞)

まあ,なんとか挽回していただきたいものです。県行政ともども。
ちょうど,県議会でも質問があったようですし。http://www.gunma-pref.stream.jfit.co.jp/giin_result.php?GIINID=10260 (議会中継録画)

ぐんまフラワーパーク問題:県「時間かかる」に県議から非難の声 /群馬

 県が今年度から運営委託した「ぐんまフラワーパーク」(前橋市柏倉町)で賃金未払いなど管理運営上の問題が相次いでいることに関して、26日の県議会一般質問で、県の田中修理事は「最初から、しっかりした管理運営ができることは理想。軌道に乗るまで時間がかかる」と答弁し、議場から「無責任な答弁だ」などと非難の声が上がった。県の指導について聞いた塚原仁県議(フォーラム群馬)の質問に答えたもの。
 塚原県議は「赤城高原牧場クローネンベルク・ドイツ村」(同市苗ケ島町)が肉製品加工施設で勤務実態のない食品衛生管理者を登録し、県に立ち入り検査されたことも取り上げた。これに対し、田中理事は「法令順守を強く指導していく」と答えるにとどまった。【木下訓明】

毎日新聞 2006年9月27日

やはり,県の指導体制が問われますね。
それにしても,この不祥事ニュースのラッシュ。どうも,これはどこからか意図的なリークがあるんじゃないでしょうか。
# 「ここが気になる 群馬」というブログhttp://blogs.yahoo.co.jp/asout5732654/1293305.htmlでは,どうもそのリーク元を想像させるコメントがついています。
もうひとつ。

食品衛生法違反:江戸崎農業公園・ポティロンの森、衛生管理者不在で営業 /茨城

 ◇期間中の製品廃棄指導−−県、疑いで立ち入り調査

 県は21日、食品衛生法違反の疑いがあるとして、稲敷市上君山の農業テーマパーク「江戸崎農業公園 ポティロンの森」の食肉加工施設を立ち入り調査した。食品衛生法で定める食品衛生管理者として同施設が登録していた男性が、04年9月から今年8月まで勤務していなかったことが判明。県は同施設に対し、不在期間に生産した製品を店頭から撤去し、廃棄するよう指導した。【藤田裕伸、清野崇宏】
 食品衛生法では、調理場や加工場など食品加工施設に対し、衛生上の監督指導をする専任の食品衛生管理者の配置が義務付けられている。ポティロンの森によると、同施設ではソーセージを製造・販売しているが、管理者登録していた男性が家庭事情で出勤しなくなってからは、月に1回程度、系列の別施設の管理者が訪れ助言していたという。同施設は「衛生管理が徹底できているので問題ないと思っていた」と話すが、県は「不在期間に被害はなかったが、食品衛生管理上は問題」として指導に踏み切った。
 県は食肉製品製造業に対し、衛生管理のための立ち入り検査を年2回実施しており、管轄保健所が同法の要件が満たされているかを確認している。3月に同施設の検査をした土浦保健所は「衛生面の検査で手いっぱいで、管理者が出勤しているかまでチェックできなかった」と説明している。
 ポティロンの森は、国内計20カ所で同様の施設を運営する「ファーム」(愛媛県西条市)が経営しており、レストランや乗馬場などがあるため家族連れに人気の施設。今年8月、前橋市にある同社の食品加工施設で食品衛生管理者の勤務実態がなかったことが分かり、群馬県が製造・販売の自粛を指導したため、県が調査していた。

毎日新聞 2006年9月22日

ポティロンの森は指定管理者等ではなく,ファームが建設,運営をやっている直営の施設です。
また,数週間前の記事ですが,

未検査井戸水 混入の恐れ
ドイツ村県が指導、配管改修

 前橋市苗ケ島町の赤城高原牧場クローネンベルク・ドイツ村で、上水道と水質検査を受けていない井戸水の配管が地下で連結され、混入する危険があったことが、二日までに分かった。
 食品衛生法と水道法に抵触する疑いがあることから、県食品監視課と県前橋保健福祉事務所が、先月三十一日に現地調査を実施し、その場で改善指導した。ドイツ村は翌一日、配管を改修、撤去した。
 ドイツ村によると、連結部分は一カ所で、バルブを開閉すれば上水道と井戸水を混入することができる状態だった。井戸水には雑菌を減らす塩素滅菌器は付けられていた。
 ドイツ村では、井戸水はトイレの流水や樹木への散水用にのみ使用していたといい、「井戸水を上水道と混ぜて飲料水にしたことはない」としている。
 ドイツ村では、施設内の食肉加工工場で、食品衛生法で定める常勤の食品衛生管理者を実際には置いていなかったことが分かり、県が三十日に立ち入り調査を実施していた。 (禰〓田功)

(東京新聞 2006年9月3日)

同じく。。。もう。
しかも,この件についてはhttp://d.hatena.ne.jp/ironsand/20060925#p1で触れたように,園内に死んだ羊や馬を処分していたということですので,なおさら,衛生上のリスクが大きかった可能性があります。

とうほくニュージーランド

「内部調査」の結果として,本日,「お詫びと自主回収のお知らせ」を掲出しています。食品衛生法違反はともかく,内部調査の結果をすぐに公開したことはすばらしいと思います。
http://www.touhoku-nzmura.com/owabi.htm
ここは(株)ファームが直接運営している施設で,地方公共団体は直接は関係ないようです。

丹後あじわいの郷 2006年10月1日追記

ソーセージ製造、販売を中止 丹後あじわいの郷 保健所が指導

 京都府丹後保健所は30日までに、京丹後市弥栄町鳥取の農業公園「丹後あじわいの郷」内の手作り食品工房が、肉製品製造の際、食品衛生法が義務付けている常勤の食品衛生管理者を設置していなかったとして、常勤管理者設置までの間、ソーセージの製造、販売を中止するよう指導した。
 施設を運営する財団法人「丹後あじわいの郷」は、これを受けて28日からソーセージの製造・販売を中止し、これまでに販売したソーセージ6種の回収を決めた。
 同工房では、1998年の開業時から常勤していた食品衛生管理者が2001年6月に退職し、それ以後は月1回しか同管理者資格を持つ人が勤務していなかった。
 同財団は「人手不足で後任者を探すまでの過渡的な措置だった。品質には問題はないと思うが、認識が甘かった」としている。
 回収などに関する問い合わせは丹後あじわいの郷Tel:0772(65)4461。
京都新聞) - 9月30日23時49分更新

東北ニュージーランド村同様,丹後あじわいの郷のウェブサイトにお詫びが出ています。
http://www.ajiwainosato.com/newpage3.html
(10月3日追記)京都府による報道発表はこちら
http://www.pref.kyoto.jp/news/press/2006/10/1159745587245.html
ファームパークの食品衛生管理について,あちこちで点検が行われているようですね。
さて,このお詫び,運営母体の(財)丹後あじわいの郷名義ですが,パーク「丹後あじわいの郷」の運営は(株)ファーム(西条市,久門渡社長)も出資する第三セクター(株)京都たんごファーム(京都府は500万円出資)が行っているようにも思います。
この(財)丹後あじわいの郷,(株)京都たんごファーム,そして(株)ファームの間の業務の委託とお金の流れ,どこかでクリアにわからないかな。

石鎚チロルの森 10月4日追記

http://www.tirol-f.com/messaget.htm
「製造不備」があったとのことで,お詫びと自主回収のお知らせが出ています。

ハム類660点回収指導 西条の業者に県 衛生管理者置かず製造

 西条市の食肉製品製造会社が、同市内のレジャー施設で、食品衛生管理者を置かずにハム、ソーセージなど6品目を製造販売していたことがわかり、県は3日までに、食品衛生法に基づき、賞味期限内(1か月以内)の計660点についての自主回収と、管理者を設置するまで製造を中止するよう指導した。
 茨城県などで食品衛生管理者がいないまま食品加工を行っていた問題があり、県薬務衛生課が自主的に県内16施設を調査したところ判明した。
 同課によると、同社は2001年10月に同施設の食品衛生管理者が退職後、新たな管理者を設置しないままフランクフルトソーセージやスモークボンレスハムなどを製造。施設内で販売したほか、レストランで調理して出していたという。製品の安全性については問題なかったという。
 同社幹部は「管理不足から新たに選任をしなかった。ご迷惑をおかけしました」としており、同日、管理者登録を申請。近く営業を再開する。
 県の調査ではこのほか、大洲市内の個人営業の食肉製品製造業者が、管理者不在の日にソーセージなどを作っていたことがわかり、県が適正な管理を行うよう指導した。
(2006年10月4日 読売新聞)

おひざもとですけれどね。ここも地方公共団体は直接関係のない,(株)ファームの直営の施設のようです。

滋賀農業公園 ブルーメの丘 10月5日追記

お詫びと自主回収のお知らせ(9月30日付けと思われます。)が掲出されています。
http://www.blumenooka.jp/news20060930.htm
ブルーメの丘の運営は日野市やJAも出資する第三セクター(株)北山ファームが行っています。

ドイツ村について県議会の動き 10月6日追記

ドイツ村運営会社衛生管理者不在
親会社が他県施設でも

 「赤城クローネンベルク・ドイツ村」(前橋市苗ケ島町)を運営する「赤城高原開発」が、施設内の食肉加工工場で食品衛生管理者を常駐させなかった問題に絡み、同社の親会社「ファーム」(本社、愛媛県西条市)が他県の施設で同様の問題を起こし、行政の立ち入り検査を受けていたことが五日、明らかになった。同日の県議会・安全安心なくらし特別委で大沢幸一委員が指摘。県も「把握している」とした。
 ファームは全国で二十二施設を実質的に運営。茨城県江戸崎村の「ポティロンの森」では今月二十一日、食品衛生法違反で茨城県の立ち入り検査を受け、製造していたソーセージも自主廃棄した。
 「ドイツ村」では食品廃棄は行われず、その後も販売が続けられたという。特別委では、委員から「(県の対応が)甘いのでは」との指摘があり、県は「食品成分には問題がなかったため」と説明した。
 大沢委員は、このほかに岩手、兵庫、岡山県の施設の例も指摘。県は長野県や京都府の施設で同様な問題があったことを確認していると答弁した。
 「ドイツ村」では一九九四年の開業から、上水道と水質検査をしていない井戸水の配管が地中で連結されていたことも判明し、県が現地調査して改善を指導。死んだヒツジやウマなど飼育動物計二十一頭を牧場内に埋めていたことも分かり、今月十五日に県が立ち入り調査したが、県は「地下水への汚染はない」としている。
 同社は「ぐんまフラワーパーク」(前橋市柏倉町)を県から委託運営する「ぐんまフラワー管理」の親会社でもあり、運営をめぐっては県議会・環境農林常任委などでも問題が指摘されていた。 (石屋法道)
(東京新聞 2006年10月6日)

岩手県茨城県滋賀県,京都県,愛媛県の施設についてはここにも掲載済みだったんですけれど,兵庫県岡山県,長野県でもですか。
チロルの森(塩尻市),クローネンベルク(赤磐市),イングランドの丘(南あわじ市)orヨーデルの森(神崎郡神河町)あたりなんでしょうかね。
ドイツ村に埋められた死んだ羊や馬については,公式には21頭となっているんですね。http://d.hatena.ne.jp/ironsand/20060925#p1に引用した新聞記事では,「100頭を超える」という証言も載っていましたので,ちょっと心配ですが。

丹後あじわいの郷ソーセージの製造と販売を再開 10月18日追記

財団法人丹後あじわいの郷が食品衛生管理者の体制を整備し,ソーセージの製造と販売を再開したとのこと。とりあえず喜ばしいことです。さまざまな地域と結びついた事業を展開しているようなので,そちらもより一層の展開を期待するところです。

ソーセージの製造と販売を再開
丹後あじわいの郷

 京都府京丹後市弥栄町の府農業公園「丹後あじわいの郷」で食品衛生管理者が常勤していなかった問題で、施設を運営する財団法人「丹後あじわいの郷」は、同管理者を常勤体制にしてソーセージの製造と販売を再開する、と17日発表した。
 府丹後保健所が先月28日に同郷の食品工房を立ち入り調査。法律で常勤が義務づけられた同管理者が月に1度の勤務であることが分かり、ソーセージの製造と販売の中止を指導していた。
 財団は同管理者を3人交代の常勤体制とすることで製造は18日に、販売は19日に再開することにしており、「原点に返り、食品管理を徹底したい」と話している。
(京都新聞 10月17日)

2007年6月18日追記

第三セクター(株)神崎ファームのヨーデルの森も頑張ってほしいところです。
観光ってのはつらいところがあって,地域の人にはすばらしいことでも何でもないんだけれど,地域外の人が欲する場合もあるし,地域の人にすばらしいんだけれども,地域外の人がわざわざやってこないということも。
でも,二者択一でもない。
地域の人たちが自分たちで遊べて,自分たちの良いところも出していく。地域に根差したところで,地域外の人が来る。
または,
地域の人たちが,積極的に地域の宝物をボランタリーに継承し,提供し,そして地域外の人が来る。
地域外の人が来たときに,その施設以外に魅力的な(地域の人や自然との)出会いの場がある。
そんな仕組みが出来ていれば。

2009年6月4日追記 ヨーデルの森

兵庫県神河町ヨーデルの森ですが,2009年3月14日にリニューアルオープンしています。
なお,指定管理者は,第三セクターの(株)神崎ファームから(株)グリーンエコーに代わっています。
新しいコンセプトは,「『花・水・生』。花・水を代表するものとして花々や木々,そしてじゃぶじゃぶ池などは,そのまま残し,新しく『生・・・動物とのふれあい,スタッフのおもてなし,収穫体験』をリニューアルの柱と」したとのこと。あわせて,レストラン等も,「安心安全な地元の食材を多く使うことでこれまでに無かった『神河の味』を演出します。』
特色ある体験型の施設としての先行きには困難も予想されますけれど,ヨーデルの森が,ヨーデルの森だけで完結するのではなく,魅力的な地域の人や自然との交流の拠点となりますよう願っています。