丹後あじわいの郷の運営について

3か月前のニュースですが,2014年12月27日の京都新聞の記事から。

「丹後あじわいの郷」改革なるか
京都府北部を代表する観光施設の府農業公園「丹後あじわいの郷」(京丹後市弥栄町)が施設改修のため休園に入った。運営団体も新たに、活性化に向けた取り組みも充実させ来春に再スタートする。
運営改革は、運営を長年担った「ファーム」(愛媛県西条市)が経営不振で撤退を決断したのが発端。同園の赤字が、大きな負担になっていたという。
 入園者数の低迷が大きな要因だ。年間入園者数は開園当初の1998年度、目標(30万人)を上回る35万3700人を記録したが翌年度から大幅に下落。07年度には8万2600人に落ち込んだ。
 北近畿の人口は、近隣の丹後地域(2市2町)が10万人、中心的な客層の中丹地域20万人、比較的来場者の多い丹波、但馬地域が30万人。府農林水産部の安本洋一企画専門役は、このエリアをターゲットに、「繰り返し来てもらえる施設にしないといけない。将来は海外からも来てもらえる施設を目指す」と意気込む。
 これまでの改革では、08年度に「あり方検討会」を設け、09年度には府が第三セクターから撤退して民間運営に移行した。また、丹後地域の各種団体や企業、商店など幅広い層で協力会を作り、10年から月例祭やイベントを積極的に開くなどして、近年の入場者は年間10万人前後で推移している。
府は今回の改革で、同園を丹後地域の食文化を発信する「丹後食の王国」の首都と、府北部観光「海の京都構想」の拠点施設に位置づける。農漁業の生産(1次産業)と加工(2次産業)、販売・飲食事業(3次産業)を組み合わせた「6次産業化」の展開に、新たに「4次産業」と位置づける総合人材育成を合わせた「10次産業化の創造」を目指すという。
 運営は、人材ビジネス企業「パソナグループ」(東京都)が、京丹後市などの企業8社との共同企業体で担当する。改修は既存施設を食堂にするなど最小限に抑え、丹後地域の「食」に関する情報発信と、住民が繰り返し訪れられるような食の提供など運営を工夫する。
 具体的な取り組みとして、入場料の無料化▽料理人や食ビジネスなどの人材育成▽開発・製造する加工品の園外での販売▽地域観光業との連携強化による着地型観光の推進−を掲げる。入園料を無料とすることで、ゲート外にあった「道の駅」を園全体の34ヘクタールに位置づけることとし、西日本最大級となることを契機に、全国の道の駅と連動したイベントの強化も進める。
 府の安本専門役は「建設当初に丹後の人々が丹後あじわいの郷に対して抱いていた『地域もかかわれる施設』にしていく」と強調。丹後地域の住民や府北部の観光関係者らは、今後の動向に注目する。

ここの不動産はもともと京都府のもの。財団法人丹後あじわいの郷への土地貸与を経て,運営は第三セクターの株式会社京都たんごファームがもともと行っていたものです。それが,経営不振から京都府が出資をとりやめたのが2009年度だったろうと思います。(2008年12月26日のエントリー追記部分参照)
今回,運営会社が変わるとのことです。ただ,運営から外れた京都たんごファームの存続はどうなるのか,損失・損害はそこに出資している企業や自治体が被るのか,新たな運営方針が出ているものの設置者である財団法人はどのようなガバナンスを行うのか,中心会社が人材派遣企業ということで果たして地域において施設の価値の維持・向上が図れるのかなど,横須賀のソレイユの丘と比しても,あまりにも将来が見えない改革となっているように感じます。
ちょうど,間もなくの開園に向けて改修のラストスパートと思いますが,不安に感じるところです。
府議会の議論の中では、地域の企業・住民によるビジョンを大切にとされていましたが,パソナがそのような運営が可能か不安に感じるところです。

2015年8月15日追記

8月15日のNHKニュースから

観光施設で4歳女児が車両にはねられ死亡
14日昼前、岩手県奥州市の観光施設で、埼玉県から遊びに来ていた4歳の女の子が施設内を周遊する車両にはねられて死亡しました。
 14日午前11時40分ごろ、奥州市衣川区の観光施設「とうほくニュージーランド村」で、埼玉県越谷市の幼稚園児、齋藤海空ちゃん(4)が施設内を周遊する車両にはねられ、およそ2時間後に死亡が確認されました。海空ちゃんは両親の実家がある岩手県に帰省中で、14日は父親と幼稚園児の6歳の兄の3人で遊びにきていたということです。
 警察などによりますと、事故を起こした車両は、蒸気機関車をかたどった3両編成の乗り物で、後ろ2両の客車に観光客を乗せ、施設内の4つの停留所を巡っています。混み合う時期には、運転を担当する人のほかに1人を助手席に乗せ、安全を確保しているということですが、この日は雨で客が少なかったため、60代の男性スタッフ1人で運転していたということです。
 「とうほくニュージーランド村」は、羊やうさぎなどの動物と触れ合ったり、自然の中で体を動かしたりして遊ぶことができる観光施設で、事故を受けて14日の営業を取りやめるとともに、15日以降の営業も当面見合わせることにしています。
 警察は車両を運転していたスタッフから話を聞くなどして、事故の状況を調べています。
責任者「申し訳ない気持ちでいっぱい」
「とうほくニュージーランド村」の佐藤茂支配人は、「このような事故を起こして申し訳ない気持ちでいっぱいです。社員の再教育など安全対策を行ったうえで営業の再開を検討したい」と話していました。

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2016年6月1日追記

株式会社ファームと、関連の赤城高原開発株式会社は5月30日、東京地裁民事再生法の適用を申請したとのこと。1954年に創業し,1986年の「市倉ファーム」によってファームパーク事業に進出。ただ、価値創出型産業ながらも,バブル崩壊少子化に加え,可処分所得が増加しない中,異説設備の継続的な更新ができなければ,あっという間に魅力を失う怖さがある事業。
地方自治体の指定管理者制度を活用し,運営ノウハウに特化しようとしたが,なかなか困難だったようです。
負債総額は2社合わせて約58億円。
上毛新聞ニュースの6月1日の記事から

クローネンベルク破綻 前橋 運営会社が再生法申請
群馬県前橋市苗ケ島町でドイツの農村をイメージしたテーマパーク「赤城高原牧場クローネンベルク」を運営する赤城高原開発(同所、山添隆弘社長)と、親会社のファーム(愛媛県西条市、森貞幸浩社長)は31日までに、東京地裁民事再生法の適用を申請し、保全命令を受けた。ファームによると、両社とも営業を継続しながら、スポンサーを探して事業再生を目指す。赤城高原に105人いる従業員は基本的に雇用を維持するという。
申請は30日付で、負債総額は赤城高原が約7億円、ファームが約51億円。民間信用調査会社、帝国データバンク群馬支店などによると、赤城高原は1990年、ファームや旧宮城村などによる第三セクターとして設立、94年4月にクローネンベルクをオープンした。
ファームの完全子会社となった2007年3月期は売上高約7億5700万円を計上。その後、入り込み客数減少などが響き、15年3月期は同約4億7千万円にとどまった。
ファームは1964年創業。赤城高原を含めグループで全国10カ所に農村型テーマパークなどを手掛け、02年4月期には同約92億6500万円を計上した。近年はレジャーの多様化や個人消費の低迷で集客力が低下。15年4月期は同約31億4500万円に落ち込んだ。不採算施設を閉鎖したり、整理回収機構の再生スキームに沿って再建を進めてきたが、赤城高原とともに自主再建を断念した。

2017年2月27日追記

河北新報2月27日の記事から

<とうほくNZ村>経営難で1月末閉園
岩手県奥州市衣川区の観光施設「とうほくニュージーランド村」が経営不振で1月末に閉園した。ニュージーランドの街並みをイメージした観光牧場として1989年7月にオープンし、最盛期は年間20万人以上が入場した。施設は売却されたが、活用策は明らかになっていない。地元住民は「地域の観光に役立つ施設にしてほしい」と期待する。
同施設は敷地約42ヘクタール。洋風の街並みに動物ふれあい広場や羊牧場、石窯パン工房、庭園のほか、ゴーカートなどの遊具があった。
オープン当初は岩手、宮城両県からの家族連れなどでにぎわったが、近年は減少傾向が続いた。2015年は施設内で死亡事故があった影響もあり、9万3000人に落ち込んだ。
運営会社ファーム(愛媛県西条市)は16年5月、民事再生法の適用を申請。今年に入り、ニュージーランド村の運営を切り離すことが決まった。従業員15人は1月末で解雇となり、動物は他の施設に移された。
同社担当者は「地域に根差した施設として多くの人に利用してもらった。大変申し訳ない」と話す。代理人によると、土地と建物は別会社と売買契約を結んだ。具体的な跡地利用は「今までと全く同じにはならないだろう」と説明する。
観光拠点の突然の閉鎖で地元には動揺が広がる。奥州市観光物産協会衣川支部の三浦秀夫支部長(60)は「キャンプ、乗馬体験、流鏑馬(やぶさめ)などを一緒に展開してきた。畜産と観光を結び付けた企画も検討していたのに、どうなるのか」と不安を口にする。
住民グループ「衣川かぼちゃを楽しむ会」は、ハロウィーンの観賞用カボチャを共同で栽培していた。木村高志会長(65)は「従業員は畑に水をまいたり草取りをしたり、熱心に手伝ってくれた。ようやく軌道に乗ってきたところだった。このままでは衣川がさびれてしまう」と心配する。
敷地のうち約24ヘクタールは市有地で、市は年間140万円の賃料を得ていた。小沢昌記市長は「市が関わる雇用や誘致は、積極的な対応を考える」と話す。

ファームの施設紹介のページを見てみましたが、やはり、もうとうほくニュージーランド村は消されています。

地域への影響は残念だが、民事再生法適用により、不採算部門・資源の整理はやむを得ないものでもある。

なお、さかのぼるようだが、現在の(株)ファームの会長、社長は、支援企業のワールドホールディングスの役員である。

2016年10月11日のkabutan.jpのニュースから

ワールドホールディングス---民事再生手続き中のファーム及び赤城高原開発とスポンサー支援基本合意書を締結
ワールドホールディングス<2429>は7日、6月に民事再生手続きの開始決定を受けたファーム(本社:愛媛県西条市)と赤城高原開発(本社:群馬県前橋市)の事業再生を目的として、スポンサー支援に関する基本合意を両社と締結したと発表。両社は、今回の基本合意書を前提として、再生計画案を作成する。スポンサー契約書は12月下旬の締結を予定している。
ファームは、体験型農業公園の開発・運営管理を手掛けており、全国規模で農業公園開発・運営を行っている。赤城高原開発はファームの子会社。今後は、ワールドホールディングスの事業運営ノウハウ、人材活用ノウハウ、資金力、東証1部上場企業としての信用力を生かし、農業公園として早期の事業再生を目指す。
同社は、現在内閣府が打ち出している日本再興戦略にある“攻めの農林水産業の展開と輸出力の強化”“観光立国”に対してファームグループの農業公園の運営実績とノウハウを活用する事により、同社の人材・教育ビジネスや行政受託事業を拡大していきたいとしている。

また、2017年2月3日付で、(株)ワールドホールディングスから、株式会社ファームの株式取得(子会社化)に関するお知らせ(開示事項の経過)という表題の文書が発表されています。

2017年12月12日追記

前橋市のクローネンベルクドイツ村が閉園とのこと。
2017年11月1日の上毛新聞の記事から

「群馬のドイツ村」 前橋・クローネンベルクが閉園へ
ドイツの農村をイメージした群馬県のテーマパーク「赤城クローネンベルク」(前橋市苗ケ島町)を運営する赤城高原開発(同所、諸田稔社長)は31日、11月末で同園を閉園すると発表した。個人消費の低迷などを背景に入園者数の減少が続き、運営継続は困難と判断した。
 社員とアルバイトはグループ企業再雇用図る
 跡地は養豚業の林牧場(桐生市新里町赤城山)に売却する。林牧場は本社事務機能を移転するほか、社員の研修施設として活用する方針。
 同園は1994年開園。動物との触れ合い体験に加え、自家製ソーセージや地ビールなどの飲食が楽しめる施設として人気を集め、2008年には約19万人が入園したが、近年は客足が伸び悩んでいた。
 運営する赤城高原と親会社のファーム(愛媛県西条市)は昨年6月、東京地裁から民事再生手続きの開始決定を受け、同12月には人材・教育ビジネスなどを展開するワールドホールディングス(福岡市)をスポンサーに迎えるなど、早期の事業再生を目指していた。
 赤城高原は社員26人とアルバイトについて意思確認しながら、グループ会社での再雇用を図るという。
 前橋商工会議所の曽我孝之会頭は「特色ある観光施設で人気があっただけに非常に残念」と話した。