横須賀市ソレイユの丘問題で横須賀市の中間報告及び神奈川新聞によるフォロー

2008年10月12日のエントリー「飛騨市の山之村牧場の続報」の追記で,横須賀市の施設ソレイユの丘でカット野菜の製造日ラベルを職員が剥がしていた件を書きましたが,12月25日に横須賀市の中間報告が行われたとのことです。
12月25日の神奈川新聞の記事から

ラベルはがし複数回、期限切れ野菜提供も/横須賀・ソレイユの丘
横須賀市の「長井海の手公園(ソレイユの丘)」野外バーベキュー施設で、同市が指定管理者に選定している「横須賀ファーム」の従業員が真空パック野菜の製造日のラベルをはがしていた問題で、横須賀市は二十五日、ラベルはがしは複数回だったことに加え、消費期限を守らず客に提供した可能性があるとする中間報告を発表した。同社の当初説明と異なる事実が判明したことで、「契約に基づき、業務改善勧告を行わざるを得ない」との認識を示した。
 市土木みどり部の調査によると、ラベルはがしをしていたのは、デイキャンプ場の元責任者(ことし八月退職)と現責任者、アルバイト三人。
 元責任者は、昨春の大型連休明けから今年七月にかけ複数回にわたってラベルをはがしたと説明。動機として、「売れ残ったときに始末書を提出させるなど、会社の締め付けが厳しかった」などと打ち明けたという。
 さらに、この元責任者は消費期限(製造日プラス三日)の正しい認識がなく、目視や試食で野菜に問題があると判断した場合を除き、製造日から一週間程度を目安に、客に提供していたことも認めたという。
 利用者(今年六〜七月の二十一件)に対する調査でも、真空パック野菜にラベルがはっていなかったとする回答を複数得ているという。
 神奈川新聞社の取材に対し、ファーム側は当初、ラベルはがしの有無は「分からない」としていたが、従業員がはがしている場面の写真を示すと、「今年七月にラベルはがしを一回だけやったが、消費期限内でもあり問題ない」と釈明。同市にも同様の報告をした。これを受け、蒲谷亮一市長は四日の市議会で「(ラベルはがしは)一回のみで、組織ぐるみではないとの説明を受けている」と答弁していた。
 二十五日の会見で、田神明・市土木みどり部長は、同社の内部調査が不十分で誤った報告がなされた結果、「ソレイユの丘利用者や市議会などに誤った情報を提供してしまった」と釈明した。
 蒲谷市長は、同社の当初説明と異なる事実が判明した場合、ペナルティーを科す可能性を示しており、田神部長は「引き続き調査を継続し、同社への最終的な処分は今後、総合的に判断したい」と述べた。

横須賀市の中間発表ですね。ソレイユの丘は基本的に,横須賀市の公の施設ですから,市行政には引き続き適切な運営に向けて調査を進めていただきたいところです。
このような公の施設について,その運営に民間活力を導入し効果を高めるとともに経費を削減するという様々な取組みが,指定管理者制度PFI市場化テスト等の各制度を活用して各地で取り組まれています。一時期,鳴り物入りで始まったこの制度ですが,施設の価値を損なうような事件が各地で発生していることや,低賃金の期限付き雇用が多く生み出されて官製ワーキングプア発生源と揶揄されていることなど,批判も多く聞こえてくるようになりました。
公的セクターの財政状況が厳しくなっており,経費の削減は地方自治体にとっても至上命題ですが,結局,削減努力を民間に押しつけ,公的施設の価値を損なわせてしまう,そういう面が,この横須賀市の施設でも起こってしまったんだろうというだけのことなんですけれどもね。

神奈川新聞がさらにフォローしています。12月26日の神奈川新聞の記事から。

「古い魚介類も提供」と内部関係者が証言/横須賀・ソレイユの丘
横須賀市が全国で初めて都市公園全体に民間活力を導入したソレイユの丘。今回の市調査で、委託先の横須賀ファームのずさんな管理体制が裏付けられた。
 複数の内部関係者は神奈川新聞社の取材に対し、「夏場を中心にバーベキューレストラン用の野菜パックの在庫が増えたため、ラベルをはがした上、キャンプ場で利用客に日常的に提供していた」と明かした。
 週末に売れ残った野菜パックを翌週まで保管し金曜日などにはがしていたといい、内部関係者の一人は「製造日のラベルをはがして冷蔵庫に保管したため、実際の製造日がいつか分からなくなっていた。二、三週間経た野菜パックもあった」と証言する。
 野菜以外の管理にも問題があったといい、「肉なども冷凍・解凍を繰り返していた。シーフードのエビから黒い汁が出ていたり、古いサザエは『サービスです』と言って無料提供していた。多少、危なそうでも利用客に出していた」と話している。
 関係者によると、ラベルはがしの行為は当時のデイキャンプ場責任者が単独で行ったり、責任者からの指示でアルバイト従業員が作業したりしていたという。

「賞味期限」に比べ,「なまもの」対象の「消費期限」は特に安心・安全面を基準に定められています。家庭では見た目で判断することの方がもちろん多いことと思います。しかし,飲食店では,「消費期限」が守られているという客の信頼を前提に飲食を提供することがやはり必要なように感じます。飲食店個々にしても,飲食業全体にしても,その前提を守ることで利用を伸ばし,成り立っているからです。
まあ,食べられるものを捨てるのは,エネルギー消費の観点からももったいないですけれども,市場的には別な原理がなりたってしまいます。平日と休日の来客数が大きく異なり,しかも休日に食材を欠品してはならないという行動原理も気持ちとしては分かりますが,バレた場合は取り返しがつきません。お店自体成り立たなくなります。
それにしても,消費期限切れの肉や魚介類の提供は,野菜以上に,業者及び施設にとって大きなマイナスイメージとなってしまいました。
業者である株式会社横須賀ファーム(ソレイユの丘)のサイトにも,施設の設置者である横須賀市のサイトにも,本件については,何も触れられていません。横須賀ファームのCEOも出てきません。早く何とかした方がいいんじゃないかと思いますけれども。
なお,12月25日の市の「長井海の手公園ソレイユの丘においてパック野菜の製造年月日ラベルがはがされた問題に係る報告書」は,10月12日のエントリーでも触れた市議会議員のフジノさんの活動日記にアップされています。本来は市が広く市民に公表して然るべきとも思いますが。

追記

12月26日付けで,横須賀市のサイトに,25日に報道発表された中間報告の概略がアップされています。
また,アップされた日付はわかりませんが,ソレイユの丘のホームページに,株式会社横須賀ファーム長井海の手公園支配人名で,今回の件の報告と,2月末までデイキャンプ場の営業を自粛することがアップされています。

2009年2月3日追記

神奈川新聞の2月3日の記事から

「横須賀ファーム」にきょう業務改善勧告
横須賀市の「長井海の手公園(ソレイユの丘)」野外バーベキュー施設で、市が指定管理者に選定している「横須賀ファーム」の従業員が真空パック野菜の製造日ラベルをはがしたり、消費期限切れ野菜を提供したりしていた問題で、市は三日、同社に業務改善勧告を行う方針を固めた。再発防止に向け、書類による提出を求めるもので、同社幹部らへの処分などは行わない方向。
 同市が指定管理者に業務改善勧告を行うのは極めて異例。勧告が出され、ペナルティーポイントが加算されると罰金などが課せられるが、今回はそうしたケースには至らないとみられる。契約に基づき、同社は市に対し、業務改善書を提出することが義務づけられる。
 市土木みどり部では、同社が利用者を裏切った行為を重く受け止め、「妥当な処分だ」と説明するとともに、「抜き打ち調査をするなど、今後も同社の姿勢を注視したい」と話している。

公園などの指定管理期間は,5年ぐらいに設定している自治体が多く,横須賀市でも例えば衣笠山公園については指定管理期間は4年となっています。しかし,長井海の手公園については,2015年3月31日までが指定管理期間となっています。これは,BOT部分でPFI事業が2015年3月までという契約になっているためだと思います。確かに,指定管理期間が短すぎると,具体的な運営方針が一定しにくく,また経営上の効率も悪くなりますが,特定の営利企業に占有的に長期間指定管理させるのも,しばしば問題のもとになります。
例えば,2008年11月18日のエントリー「PFIの失敗か。近江八幡市立総合医療センター」も見ていただければと思いますが,PFIの成果が芳しくないからとして途中で契約を破棄しようとすると,市はさらに違約金を払わなければならないケースも想定されます。

2009年2月4日追記

神奈川新聞の2月4日の記事から

指定管理者に初の勧告/ソレイユの丘ラベルはがしで横須賀市が最終報告
横須賀市の「長井海の手公園(ソレイユの丘)」野外バーベキュー施設で、市が指定管理者に選定している「横須賀ファーム」の従業員が真空パック野菜の製造日ラベルをはがしたり、消費期限切れの野菜を提供したりしていた問題で、市は三日、同社に業務改善勧告を行うなどの最終報告を発表した。市が指定管理者に勧告を行うのは初めてという。
 報告書によると、市は、二〇〇七年五月から〇八年七月の間、ラベルはがしが繰り返し行われていた事実を確認。会社が指示したという確証は得られなかったが、複数の従業員が同社に対する不満を述べており、「今回の問題発生の遠因と思われる」と分析している。
 同社は当初、「ラベルはがしは一回限り」などと市に報告していたが、結果的に異なる事実が判明した。報告書では「市民や利用者らに対する説明責任を怠るなどの姿勢は問題」と指摘。総合的に判断し勧告を行うことを決めたとしている。同社の笹本猛専務は「今後このような事態が発生しないよう管理体制の強化に努めたい」とコメントしている。

横須賀市のサイトにも報道発表資料として,「パック野菜の製造年月日ラベルはがしに始まった長井海の手公園ソレイユの丘での諸問題に関する最終報告」が,概要ですが,2月3日付で掲載されています。
新聞報道以来,比較的迅速に対応してきたものと,一定の評価ができる市の姿勢だと思います。

・・・
Ⅰ 事実に関する調査結果(項目別)
・・・これらの証言から、「ラベルはがし」が平成19年5月から平成20年7月までの間、断続的に行われていた可能性の極めて高いことが確認されている。・・・加工業者が定めた消費期限が守られず、当該消費期限を超過したパック野菜が利用者に提供されていたことは、事実と推定される。・・・新聞報道では、肉類の解凍・再冷凍の繰り返しや、魚介類の取り扱いについて述べられている箇所があったが、聞き取り調査等においても、肉類の解凍・再冷凍の繰り返しなどに関する真偽については、証言として確認ができず、他方、事業者の説明からは、問題となるような点は見受けられなかった。また、「多少、危なそうでも利用客に出していた」と報道された点については、傷んだものは廃棄していたとの証言が、複数得られていることから、事実とは確認していない。したがって、デイキャンプ場における食材の取り扱い等については、一部証言があったものの、新たに確認された事実はなく、明らかな問題があるとまでは言えないと判断する。
・・・
デイキャンプ場責任者は「会社からの指示はないが、会社の雰囲気や在庫管理等に関するやり方から、やらざるを得なかった」と述べており、聞き取り調査等において、一部確認を要する部分があるものの、事業者が直接指示しているような確証は得られなかった。 事実判明以降、本市が継続的に行ってきた聞き取り調査では、複数の従業員等が“会社”に対する不満等を述べており、これが問題発生の遠因であると思われるも、市としては、事業者の直接的な関与があったとまでは言えないと考えている。 これらのことを総合的に勘案すると、事業者(組織)による当該行為等に関する命令はなかったと思われ、直接の指示はなかったと判断する。

Ⅱ 事業者に対する処分の概要
既に市は、昨年12月25日(木)、・・・「長井海の手公園ソレイユの丘においてパック野菜の製造年月日ラベルがはがされた問題に係る報告書」を公表している。この報告書の中で、株式会社横須賀ファームが行った内部調査等の対応がじゅうぶんではなく、誤った内容の調査報告がなされたため、本市が行った報道機関や市議会などに対する説明も著しく正確さを欠くものとなったことを述べている。このことが事実の判明を遅らせ、更には、本市を通じ、市民や長井海の手公園ソレイユの丘の利用者、そして市議会に対しても、誤った情報を提供してしまったことから、内部調査などの対応に不備を生じさせた同社の姿勢等に関して、勧告を行わざるを得ないと判断したことを明らかにした。
今回は、この最終報告において、その後に行った本市による調査の結果と、同社から提出されている報告書の内容を統合的に把握し、勧告の対象となる事実の特定を行うとともに、その理由を明らかにしなければならないと考えている。
まず、前回公表の報告書において、「内部調査などの対応に不備を生じさせた同社の姿勢等」が対象であることを明記したが、市は、このことが最も重要な部分であると考えている。本件事案については、事業者が「デイキャンプ場」というひとつの部門の状況を把握しておらず、新聞社からの取材を受け、一部の事実が判明した後も、適切な調査が行われなかったことが直接的な原因であり、報道記事掲載後も、その重要性を認識せず、市民や利用者などに対する説明責任を怠ったことなど、その姿勢自体が問題であると捕らえている。
本市からの委託を受け、自らの事業として行っている「デイキャンプ場」の管理運営事業において、適正な管理、運営等がなされていなかったことは重大な問題であり、事業者が、本市と締結した特定事業契約に基づいて負っている維持管理責任を果たしていないと判断するものである。
結果として、当初の説明とは異なり、複数回の「ラベルはがし」が行われ、その期間も、平成19年5月以降、二年度にわたっていた事実が確認されたほか、加工業者が定めた消費期限を超過したパック野菜を、デイキャンプ場利用者に提供していたことが推定されており、損失の回避や欠品発生による混乱防止を重視するあまり、事実を正確にとらえ、市民や利用者などに対する誠実で、真摯な態度が見られなかったことは、無念の極みである。
しかしながら、現場の責任者も食品の状態を見極めて提供していたとのことであり、事業者としても、事実判明後はラベルの表示内容の適正化を図るとともに、従業員に対する指導を強化するなど、是正措置を行っている。これらのことも斟酌し、以上のような事実と理由から総合的に判断して、同社に対し、勧告を行うことを決定した。
PFI事業として実施されている「横須賀市長井海の手公園整備等事業」は、事業者と締結した特定事業契約に基づき、平成26年度まで、同社による維持管理運営業務がなされることになっている。ゆえに、本市としても、本件事案の発生を教訓とし、監視体制の強化を進めるとともに、同社に対しては、早期に同公園の維持管理運営業務の正常化が図られることを期待しており、前回公表の報告書と同様に、引き続き、継続的改善を行い、質的向上を図る体制を構築するなど、抜本的な再発防止策の実施を求めるほか、本件事案によって明らかになった問題の解決に真摯に取り組み、市民や利用者の信頼回復を得られるよう行動することを、強く求めるものである。

組織の「直接の」指示はなかったという,横須賀市の結論ですね。
さて,フジノさんの活動日記の2月3日の日記に,横須賀市の「最終報告書」が全文,pdfファイルでアップされています。また,2月4日の日記には神奈川新聞の記事が紹介されています。ぜひ,そちらも読まれるようお勧めします。


さて,それを読んで感じたこと2点。
一つ目は,フジノさんの書かれているとおり,なぜ委託料の減額まで踏み込んだ対応を取らなかったのかということ。
 もし,市が組織的な「直接の」指示があったと結論づけていたら,当然委託料の減額となっていたでしょう。しかし,組織的な指示がなかったという結論では,委託料の減額か業務改善勧告かは確かに市の裁量の範囲でしょうね。
 ただ,市には,その「裁量」の説明責任があるだろうと思います。
 たとえ直接の指示がなかったとしても,不適切な食材管理や不十分な内部調査など,内部統制システムが機能しておらず,事業者側に瑕疵責任があることは明らかですから,減額措置になるんじゃないかなという気もしていましたから。
二つ目は,食品衛生法違反にならないのかということ。神奈川新聞の記事では専門家が「今回のケースはJAS法や食品衛生法の違反に当たらない。」と述べていますし,市の中間報告でもそう記述されていました。確かに飲食店である「バーベキューレストラン」での出来事であれば食品衛生法の違反にはならないんでしょうけれども,デイキャンプ場で「販売」されている加工食材は,やはり網をかけるべきだったと思います。本当に違反ではないんでしょうかね。

2009年2月5日追記 丹後あじわいの郷

2月4日の京都新聞の記事から

京都府が撤退、民営化へ 「丹後あじわいの郷」
京都府が、府農業公園「丹後あじわいの郷」(京丹後市弥栄町)を運営する第三セクター会社「京都たんごファーム」から撤退することが3日分かった。同社は債務超過になっており、経営方針を見直すため、府は5%の出資を引き揚げる。同社は100%民間出資の会社化を目指す方針。
 同公園は34ヘクタールで、農林水産物の販売や加工体験などができる。府や地元自治体などが都市・農村住民の交流などを目的に84億円かけて建設し、1998年4月に開園した。しかし、入園者数は同年度の約35万人をピークに減り続け、07年度は約8万人にまで落ち込んだ。
 京都たんごファームは資本金1億円。全国の農業公園を経営する「ファーム」(愛媛県西条市)が85%、京丹後市が6・5%、府が5%、宮津市与謝野町伊根町などが1%未満を出資している。
 京都たんごファームの累積赤字は入園者減少に伴い、約1億7000万円に上っている。府は、保有株式100株(出資額500万円)を、「経営責任を明らかにしたい」とするファームに無償譲渡する方針。
 府によると、同ファームは営業を継続し、より地元に密着した公園を目指す方針。府は「出資金が戻らないのは残念だが、信用力の付与など府が出資する目的は達した。株式を譲った方が経営力が増す」と判断した。
 ファームは、「収支が思わしくなく株主責任を取ることにした。民間会社となれば動きやすくなる」とし、ほかの出資自治体にも保有株式の無償譲渡を依頼している。

「丹後あじわいの郷」という施設は,1998年4月に開園した基本的には府の公園で,建設費が約100億円(内訳京都府約67億円、弥栄町京丹後市)約7億円、民間26億円)となっています。2006年9月28日のエントリー「指定管理者の遵法責任」の10月1日追記部分を見ていただければと思いますが,施設は財団法人丹後あじわいの郷が運営していることとなっています(財団法人丹後あじわいの郷は,1997年3月設立。基本財産2,000万円で,うち京丹後市が550万円,京都府が1,000万円,残りを与謝野町,JA京都等が出捐)。しかし一方,当時から第三セクターの「京都たんごファーム」は存在していましたから,この両者の関係がその時点から不明だったんです。今回調べてみましたら,府が財団法人に無償貸与(1998年2月の府議会で無償貸与についても議決されている。5年ごとの契約という記述や10年間の契約という記述が混在)し,財団法人が主要施設の管理運営、広域連携事業等を実施した形となっていたようです。ただ,(株)京たんごファームはさらに財団から運営業務を受託し,またおそらくスペースを有料で借り受けレストラン等の経営を行っていたようですね。おおまかに分ければ,財団法人は財産管理,第三セクターが公園の運営を行っていたという形だったようです。ただ,良くはわかりません。
2008年4月28日に公表された京都府の府有財産(不動産)の有効活用についての包括外部監査結果には次のような記述があります。

あじわいの郷物件の運営にあたり、京都府は基本施設の取得と建設、つまり土地取得、敷地・草地造成、主要施設建設(ゲート、情報交流センター、手作り工房他)などを行い、財団法人丹後あじわいの郷(以下,あじわい財団)は府施設の維持管理(たんごファームへ委託)、手作り工房の運営、広域連携業務などを行っている。また、たんごファームへは、収益施設の建設と一部施設の運営(レストラン、売店バーベキューハウス、ファーストフード、地ビール製造等)、府が整備した施設の運営等(基本施設の維持管理の受託、ホテルの運営、手作り工房への職員派遣)が委託されている。
このような役割分担の中で、あじわい財団は入園料収入から施設維持経費を差し引いた額を委託料として、たんごファームに支払うことになっている。しかし、入園者の減少とともに入園料収入が激減しているため、平成14年度から維持経費相当額として、あじわい財団に京都府が7,350千円、京丹後市が3,000千円を助成している。したがって、入園料収入から差し引くあじわい財団の施設維持経費はゼロとなり、実質的に入園料収入は、たんごファームへの委託料となっている。つまり、あじわい財団は京都府等から追加的な支援を受け、それが施設運営のためにたんごファームに支払われるという構図になっている。
【表2.2.3の2】からあじわい財団の決算推移をみると、入園者数や入園料が激減しているにもかかわらず、収支はさほど悪化していない。これは、たんごファームへの委託料が入園料に比例して減少しているからである。つまり、施設の運営状況の悪化を実質的に負担しているのは、たんごファームである。入園者数が激減する中、今後何らかの対策を講じなければ、施設の運営そのものに危険信号が灯る可能性を否定できない。

なお,京丹後市の平成20年度の予算を見ますと,丹後あじわいの郷運営費補助金として3,300万円が計上されていますが,2008年度から㈱京都たんごファームによる管理に移行したという記述も見られます。ただ京都府では財団の運営委託費に関する補助という形で平成20年度当初予算で4,100万円を計上している(それとは別に,財団の特別会計に府は補助金を支出している)ようですからこのあたりもよくわかりません。
 なお,施設の所有形態も良くはわかりません。基本的には土地・建物とも府有施設のようですが,2004年に台風の影響であじわいの郷王国タワーの外壁が一部破損した際には,京丹後市は市所有の施設として対応しているようです。


さて,外部包括監査でも見られるように,運営の改善が必要とした京都府では丹後あじわいの郷在り方検討会を設置しています。その報告が2008年10月に出されたようです。指摘された主な改善方向は次の三つです。

  • 地元食材を最大限活用するなどあじわいの郷みずからが製造・加工・販売拠点としての機能を確立する。
  • 環境学習、収穫体験などのキッズプログラムの開発、周辺の宿泊施設や農家民泊との連携、体験メニューの整備により、あじわいの郷自身が丹後地域の総合案内や観光農業体験等の情報発信の機能を備えて、その中心的な役割を担う施設となる。
  • 前2点の食の提供あるいは地域との連携を実現するために、地元団体等と連携のもとに、幅広い地元企業が資本運営参画する、新たな地元企業集団による施設管理者を公募するなどして、地域と密着した公園運営を行う。

丹後あじわいの郷のこれまでの運営は,実質的な運営業者ファームの方針で,他のファーム関連施設との連携に重点が置かれて地元食材の販売等も困難との批判があったところですから,地域連携を運営の中心とすべしとの在り方検討会の報告は丹後あじわいの郷の運営方針に大きな変革を迫るものであったろうと思います。
そのため,深読みするならば,在り方検討会の報告の方向への運営転換を求めた京都府と,(株)ファームの折り合いが付かなかったために,今回の報道のようなことになったのではないでしょうか。そして,5%株を所有する京都府が株式を(株)ファームに無償譲渡し,おそらく今後その他の自治体(京丹後市宮津市与謝野町伊根町など)も無償譲渡することになるのだろうと思います。
でも,,府の財産なんですよね。それで良いんでしょうか。

2009年2月5日追記 市倉ファーム

(株)ファームが最初に手がけて1986年8月に開園した市倉ファーム(西条市)は,2007年6月1日で閉園したとのことです。ネットで見ても,懐かしがっている声,悲しがっている声が多数見られます。残念です。

2009年9月16日追記 信州塩尻チロルの森

2008年9月に,売店で提供していたレタスアイスクリームについて,松本保健所の検査で大腸菌検査が陽性と出たことがありました。すぐに対処がなされたところです。(株)ファームが経営する信州塩尻農業公園チロルの森の中に,経営基盤確立農業構造改善事業を導入した塩尻市の事業があって,それについては,第三セクターの信州ファームが指定管理者となり,施設の維持管理・運営等は(株)ファームに業務委託しているという複雑な構造もあって,12月の市議会では,無事故で安全な経営管理ができるような組織づくりが話題となっています。

2010年7月23日追記 ポティロンの森の一件

7月18日に情報をいただきながら,更新せずにおりました。
(株)ファームが運営する茨城県ポティロンの森売店で「ポティロンの森手作りアイスクリーム」(バニラ・カボチャ・イチゴ)から大腸菌群が検出(土浦保健所が実施した、「平成22年度夏期食品一斉取締り」での収去検査において)されたとのことです。
製造所を所管する竜ヶ崎保健所は製造者((株)ファーム)に対して,7月16日付で,食品衛生法に基づき,当該違反品の販売禁止を命じるとともに、衛生管理の徹底を指示たとの記事が茨城県のwebサイトに掲載されています。ポティロンの森売店2箇所で販売していたようで,サイトにも,商品の回収と返金の案内が掲載されています(なぜかバニラとイチゴだけですが)。対応は早いです。
なお,(株)ファームの代表取締役について,久門社長が退任されたようで,森貞幸浩氏が社長に就任されています。