図書館への指定管理者制度導入,市議会委員会で否決−市川市(追記:本会議では可決)
図書館指定管理者 市川市議会委員会で否決
市川市議会の環境文教委員会は2日、新設される「市川駅南口図書館」(仮称)に指定管理者制度を導入するための条例改正案を、4対5で否決した。議員からは「文化都市とされる市川で高い評価を受けている図書館を、なぜ民間に委ねる必要があるのか」などの意見が相次いだ。
同市教委によると、新図書館は来年4月、駅南口再開発で完成する高層ビルの3階に開館し、573平方メートルの規模に3万8千冊の蔵書をそろえる予定。
中央図書館など市立図書館4館には正職員57人が配置されているが、市は経費節減を理由に、新図書館では指定管理者制度を導入する議案を市議会に提案した。貸し出し業務や書架整理、建物管理は管理者が行い、選書やレファレンスは中央図書館の職員が支援する構想だ。市からは直営で運営するよりも約900万〜1千万円の経費節減になるとの試算が示された。
これに対し、委員会では現在の図書館サービスを評価する声が続出。「だれに頼んでも情報検索への対応が的確で専門性が高い」「『図書館友の会』など市民の自主活動が根づいている」「次世代を育てる文化行政には採算性はなじまない」などの意見が相次いだ。
横浜市
一方,横浜市では図書館への指定管理者制度導入に向けて手続きを進行中です。このことについて,横浜の図書館の発展を願う会から横浜市長宛に11月7日に公開質問状が出されていることは,3月24日のエントリー「横浜の図書館の発展を願う会−みんなの図書館があぶない 緊急集会Part3・4」の追記で触れたところです(11月25日付で横浜市長から簡単な回答が来ています)。また,日本図書館協会も,横浜市長,横浜市会議長宛に指定管理者制度に関して,指定管理者制度についての協会の見解と、国会審議など最近の動向を伝える内容の文書を送付したとのことです。。
今年の7月31日の横浜市会市民活力推進・教育委員会では次のようなやりとりがありました。
◆(宇都宮委員) 指定管理者の問題については、6月3日に社会教育法の改正がされまして、その附帯決議の中にいろいろ書かれていますが、社会教育、施設の利便性向上を図るための指定管理者制度導入による弊害についても十分配慮して、適切な管理運営体制の構築を目指すという附帯決議が国で今回つけられました。その辺も踏まえて、横浜の図書館の行政が今後どうするか、ぜひ慎重に御議論していただきたいと思っております。今田教育委員長に一言御意見を伺いたいと思います。
◎(今田教育委員会委員長) 御指摘の趣旨をよく踏まえつつ、しかし物事はいろいろな選択肢というものを考えながら慎重に、また時には果敢にということも必要かと思います。いずれにしても、慎重に是非について検討しているところでございます。
◆(宇都宮委員) ぜひ今後審議をしていただきたいと思いますが、図書館というのはコスト削減だけで、費用対効果という中身の問題もしっかりと議論しなければ、軽々に結論は出しにくいのではないかと思っているところです。・・・
教育委員会側は,検討,検討と言いながら,導入の方向という姿勢が見え見えですね。
そして,10月30日の神奈川新聞の記事が伝えるような状況へ。細かくは,市議会の会議録を見てみたいところですが。
市立図書館の指定管理者制度めぐり質問相次ぐ/横浜市会常任委
横浜市会常任委員会が三十日開かれ、市が進める市立図書館の指定管理者制度導入をめぐり、各委員から慎重論や導入手法についての質問が相次いだ。
市は二〇一〇年度からの五年間、山内図書館(同市青葉区)に同制度を試験的に導入しようと、十二月の第四回定例会に関係議案を提出する予定。
委員の一人は「試行といはいえ、制度の導入は同館と地域の利用者、ボランティアが長年をかけてつくりあげた現行の図書館のあり方を一度壊すことになる」と指摘。別の委員は「サービス向上が第一の目的というが、財政難によるコスト削減という狙いが色濃くみえる。同制度は、図書館という地域の文化施設にはなじまないのではないか」と、市側をただした。
図書館職員の八割近くを占める司書について、「人員整理をどう進めるのか」との質問もあった。
市側は全国九十六自治体、百八十七図書館で同制度を導入している事例を挙げ、「コスト節減はあくまで副次的なもの。サービスを維持、向上できるよう、管理者に対しては業務要求水準書などを通じて求めていく」と説明。「現在の司書は他館に配置換えする」と答えた。
11月20日の神奈川新聞の記事では,市は12月議会へ条例を提出をすると伝えています。
市立図書館に指定管理者制度導入へ/横浜市
横浜市は二十七日に開会する市会第四回(十二月)定例会に、市立山内図書館(同市青葉区)に指定管理者制度を導入するための条例改正案を提出する。
市教育委員会によると、民間のノウハウを活用し、コスト節減とサービス向上を図る目的。市は二〇一〇年度からの五年間、市立図書館十八館のうち、山内図書館に同制度を試験的に導入。その運営評価を基に、その後の管理運営方法や他の図書館への導入拡大を検討する。
市教委は、同制度導入で開館時間の延長や自主事業の充実などのメリットを強調。現状のサービスを維持・拡充しながら、人件費抑制などで年間の運営経費を現状の約一億八千万円から一億六千三百五十万円に節減できると試算している。
可決されれば、公立図書館への同制度導入は県内では綾瀬市に続く二市目。全国の政令指定都市では北九州、広島、神戸などに続き六市目。全国では九十六自治体が計百八十七館で導入している。
横浜市のこの流れをオーソライズしたのが教育委員会に置かれていた横浜市立図書館のあり方懇談会。委員11人のうち,特に図書館に関する学識経験者としては高山正也氏(国立公文書館理事)のみが入っていますが,このヒト,「専門職による高品質のサービスを実現するための一つの方策として、指定管理者制度が提唱されるに至ったとも考えられる。」「指定管理者制度にも問題点がないわけではない。」というスタンスの人でしたからね(「公文書館の指定管理者制度への取り組みについての考察」,『北の丸』40号,136-150,2007年,国立公文書館)。他にも特に図書館に関する学識経験者が入っていたのならともかく,このスタンスの人だけだったというのはいかがなものか。
しかし,横浜市教育委員会ウォッチャーさんのブログを読むと,そもそも横浜市教育委員会の委員の人選自体どうよ,っていう思いも。
12月8日追記
12月5日の市川市議会の本会議ではひっくり返っています。
12月6日の朝日新聞の記事から
図書館の指定管理者案可決 市川市議会 今月中に公募へ
市川市議会は、本会議を開き、環境文教委員会で否決した市川駅南口図書館(仮称)に指定管理制度を導入する条例改正案を25対15の賛成多数で可決した。清水美奈子(共産)、高橋亮平(ニューガバナンス)の両議員が「指定管理者では専門性や継続性を保つことは難しく、職員アンケートでも賛成は16%しかいない」「942万円という経費削減効果や委託によるメリットの検証が不十分。時期尚早だ」などと反対討論を行った。
同市教委によると、12月中に指定管理者を公募し、来年1〜2月に選考・決定。仕様書などを通じて業務を引き継ぎ、4月30日の開館を目指す。
12月10日追記
横浜市の市議会(横浜市会)の委員会では,継続審議となったようです。
12月10日の神奈川新聞のサイトの速報から
市立図書館への指定管理者導入/横浜市会常任委が継続審査決める
横浜市教育委員会が二〇一〇年度から市立山内図書館(同市青葉区)に指定管理者制度を導入するために提出していた条例改正案を審議していた市会常任委員会は十日、採決の結果、閉会中の継続審査とすることを決めた。「他都市の状況を知る必要がある」「なお検討すべき」などと導入には慎重な意見が多数を占めたためで、十二日の市会最終日の本会議でも委員会の採決通り、継続審査となる見込み。
12月13日追記
市議会本会議でも継続審議となりました。
12月13日の毎日新聞神奈川版の記事から
横浜市議会:市立山内図書館の指定管理者導入議案を継続審査
横浜市議会は12日、12月定例市議会に上程されていた市立山内図書館(青葉区)に指定管理者制度を導入するため条例を一部改正する議案を、閉会中の継続審査とすることを決めた。慎重な議論を求める意見が相次いだため。
条例改正案は、市立図書館では初の試みとして、10年4月から山内図書館で同制度を導入する内容で、市教育委員会が提案していた。市教委は開館時間延長や経費節減といった効果を強調していたが、サービス低下やボランティアとの連携への影響を危ぶむ声が相次いでいた。【野口由紀】
2009年2月21日追記
問われる図書館への指定管理者導入/横浜市会常任委、20日採決
横浜市会常任委員会は十九日、市立山内図書館(同市青葉区)に二〇一〇年度から五年の試行期間で指定管理者制度を導入するための条例改正案を審議し、二十日に意見表明と採決を行うことを決めた。各会派で採決までに再度、議論する予定だが、賛成多数で可決の見通しとなっている。
市教育委員会は、開館時間を午後八時半(現在同七時)まで延長するなど、現行サービス水準を維持・拡充できると強調。ただ、年間運営経費の削減額は自主事業推進のため、当初試算の千六百五十万円より少なくなるとの見通しを示した。
委員からは「図書館に指定管理者がなじむのか疑問もある」「長年築き上げてきた地域住民とのつながりをどのように継承するのか」などの声が上がった。
市立図書館への導入については、関係者や市民団体などから「司書は高度な専門性が必要で五年契約では育たない」「市立図書館十八館をひとつのシステムとして専門的職員が運営するのが効率的」などの指摘が上がっていた。昨年の市会第四回(十二月)定例会に条例改正案が提出されたが、継続審査になっていた。
可決の見通しと。
2月21日の毎日新聞神奈川版の記事から
行政ファイル:横浜市立山内図書館の指定管理者制条例案が委員会可決
市議会市民活力推進・教育委員会常任委員会は20日、昨年12月定例会で継続審査になっていた市立山内図書館(青葉区)に2010年4月に指定管理者制度を導入する条例改正案を賛成多数で可決した。これまでの議論を踏まえ、サービスの事業者への引き継ぎや、地域ボランティアへの支援や協力の継続など5項目の付帯意見を付けた。同案は25日の本会議でも可決される見通し。指定管理期間は5年間。
さて,山内図書館という公立図書館という施設だか機関だかが,地域住民との間でどう公共性という関係を紡いで行くのか。
横浜市教育行政の研究
横浜市教育行政の研究―中田市長の登場で何が変わったか 竹岡 健治 スペース伽耶 2008-05 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
橋下大阪府政と教育委員会の関係など,行政と教育委員会の関係性という面で,考えさせられそうな一冊。
2009年2月25日追記
図書館への指定管理者制度導入、付帯意見付きで成立/横浜市会
横浜市会第一回(二月)定例会は二十五日、本会議を開き、二〇〇八年度一般会計補正予算など三十六議案を可決した。このうち市立山内図書館(同市青葉区)に指定管理者制度を導入する市立図書館条例改正と、市在宅心身障害者手当支給条例廃止は、ともに付帯意見付きの賛成多数で成立した。
〇八年度一般会計補正予算は自民党、民主党、公明党、民主党ヨコハマ会などの賛成多数で成立した。
市立山内図書館への指定管理者制度導入への付帯意見は、「地域図書館・中央図書館十八館のネットワーク体制の維持」など五項目について「特段の対応を図られたい」とした。また、市在宅心身障害者手当支給条例廃止には「障害者福祉の後退につながらないよう障害者施策の推進」などを求め、付帯意見が添えられた。
先のビジョンなしで指定管理者制度へ賛成する市議たち。NPOへ非公募でなんていうビジョンがあるんならまだしもね。 もう何も言うことなし。つまらない。
2009年3月7日追記
市川市 新図書館開館、宙に
指定管理者が運営する新図書館を今年4月末に開館する予定の市川市で、市議会環境文教委員会が、業者指定の議案を「継続審査」と決定したため、オープンが宙に浮く形になっている。「民間に任せて内容がどう向上するのか明確になっていない」などとする委員が多かったためで、市は業者側と協定を結ぶことができず、打開策は決まっていない。
新設されるのは、市川駅南口図書館。駅周辺再開発の核となっている45階建てマンション「ザ タワーズ ウエスト」の3階に開設される。
同図書館の管理・運営を民間の指定管理者に任せるという市教委の方針に対し、昨年12月の同委員会で条例案が否決されたが、本会議で一転可決されていた。
市教委は今年1月に管理者を公募し、選考委員会が4社の中から、経営状況や事業提案などほぼ全項目で評価が高かった「ヴィアックス」(東京都中野区)を選び、今議会に3年間の指定を提案した。議決されれば、今月末に協定書を結び、4月に研修や準備を進め、同30日に開館という段取りだった。
3日にあった同委員会では「全国最高レベルの評価を得ている市の直営図書館が民間になると、今よりどんな点が向上するのか」「指定管理料(年間約6810万円)は直営より1千万円コスト削減になる試算だが、その内訳は何か」などの質問が続いた。その結果、委員長を除く9人のうち5人が継続審査に賛成した。
継続審査を決めた委員らは「市民には4月末と約束したのだから、委託を延期した保育園などと同様、直営で準備するべきだ」と主張。市教委担当者は「指定管理者で新設する条例は成立している。既に3万8千冊の図書購入を進めており、住民サービスに多大な影響を与える事態だ」と頭を抱えている。
条例の議決と,指定管理者の選定の議決については,様々なケースがあるところで,頭を抱える必要もない。
指定管理者が決まらないのだけが事実。
市の行政が図書館を開館できないのであれば,それは行政の怠慢にすぎない。