福島県立白河高校PTA解散と雇い止め問題
PTA(人格なき社団)に雇われていた職員がPTA解散(偽装解散のようにも感じますが)により雇い止めされた問題で,解散したPTAの清算人(元PTA会長)を訴えていた民事訴訟(福島地裁白河支部)の判決がでています。第一報は2008年1月6日のエントリー「福島県の県立白河高等学校でPTA(親と教師の会)が偽装解散」に追記したところでしたが,今後の控えとして,新たにエントリーを作成します。
ただ,今時点では情報がないため,ここまで。
11月13日追記
白河高PTA解散損賠訴訟:元職員が一部勝訴 102万円支払い命令
白河高校PTAの元職員の女性(43)が「不当に解雇され損害を受けた」とし、元PTA会長ら2人を相手に約256万円の損害賠償などを求めた訴訟の判決が11日、地裁白河支部であった。高瀬順久裁判官はPTA解散に伴う雇用関係の消滅を認めた一方、清算手続き完了までの雇用債権を認め、約102万円の支払いを被告側に命じた。
判決で高瀬裁判官は、PTAが清算完了まで法人として存続していたとし、「原告は清算完了までPTAに賃金債権があった」と、昨年4〜8月の給与相当分を支払うよう命じた。原告側は「一部勝訴の判決だが、雇用継続が認められず残念」とし、PTA側は「解散の適法性や雇用関係の消滅など主張がほとんど認められ、評価する」と話した。
元職員は昨年4月にもPTAに地位確認を求め提訴し、昨年8月に勝訴の判決が確定していた。【和泉清充】
PTAによる雇い止めも不当であってとした昨年8月の判決(雇用契約確認等請求事件)を踏まえ(一部修正しました),4月以降の雇用債権の支払いを命じたとのようですね。
中途半端な金額になっているのが不思議でしたが,解散を実際的に認め,清算完了をPTA敗訴判決が確定した8月時点としたという記事になっています(提訴が4月17日,PTAの解散が議題となった総会は5月26日,県労働委員会より使用者側があっせんに応じないためとして「あっせん打ち切り」の通知があったのが5月29日。校長名でPTAの資産が会員に返還されたのは6月13日ごろです)。
判決は昨年7月10日。控訴期限は判決書の送達を受けてから2週間以内となりますので,それが8月に入ったということでしょうか。それとも,7月に確定したのだけれども,解雇予告手当分を載せたんでしょうか。細かいところはわかりません。
12月1日追記
原告と被告双方が控訴 白河高PTA不当解雇訴訟
福島県立白河高PTAに不当解雇されたとして、元PTA職員の女性(43)が、PTAの元会長ら2人を相手に地位確認と257万円の損害賠償を求めた訴訟で、女性側は25日、訴えを一部認めた一審福島地裁白河支部判決を不服として仙台高裁に控訴した。元PTA会長側も同日、控訴した。
一審判決は約4カ月分の給与と賞与を損害額相当と認め、元会長らに102万円の支払いを命じたが、女性側が主張したPTA解散と雇用期間満了による雇い止めの違法性は認めず、地位確認や慰謝料などの請求は棄却した。
女性を支援する福島県労連は「公費で雇用されるべきPTA職員の私費雇用がまかり通っている県内の現状を問いたい」と理由を説明した。元会長側は「PTAが法外な雇用義務を負わされる団体でないことを明確にしたい」と述べた。
原告、被告双方が控訴/白河高PTA訴訟
白河高のPTA職員だった女性が元PTA役員らを相手取り損害賠償などを求めていた裁判で、原告の女性と被告の元役員ら双方が11日に言い渡された地裁白河支部の判決を不服として25日、仙台高裁に控訴した。
原告側は元役員らにさらに154万8034円の支払いなどを求めている。
被告側は1審判決取り消しなどを求めた。
控訴理由の中で原告側は、1審判決が白河高PTAとの雇用関係の期間満了による終了を認め元役員らに不法行為が成立しないと判断した点と、PTAの解散が違法でなく元役員らに不法行為が成立しないとした点に、事実誤認と法令解釈の誤りがあるとしている。
被告側は控訴理由を追って陳述するとしている
2009年3月12日追記
白河高PTA不当解雇訴訟 元会長らと和解成立
福島県立白河高PTAに不当解雇されたと訴えて勝訴した元PTA職員の女性(44)が、PTAの解散で賠償が履行されないとして、PTAの元会長ら2人に地位確認と約260万円の損害賠償を求めた訴訟は、元会長らが和解金を支払うことなどで11日、仙台高裁で和解が成立した。
原告側関係者によると、和解条件は、一審福島地裁白河支部が損害額と認定し、支払いを命じた約4カ月分の給与・賞与相当分計102万円と判決後の利息分を元会長らが支払うなどの内容。
地裁白河支部は昨年11月の判決で、雇用契約が切れた2007年4月から前訴訟判決確定までの給与・賞与を損害と認める一方、PTAの解散や期間満了による雇い止めの違法性は認めず、地位確認や慰謝料などの請求を棄却。原告、被告双方が控訴していた。
一審判決によると、PTAは1990年度から1年契約の更新を続けてきた女性を06年度で解雇。女性は損害賠償などを求めて提訴したがPTA側は出廷せず、地裁白河支部は07年7月、請求通り290万円の支払いを命じ、判決が確定した。
裁判は終了。 さまざまな課題を残して。
追記:
和解ですから,決着したとは言いきれないところですね。
PTAという団体に責任があったことは確定しても,結局,原告側としても,今回の被告であるPTA会長に対して,PTA会長としての責任は問いきらない。あくまで清算人としての責任のみを問わざるを得なかったんだろうなと思います。おそらく一審もPTAの責任と個人の責任を分けざるを得なかったんでしょうし。
確かに,実際のPTAを見てみれば会長にのみ責任を追わせるようなわけにはいかない。PTA会長職って言うのはほとんど無償奉仕ですからね。
でも,被雇用者にとって本意ではない言い方になるけれども,このような結末を見せつけられると,結局,白河高校PTAについては,雇用者能力はなかった,人をそもそも雇用すべきではなかったとしか言えないわけです。
おそらく,他校のPTAで,またPTAに限らず,人格なき社団に同様な形で雇用されている方たちの,基本的な権利についても中途半端な状態に置かれる。
今回の裁判の議論とは離れてきますが,人格なき社団は,その保有する資産の範囲内で責任があって,それ以上構成員には責任が及ばない有限責任となっている。でも,少なくても労働債権を含む雇用者責任については,構成員にも責任が及ぶようになっても良いかもしれません。責任の及ばない構成員が議決で偽装解散できるようでは,雇用者責任になぞ思いもいかないでしょうから。
(今回の裁判の白河高校PTAの件では,そもそも人格なき社団に資産がありました。ただ,その資産を清算人が構成員に資産を分配した。すなわち,すでに訴えられていたにもかかわらず,対外的な権利義務を果たすための資産を消滅させたというところも問題だったわけですが。また,人格なき社団の財産は総有であるにもかかわらず,全員の同意が取れていない段階で一方的に分配し消滅させたことについては,当時のPTA会員が訴えれば問題になる可能性もあるのではないでしょうか。解散時の財産の分配については人格なき社団と民法上の組合の良いとこ取りをしているようにすら思えます。)