佐賀県立病院好生館

同病院の勤務医の労働条件については,新聞報道のほか,あちこちのブログでも話題になっていたところ。
県立病院の研修医の勤務実態について (平成18年5月10日 回答)より。

【県民の声】
医師の基礎的な診断治療能力を涵養する目的で、二年間の研修が義務化されたところです。
私の甥はある国立系大学病院で研修医をしています。その勤務実態は非常勤職にも関わらず、連日早朝が深夜まで勤務し、時間外手当もない現状です。これは医療の安全性に多大なリスクを負うものであり、かつ山梨県では研修医の過労による死亡が訴訟になりました。我が県立病院では、このような過酷な労働は存在しないでしょうね。


【知事の回答】
県立病院好生館における研修医の臨床研修についてのことでしたので、好生館に聞いてみました。

 (県立病院好生館の回答)
平成16年度から臨床研修が必修化され、内科や外科、救急部門、小児科、産婦人科、精神科といった各診療科でそれぞれ少なくとも1か月以上ずつ研修を行うなど、将来専門とする診療科にかかわらず、プライマリ・ケア(初期診断・治療)の基本的な診療能力を修得するようになりました。
県立病院好生館における臨床研修では、多くの症例経験から、より深い知識と優れた技術を身につけるため、管理当直医師の指導のもとに宿日直も行っており、その際は宿日直手当が支給されています。
宿日直の回数は、診療科によっても異なり、特に救命救急での研修の時期には多くなっていますが、平成17年度の好生館における研修医の年間を通じての平均は、月に3回から4回程度となっています。
また、このような臨床研修以外にも、より高度化する医療技術に対応するため、教える医師も含めて、自主的な勉強会を、例えば土曜レクチャーとして行っています。
こうした研修を通して、患者さんの症状に応じた最良の医療を提供する立派な医師が育っているものと考えています。
もちろん、医療の安全性の確保のためには、医師が心身ともに健康であることは重要な要素のひとつですので、その点についても十分配慮しながら、臨床研修が効果的に行われるよう努力しています。
甥御様も、より多くの症例を経験されることにより、より確実な技術、より高い技術を修得されるために、臨床研修に励まれているものと思います。そうした中で、ご本人が大変に感じていらっしゃるようでしたら、まずは指導医に早めに相談されてはいかがでしょうか。

 県立病院好生館からの回答は以上のとおりでした。県立病院好生館は独立採算で運営されていて、臨床研修の内容についても、私はコメントすることが難しいのですが、健全な病院経営と良質の臨床研修を両立させようと努力していることは私も認めます。より適切な臨床研修となるよう、このメールを機にさらに配慮していただきたいと思います。


【関係課】
佐賀県立病院好生館総務課
TEL:0952-28-1151
E-mail:kenritsubyouin@pref.saga.lg.jp

県立病院好生館での研修医の宿直は「平均」月に3回から4回。宿日直手当は出ているという回答から始まる。
佐賀県立病院好生館職員の勤務状態について (平成18年12月13日 回答)より

佐賀県立病院好生館職員の勤務状態について
研修医ではないのに、研修医扱いとして好生館に派遣されている医師の家族です。
休みは一日たりともありません。これは職業柄仕方ないとは思えるのですが。一週間のうち家に帰ってこれるのが半分もあればいいほうです。毎晩泊り込んで、寝る暇もなく働きづめです。帰って来た日でも、病院からの電話が殺到し、夜もろくに眠れません。
やつれた顔を見るたびにいたたまれない気持ちになります。
当直として働いている日以外は手当ても出ません。超過勤務手当ては皆無です。日々雇用職員としての扱いになっているからとは思いますが、ボーナスもなし、扶養手当もなし、住居手当すらありません。
給料の収入は一ヶ月で手取り29から30万円くらいですが、実際に働いている時間を考えると、時給に直せば200円足らずです。
事務員に、月から金曜日までの週5日間、8:30〜17:15の間のみ働いた形として、印鑑を打たされるそうです。
実際はその何倍も働いているのに・・夜中の0時に呼び出され、朝方10時過ぎまで寝ずに働いても、ただ働きです。土日も終日(ひどいときは24時間)働いても、一円たりとももらえないのです。
この現状を県はご存知でしょうか?これだけ身を粉にして働いても、生活は苦しいもので共働きでも大変です。市県民税は高価、払っていくためにどれだけ家族が犠牲になっていると思いますか・・・
こんな状況で「すべての人が輝き、活躍できる県」といえますか?給料のことは仕方ないとしても、好生館に勤める勤務医の雇用状態についてもっと考えてもらえないでしょうか?このままでは、過労死してしまいます。
どうか、お願いいたします。


【関係課の回答】
県政提案メールをいただきました。ありがとうございます。
また、日頃から好生館の医療業務のためにご尽力をいただき、まことにありがとうございます。
好生館の職員の勤務については、やむを得ず長時間、深夜に及ぶことがあり、ご家族の皆様にも厚く感謝を申し上げます。
給与の面や勤務時間の面について、できる限りの改善を図りたいと考えているところですが、公的な病院としての制約などがあり、必ずしも思うに任せない点があることも事実でございます。
ご提案は改めて、県の関係部署にも伝えさせていただきます。
一朝一夕に解決できる課題ではございませんが、優秀な医師の育成確保、そしてそのための勤務条件の改善は、最も重要な経営課題の1つと考えているところです。
好生館を設置する県の方でも、現在経営の自由度を増す方策の検討が進められているところですので、今後ともご理解とご協力をお願い申し上げます。


【関係課】
県立病院好生館
TEL:0952-28-1152
E-mail:kenritsubyouin@pref.saga.lg.jp

県立病院好生館嘱託医の処遇に関して (平成19年6月11日 回答)より。

県立病院好生館嘱託医の処遇に関して
県立病院好生館の嘱託医は、月に数10〜100時間の時間外労働をこなしていますが、時間外労働に対する対価が全く支払われていません。
明らかな労働基準法違反の状態と考えます。速やかに改善をお願いします。速やかに改善がなされない場合、法的手段に訴えることも辞しません。
今年4月から県立病院では電子カルテが導入されており、「いつ誰がどこでカルテ入力をしたか」はすべて記録されています。
監査を行えば、ほとんどすべての嘱託医が無給で月に長時間の時間外労働をしている実態を隠すことは不可能です。
公的施設としてすぐに金銭的な面での早急な対応は難しいと思いますが、少なくとも時間外労働実態把握のために、時間外勤務簿を正確に記入することから始めることはすぐにでも可能なはずです。(現在、嘱託医には時間外勤務簿はありません)
若手医師の過労死が問題となっている中、県として自主的に監査を行われ、現状を改善してくださることを望みます。
1ヶ月後を目処に改善がなされていなければ、法的手段を含め、私の持ちうるすべての権利を用いて現状改善を県に対して迫ります。

※同趣旨のご意見が他に1件ありました。


【関係課の回答】
御指摘の研修医の勤務について、これまでにも同様の県政提案メール等をいただいており、好生館では現在、研修医のあり方について、実態を把握・分析しながら県庁内の関係する部局とも協議し、検討を進めています。
「時間外勤務簿を正確に記入することから始めることはすぐにでも可能なはず」とのご指摘ですが、この件については、研修医の位置付けをきちんと行ったうえで、具体的対応を決定する必要があると考えています。早急に検討を行い、方向性を出していきたいと考えていますので、ご了承ください。


【関係課】
 健康福祉本部 医務課 新県立病院プロジェクト推進室
  TEL: 0952-25-7033
  E-mail: imu@pref.saga.lg.jp    

改善のお願い (平成19年11月8日 回答)より。

【県民の声】
信じがたい話を耳にしましたので、その真偽を確かめるべくメールをお送りする次第です。
その内容とは「県立病院の公式記録上、医員は週の平日のうち4日間、1日当たり8時間のみしか働いていないことになっている」というものです。
私は、当然ながら週5日間フルに働いていますし、さらに夜間休日にも病院に呼び出しを受けています。
まず、このことに関して事実か否かお答えいただきたい。
事実であるとすれば、このような実態と乖離した制度は改められなければなりません。
知事にお願いしたい点が4点あります。
1. 公式記録上、週4日勤務となっているのであればそれを週5日勤務に訂正すること。
1. 週5日勤務に訂正することで生じる給与差額を今年4月に遡って支給すること。
1. 500時間余の夜間休日労働に関して公式記録として記録し、その対価として時間外賃金を支払うこと。
1. 今後必要とされる夜間休日労働に関しても公式記録として記録しその対価として時間外賃金を支払うこと。
以上4点です。
県として、現段階で勤務記録を訂正しその対価を払う意思があるかどうかをお聞かせください。


【知事の回答】
県立病院好生館における時間外勤務の問題は重大なことと受け止めています。
この問題については、本来あるべき状態になるよう、好生館が改善に取り組んでいますので、館長からの回答をご覧ください。

 (県立病院好生館長の回答)
11月1日以降の時間外勤務については、10月31日に説明しました際に配布した「出勤簿・時間外勤務命令簿」に従事業務の内容を記載し、各診療科の部長などの確認を受けてください。
また、週4日の勤務日数については、医局内で検討した結果、現行どおりとしましたが、そのかわりに、勤務以外の日に、他の病院での勤務をされる場合は、他のスタッフで好生館内の業務に対応することとし、どうしても対応できないなどの理由で勤務以外の日に勤務を命じる場合は、時間外勤務の処理をします。
時間外勤務に対する適正な対価の支払いや、過度の時間外勤務の防止、時間外勤務として評価するものと研修として評価するものとの振り分けの基準などについては、好生館医局内部でも検討が進められ、10月31日に配布したとおり決定されたところです。
次に、過去における時間外勤務の対価についてですが、労働基準監督署からの是正勧告をもとに対応策を協議し、過去分については、好生館として記録簿のあるものについて対応、記録簿のないものについては、新制度スタート後の対応とする方針でした。
しかし、今回の記録の提出を受けて検討した結果、まず、実態調査を行うこととしました。
過去の分については、全ての個人について同じレベルの記録があるとは限らないこと、診療科や個人によって従事する医療行為が異なること、監督者の確認がないことなどから、誰もが納得できる調査結果とするためには、相当の困難が予想されますが、できる限りのことを行います。
勤務を証明する書類などがもしあれば、その提出や、ヒアリングなどの形でご協力をお願いします。
11月1日から30日までの勤務実態を、より詳細に記載する様式を準備したのもその一環ですので、ぜひご協力をお願いします。
皆さんの真摯な医療行為に対する対価の見直しや、アンケートでご要望の多かった医学書・医学雑誌の充実など、今後とも力を注いでいきたいと考えています。
そういった環境整備のためにも、率直なご意見、具体的なご提案を直接出していただくことが大切です。今回のメール提案で、より掘り下げた形で、今後の好生館の運営に活かすことができるものと喜んでいます。
これからの医療機関はますます連携、相互の協力が不可欠になっていきますので、ぜひこれからも好生館のために、忌憚のないご意見、ご提案をお寄せください。

 以上が、県立病院好生館長からの回答です。
県民の皆さまが安心して医療を受けられる県立病院であり続けるためには、医師をはじめ職員の皆さんが持てる力を存分に発揮できるような環境づくりが必要だと思っています。
もう少し時間がかかるようですが、好生館における改善が着実に進んでいくよう、これからも注視してまいります。


【関係課】
 健康福祉本部 医務課 新県立病院プロジェクト推進室
  TEL: 0952-25-7033
  E-mail: imu@pref.saga.lg.jp
 健康福祉本部 県立病院好生館
  TEL: 0952-24-2171
  E-mail: kenritsubyouin@pref.saga.lg.jp

県立病院好生館職員の勤務状態は改善されましたか。 (平成19年11月9日 回答)より。

県立病院好生館職員の勤務状態は改善されましたか。
県政へのご意見 http://www.pref.saga.lg.jp/sy-contents/kensei_goiken/entry.html?eid=407 で記されている、県立病院勤務医師の劣悪な労働環境について、何らかの改善が図られたのでしょうか。
何もフォローアップのリリースがないことから考えますと、県は何もしていないのではないかと疑いを抱いてしまいます。時間の経過とともに、この問題がうやむやになればよいと考えていらっしゃるということはないでしょうけど、何らかの広報が必要でしょう。
研修医のみならず、すべての医師の早急な労働基準法遵守を強く求めます。事務方による、勤務時間データの改ざんに強く抗議します。県の、この点についての対応のなさ(不作為)に抗議します。
事務員に、月から金曜日までの週5日間、8:30〜17:15の間のみ働いた形として、印鑑を打たされるそうです。
「勤務記録の勝手な書き換え」が告発されれば、如何なる事態を招くかはよくご存じのことでしょう。
佐賀県の医療を崩壊させないために、県立病院には率先して勤務医の労働条件の改善を求めます。


【関係課の回答】
嘱託医の時間外勤務の問題については、7月末までに各指導医の勤務時間管理状況等についてのアンケート調査や、各嘱託医の職場環境改善要求項目等についてのアンケート調査を行い、集約して医局内で協議し、対応方針を検討してきました。
検討の結果、嘱託医も11月1日から、出勤簿・時間外勤務命令簿に基づき、実績分を支払うこととしております。また、月16日を超えて勤務以外の日に勤務を命じる場合も、時間外勤務の処理をしていきます。
また、当直など医師の負担軽減も重要な課題です。昨今の医師不足のなか、厳しい状況ではありますが、スタッフの確保など医療体制の充実についても努力していきますので、ご理解をいただきたいと思います。


【関係課】
 健康福祉本部 医務課 新県立病院プロジェクト推進室
  TEL: 0952-25-7033
  E-mail: imu@pref.saga.lg.jp

佐賀県行政の情報公開の姿勢はたいへん素晴らしいものと思います。それにしても,昨年11月から研修医(非常勤嘱託医)については,ようやく適法な取扱いとなったということでしょうか。
でも,,
 平成21年度初期臨床研修医募集要綱から。

  平成21年度臨床研修医募集要綱

1応募資格
	医師免許取得者又は平成20年度医師免許取得見込みの者
 
2募集見込み人員
  	10名
 
3応募要領
 	(略)
 
4応募締切及び試験日
  	
(応募締切) 	  	(試験日)
(1)平成20年7月11日(金) 	⇒ 	平成20年7月25日(金)
(2)平成20年7月25日(金) 	⇒ 	平成20年8月8日(金)
(3)平成20年8月8日(金) 	⇒ 	平成20年8月22日(金)
(4)平成20年8月8日(金) 	⇒ 	平成20年8月25日(月)
 
5選考方法
  	書類審査、小論文及び面接
 
6選考会場
  	佐賀県立病院好生館
 
7研修期間
  	2年間
 
8研修開始日
  	平成21年4月1日(予定)
 
9身分、待遇
  	
(1)身分 	医員(研修医)
(2)給与 	給与(月額、税・保険料込み)
 (平成20年度) 
  1年次:284,000円 
  2年次:292,000円
  賞与 なし
  別途宿日直手当(20,000円/回)
(3)各種手当 	時間外手当:無、休日手当:無
(4)休暇制度 	有給休暇:7日(採用後6ヶ月経過後)
(5)宿舎 	有(A室:6,200円、B室:4,900円)
(6)社会保険、年金 	社会保険:政府管掌保険、年金:厚生年金保険
(7)医師賠償責任保険等 	病院:加入  個人加入:強制
 
10研修方式
  	(略)
 
11病院見学のご案内
  	(略)

(初期)臨床研修医には依然として時間外手当の制度はないようです。佐賀労働基準監督署の佐賀県立病院好生館事業所への平成19年5月28日の是正勧告書(平成19年6月5日受領)では「非常勤嘱託である研修医の賃金台帳に労働時間数、時間外労働時間数等の法定記載事項力配入されていないこと」について労働基準法第108条に違反しているとし,時間外手当の制度のない研修医に対しても時間外勤務手当を支出することを求めていたと思ったんですが。(自分がもし研修医の立場だったら,少なくても時間外手当が制度上支給されるところがいいなぁ)
なお,後期臨床研修医についてだけは,時間外(勤務)手当,休日(勤務)手当が「有」となっています。

9月12日の毎日新聞佐賀版の記事から

県立病院好生館:740人の未払い手当2年分、4億4000万円支給へ
県立病院好生館が、職員の時間外手当を慣習的に払っていなかった問題で、県は11日、職員ら740人を対象に2年分計4億4000万円を支払うと発表した。県議会9月定例会に補正予算案を提出する。
 支払い対象の内訳は、正規職員679人と研修医61人。期間は、佐賀労働基準監督署から是正勧告を受けた昨年6月から、賃金請求権が有効な2年間をさかのぼった。
 病院は、県の予算に合わせて手当を支払うため、事務局が時間外手当を計算する際、職員から申請のあった時間数より少なく入力していた。相当以前から行われていた慣習とみられ、06年度の場合、1億4000万円が未払いとなっていた。【上田泰嗣】

独立行政法人

毎日新聞佐賀版の11月9日の記事から

県立病院好生館:県職労、法人化反対デモ
県職員労働組合は8日、県立病院好生館の独立行政法人化を問題視し、佐賀市で「県立病院を守る」総決起集会を開いた。組合員ら約400人が参加し、集会後に市内をデモ行進した。
 好生館は12年に佐賀市嘉瀬地区に移転する予定。県は新病院の開院前に運営形態を独立行政法人とする方針を示している。法人化によって運営の裁量は広がる一方、職員は「非公務員」となる見通しという。
 集会では、県職労好生館支部が「全国でも事例が少なく、検証が不十分。拙速に進めるべきでない」「不採算部門の切り捨てにつながる」などの問題点を挙げ、反対の立場で県と交渉する考えを改めて示した。
 集会宣言を拍手で採択した後、参加者は横断幕を先頭にシュプレヒコールを上げ、デモ行進した。

経費削減という面では,指定管理者制度の導入の方が,けっこうドラスティックな改善に繋がる可能性もあります。しかし,指定管理者制度では,県立病院の機能が損なわれる可能性も高くなる。独立行政法人制度ならば,それに比較すれば,県立病院の機能は守られるように思います。
ただ,独立行政法人制度では,法人にきちんとした運営能力があることから,県行政があまり設置者責任を感じなくなる虞も,無きにしもあらず(今でも,「独立採算」だからと言って行政が当事者責任をあまり感じていないような状況が感じられます)。それが,結局,独立行政法人制度を導入してしまえば,行政は一層,当事者責任を感じることなく運営費負担金をデスク上で縮減し,結局公立病院ならではの「不採算部門」を切り捨てることに繋がりかねないという危惧も正当なものだと思います。