安倍元首相の特命室

本日,閣議で総辞職が決定したとのことなので,もう安倍「元」首相でもよさそうですね。
安倍元首相の特命チームの官僚たち,9月7日付で経済産業省防衛省環境省の課長級3人が出身官庁に戻ったというニュースが出ていましたが,内閣総辞職を受けてでしょうか,今日25日付でも少なくても数人が出身官庁に戻ったようです。

官僚に対する不信感も人々の間に広まっていることもありますが,政治家の暴走は,行政改革の名の下に思いつきの,つじつまの合わない政策へとつながりがち。そういう中で,特命チームの在り方が,政治家の暴走を食い止めるんだか,官僚の独断専行を食い止めるんだか,役割がはっきりしなかったところもつらかったですね。

その間隙を縫って,宮内義彦(オリックス会長,元規制改革・民間開放推進会議議長),御手洗冨士夫(キヤノン会長,経済財政諮問会議議員),奥谷禮子ザ・アール社長,元規制改革会議委員)らの政商や,八代尚宏本間正明らの財界御用学者や福井秀夫のような勘違いくんが跋扈してきたことが,結局,労働者,地方や若年層からの搾取の強化,持てる者への富の集中を生んだ。それが実は,今日の実感のわかない好景気,消費低迷へと繋がってきているのかもしれません。
政治家がまともな政策実行力を持っていないのに,官僚に対抗するために,資本家と手を結んだ結果なわけです。

「小泉規制改革」を利権にした男 宮内義彦

「小泉規制改革」を利権にした男 宮内義彦「小泉規制改革」を利権にした男 宮内義彦
有森隆とグループK

講談社 2006-12-21
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools
宮内委員会こと規制改革会議の独裁体制やあおぞら銀行上場によるキャピタルゲイン(日債銀にそもそも投入された公的資金,そしてあおぞら銀行の取締役会の独裁的引き回しがあってこそのものだが),貸金業者のCP(コマーシャルペーパー)による資金調達(ノンバンク社債法)など,規制緩和のインサイダーとしての活躍。
 村上ファンドとの関連も(ネオリベラリズムはその創始者フリードマンからして,紳士らしからぬ投機=マネーゲーム好きですから,当然と言えば当然ですが。Theodorさんのブログを参照)
宮内義彦の発言より

いまの日本の人口分布からすると,田中角栄さんの「均衡ある国土の発展」政策によって地方の人口が多すぎたままの状況になっていると思います。
−snip
 北海道のような気候風土なら,二百万人か三百万人程度であれば非常に豊かに住むことができます。無理やり「均衡ある発展」などと言わずに自然に任せておけば,二百万人なり三百万人という均衡点に落ち着くものなのです。
−snip
 もう少し所得配分を自然にゆだねることでおそらく過疎地の人口は徐々に町村等の中心地に移動し,また地方の中核都市がさらに発展するようになり,最後に東京を中心とする首都圏,京阪神の関西圏が世界に対する情報発信基地としての役割を担い,経済効率は格段の向上を見せるはずです。

ちなみに,今の北海道の人口は約560万人。富の再配分はせず,自然にゆだね,約半数の人がふるさとを捨てざるをえない状況に北海道を追い込むべきとの宮内義彦のお考えですね。日本各地の「田舎」は限界集落へ,そして廃村に追い込まれるでしょう。一方,東京には人口が集中する。そこで地震でも起きた日には日本は大変な状況になりますよ。宮内義彦は究極のアナキストなんでしょうか。


ちなみに,オリックスグループは,宮内らネオリベラル派の「規制緩和」を様々なビジネスチャンスとしている。2005年3月1日に開院した「高知医療センター」もその一つである。オリックスが中心となった特定目的会社「高知医療ピーエフアイ株式会社」がBTO方式(職員宿舎はBOT)で建設したもので,さらに施設の維持管理,看護補助や食事提供,物流管理等のサービスもオリックスが中心となって運営。だが,運営状況は...
また,特区を活用し,株式会社病院にも参入。2006年7月29日に株式会社「バイオマスター」(横浜市)が開院した「セルポートクリニック横浜」である。


規制緩和の側面も持っていて,あおぞら銀行の取締役会では,株主価値を高める提案を排除する方向で動いた。金融界から「米国流の経営の監督責任と執行責任の峻別を唱える宮内が,自分の利害にかかわると,なりふりかまわずデューデリジェンスの阻止をやる。普段から口にしている資本の論理は忘れたのか」と顰蹙を買ったという。
オリックス本体の市場への情報開示も悪評を買っており,米ムーディーズ・インベスターズ・サービスの格付けではBaa1だとのこと(2005年8月まではジャンク債寸前のBaa3だった)。
「どうしても関西に来るというのなら反対する。しかし,他の地域なら反対はしない」と言い,最も強硬な「抵抗勢力」として楽天の神戸進出を阻止したのは有名な話。
また,宮内チルドレンこと奥谷禮子(ザ・アール社長)の発言も香ばしい。


宮内らは,いま「混合診療」解禁を目論んでいる。健康保険がきかない診療と,健康保険の診療の混在を解禁しようというもの。健康保険がきかない部分は当然全額自己負担。そうなった場合,金持ちは自己負担できるだろうし,また高額な民間医療保険にも加入できるであろう。一方,お金を持たざる者はそれなりの診療しか受けられなくなる。まさに「自然にゆだね」,「努力し,稼いだ者のみが報われる」社会の登場である。
福祉,労働,都市計画など,規制緩和が進み,「自然に」格差が広がってきた。医療もそうなっていいのだろうか。我が国の,人々の,子孫の未来のためにも皆保険制度は守るべきだと思います。