違法状態の人体の不思議展サイト

標本の入手が,例えば処刑犯の遺体の横流しなど,非合法に行われているのではないかと,何かとお騒がしの噂がある「人体の不思議展」。展覧会開催時にはあちらこちらで広告を見かけるし,今後も開催予定ということで,ホームページも存在する。
いったい,どんな団体がこの見せ物を主催しているのかと見てみたが,どうもはっきりしません。
信販売のページ(http://www.jintai.co.jp/shopping.html)があるので見てみると,ここにも住所も何も出ていない。
実は,これ特定商取引法違反です。
経済産業省のページにもありますが
http://www.meti.go.jp/policy/consumer/contents4.html
http://www.meti.go.jp/policy/consumer/tokushoho/gaiyou/tsuuhan.htm

  • 事業者の氏名(名称)、住所、電話番号
  • 事業者が法人であって、電子情報処理組織を利用する方法により広告をする場合には、当該販売業者等代表者または通信販売に関する業務の責任者の氏名

を掲載する必要があります。
人体の不思議展のサイトの物販の申込み方法を見てみると,次のようなシステムになっています。
-購入したいと思っている人がメールを送る。
-それに対し,よくわからない主催者が返信メールを返す。
-売買契約が成立する。
-代金引換で送られてくる(ガイドブックの場合は先払い?,それもよくわからない)
こんな,どこの誰とも分からない,しかも不法行為を行っている人(個人か法人かもわからない)と売買契約を結ぼうという人がいるのも不思議だが,やはり,人体の不思議以上に,この主催者が不思議です。
なお,人体の不思議展の不思議については
http://mita.cocolog-nifty.com/mita/2004/06/post_4.html (ケータイAlternative)
http://fumo.cocolog-nifty.com/blog/2006/07/post_af34.html (ふもぶろぐ)
http://tsune-3.cocolog-nifty.com/non_title/2006/09/post_e65a.html (Non title(Tsuneishi) 無題(常石))
http://d.hatena.ne.jp/hagex/20060601 Hagex-day.info(←ここ詳しいです)
などでも取り上げられています。
ギュンター・フォン・ハーゲンスの下で,ともに働いていたことのある(4年ほど前に独立し,別会社をたちあげている)Sui Hongjin氏も含めて,少し見てみようと思います。

12月16日 追記

http://specialnotes.blog77.fc2.com/blog-entry-33.html 博士の独り言 支那発「人体不思議展」の怪
本年の仙台での開催中に内外からの批判もあり,日本医学会が後援から降りたようです。
http://tsune-3.cocolog-nifty.com/non_title/2006/09/post_f4bc.html
によれば,日本医師会も後援から降りるとの噂も。

そのほか,メモ。

  • 上記のhttp://d.hatena.ne.jp/hagex/20060601のサイトから
    養老氏のインタビュー(週刊現代2006年5月22日号)によると(株)日本アナトミー研究所のスタッフ安宅克洋が中心人物との話も。1998年にハーゲンス博士が安宅氏を訴える。安宅氏は中国から、怪しい標本を借りてきて独自に不思議展を開催するとの流れのこと。
  • 株式会社マクローズ(前 (株)マリブインターナショナル)代表取締役の山道良生が展示会のプロデューサーであるという。http://www.jintai.co.jp/kisha.htmlに山道氏の写真も。
  • http://www.medissue.co.jp/ (株)メディイシュ 1999年7月11日設立 代表取締役社長 北村勝美
     人体の不思議展関連書籍発行
  • 日本アナトミー研究所と漆畑光裕((株)インプットビジョン)の関係は?

(株)インプットビジョン(1981年11月4日設立 代表取締役社長 北村勝美)と(株)メディイシュの関係は?

(株)インプットビジョン 港区麻布永坂町1番地 麻布パークサイドビル5階 03-3505-6340 代表取締役社長 北村勝美
インプットビジョンはテレビ朝日の元社員の加藤秀之による架空発注に協力したことがある。加藤秀之は2006年9月29日懲戒解雇。元は皇達也(テレ朝の天皇と呼ばれていた)の一の子分だったとも。
(株)マクローズ Macrocosm Co,.LTD.という表記も。jintai.co.jpのドメインの登録はマクローズが行っている「。登録担当者はマクローズの佐藤雄大(yuta)氏。佐藤氏のメールアドレスはマクローズの前身のマリブインターナショナルを反映してかmalibu-net.co.jpとなっている。
malibu-net.co.jpのドメインの登録は株式会社マリブ。登録担当者は山道良生氏。

後援名義等について 2007年1月28日追記

日本医学会が後援から降りたようですと書きましたが,正確にはまだ降りていないようです。
常石先生のページの10月5日分にも日本医学会が今年度一杯後援を続けるという記事がありました。
また,直接の情報ではありませんが,日本歯科医学会で,2006年10月16日に行われた第6回常任理事会報告書(pdfファイル)には,次のように書かれています。

3.「人体の不思議展」への後援名義貸与について
住友総務理事から、標記について諮られ、協議の結果、日本医学会と足並みを揃え、本年度は承認するが、次年度は後援名義を貸与しないことを確認した。

2008年10月24日追記 その後の経緯

明日,2008年10月25日から2009年3月1日まで「人体の不思議展」が川崎市で店を開くようです(主催:人体の不思議展実行委員会,総合運営・企画:(株)マクローズ)。それに対する反応も当然あります。
日本保険医団体連合会のページから

人体の不思議展」の開催中止を求める
                        2008年10月9日
                        全国保険医団体連合会
                        会長 住江憲勇

人体の不思議展」は、地方の新聞社などマスコミ関係の主催により、これまで全国各地で開かれ、10月25日より神奈川県川崎市での開催が予定されている。「人体の不思議展」では、プラストミックと呼ばれる技術で防腐処置を施した実物の人体十数体を使い、全身の皮を剥がれた状態で立っていたり、各臓器毎にバラバラにされ展示されている。
この展示については、これまでも、多くの団体から問題視する声が起こっており、各地で県や市、教育委員会、医師会、歯科医師会などが後援団体を降りるという状況も生まれている。現に、日本医師会日本歯科医師会日本看護協会等は後援を取り止めている。
標本はすべて国内法の適用を受けない中国人のものである。仮に、日本の国民が医学教育用に献体の意思を示しても、こうした標本化と展示は「死体解剖保存法」と「医学及び歯学の教育のための献体に関する法律」により実質的に不可能である。しかも、献体が本当にインフォームド・コンセントを経たものかどうか不明確で、国際的にも人道上大きな問題を有している。
死後遺体であっても、人間としての尊厳が守られ丁重な扱いを受けるのが当然である。展示は、献体という故人の奇特な意志を踏みにじる冒涜であり、ましてやコマーシャルベースに乗せることは非人間的、反人権的行為である。
また、多くは自治体や教育委員会が後援しているため、教育的な展示と思われているが、人体の有機性・複雑性を学ぼうとする若い人々にはむしろ有害でしかない。単なる狭義の学問的欲求や、軍部、国家権力によって医学、医療にとっての倫理が如何に歪曲されるかは、歴史的な教訓である。
このように、模型ではなく本物の人間の死体を標本として一般公開している「人体の不思議展」は、倫理上、教育上、看過できない大きな問題点を有している。本会は、いのちと健康を守る医師、歯科医師の団体として、川崎での「人体の不思議展」の開催中止を求めるものである。

今回,共催も,後援も見あたらなくなりましたね。

関連記事も追記
http://abcnews.go.com/Blotter/story?id=4291334&page=1 (米国:abcニュース,2008年2月14日)
http://abcnews.go.com/Blotter/story?id=4296982&page=1 (米国:abcニュース,2008年2月15日)
http://en.wikipedia.org/wiki/BODIES..._The_Exhibition (wikipedia:BODIES... The Exhibition)
http://www.oag.state.ny.us/media_center/2008/may/may29a_08.html (NY州司法長官の声明,2008年5月29日)
http://www.prxi.com/nycrefunds/ (主催者によるNYでの展示会の料金返還案内)

これらの関連記事について,米国在住の岩谷さんが日本語訳をつけて紹介しています。→こちらなど。とても情報量が多く,参考になるサイトです。

2009年1月23日追記

2009年1月23日のエントリーに沖縄展の件と,これまでの(新)人体の不思議展の後援等の状況をまとめてみました。
また,本ブログでの「人体の不思議展」に関するエントリーはこちら