水平のふるさとに生まれて他

水平のふるさとに生まれて−部落解放・人権運動50年
  • 著者:川口正志
  • 発行:(財)奈良 人権・部落解放研究会
  • 発行日:2006/3/22

部落解放同盟奈良県連委員長の川口氏の本。以前組織問題があった奈良県連で,もう一人の当事者の山下力氏による「被差別部落のわが半生」は以前読んだことがありましたが。

被差別部落のわが半生 (平凡社新書)被差別部落のわが半生 (平凡社新書)
山下 力

平凡社 2004-11
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山下氏のものから地に根ざした具体的な運動論があまり見えてこなかったので,むしろ川口氏の運動論の方がわかりやすいですね。また,今日の社会の中で,当面の視座のなかで人権を守るという点でも,川口氏の方が適していると思います。
水平社博物館には,以前,大阪出張の折りに,午後時間を見つけて行ったことがあります。御所から柏原,水平社歴史館(当時の名称),嗛間丘(ほうまがおか),燕神社,バスに乗って神武天皇陵,大久保,ちょっと歩いて大福まで足を伸ばしました。自分自身も,水平社歴史館は行政からお金が出ていると思っていましたが,川口氏の本によると行政の補助金は一銭ももらっていないとのこと。誤解していました。

ワーキング・プア

ワーキング・プア―アメリカの下層社会ワーキング・プア―アメリカの下層社会
デイヴィッド K.シプラー 森岡 孝二

岩波書店 2007-02
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アメリカの貧困層の話。もがいてももがいても,さまざまな要因が重なり合い,出口の見えないワーキングプア
本自体は,密度が濃く,合間合間に読んでいたら1週間以上,かかりました。

最終章から
「貧しい人々は反撃に出ていない。収入が低くなるほど投票率は低くなる。2000年の大統領選挙では」「世帯収入が75000ドル以上の人たちの4分の3が投票し,年収50000ドルから75000ドルでは69%,年収10000ドル以下の世帯では,はるかに下がってわずか38%であった。」
低所得者またはそれに近い人々は,キャスティング・ボートを握る可能性がある」「もし貧困の淵で働く人々が(政党に)目に見える存在になったら・・・・・」
「(中間層でも欺瞞が投票行動を歪める。アメリカ人の(賃金労働者のうち)19%は,(自分が)賃金労働者のトップ1%に入っていると考え,次の20%は,将来(自分が)そうなると思っている」「トップ1%に有利な政策を(民主党の)ゴア氏が激しく攻撃した場合,まさしく39%ものアメリカ人が,ゴアは自分のことをねらい打ちにしている,と考えている」
「国家は,ただ自由を守るためだけに存在しているのではない。国家は,弱者を守るためにも存在している。」「『幸福の追求』を促進するために存在している」

夢見る黄金地球儀

夢見る黄金地球儀 (ミステリ・フロンティア 38)夢見る黄金地球儀 (ミステリ・フロンティア 38)
海堂 尊

東京創元社 2007-10
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海堂さんのサービス精神の高さはわかりますが,ナイチンゲールの沈黙の浜田さんのあの扱いはないでしょうよ。

ジェネラル・ルージュの凱旋

ジェネラル・ルージュの凱旋ジェネラル・ルージュの凱旋
海堂 尊

宝島社 2007-04-07
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2007年5月2日のエントリーで触れたナイチンゲールの沈黙と同時並行的に進んだお話。スピーディでテンポが良く,面白く読めます。
 これを読むと,もう一度「ナイチンゲールの沈黙」も読みたくはなりますが,あちらは,やはりもう一つだったんですよね。
ジェネラル・ルージュの凱旋」の次に「螺鈿迷宮」(2007年8月11日のエントリー)が来ます。逆の順番で読んでしまいました。
順番通りに読んでいたら,「螺鈿迷宮」を読んだときに,最初は怪しげに見えた姫宮の正体も,最初からわかってしまっていたので,それも善し悪しですが。

監査難民

監査難民 (講談社BIZ)監査難民 (講談社BIZ)
種村 大基

講談社 2007-09-26
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カネボウ事件発覚あたりから,今年のみすず監査法人(旧中央青山)の解散まで。
今日の監査法人の状況がわかりやすく伝わる本。
「監査人が,被監査会社の経営者との間で契約を締結し,報酬が経営者から監査人に支払われる」というインセンティブのねじれは,法,証券取引所のルール等,強制的な制度で何とかしなければならない問題。
それにしても,中央青山に課せられた厳しい行政処分は,監査法人によるクライアントの積極的な選別という(ある意味,非常に良い方向の)副産物を生み出した。
本日記の2007年3月4日の記事の6月12日追記分にも書いたように,監査法人から切られた菱和ライフクリエイトのように,監査難民が生まれたわけである。
ちなみに,本書の「主人公」の奥山章雄は,公認会計士協会会長時代に,金融担当省・竹中平蔵の諮問機関「金融問題タスクフォース」のメンバーとして金融機関の不良債権処理を押し進めた人物,すなわち竹中ブレーンの一人とのこと。

全記録炭鉱

全記録炭鉱全記録炭鉱
鎌田 慧

創森社 2007-07

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ニート」って言うな!

「ニート」って言うな! (光文社新書)「ニート」って言うな! (光文社新書)
本田 由紀 内藤 朝雄 後藤 和智

光文社 2006-01-17
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アフターマン 人類滅亡後の地球を支配する動物世界

アフターマン 人類滅亡後の地球を支配する動物世界アフターマン 人類滅亡後の地球を支配する動物世界
ドゥーガル・ディクソン 今泉 吉典

ダイヤモンド社 2004-07-09
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安中鉱害 農民闘争40年の証言

安中鉱害―農民闘争40年の証言 (1975年)安中鉱害―農民闘争40年の証言 (1975年)
高田 新太郎

御茶の水書房 1975

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ふたたび緑の大地を 鉱害とたたかう安中の農民たち

ふたたび緑の大地を―鉱害とたたかう安中の農民たち (1981年)ふたたび緑の大地を―鉱害とたたかう安中の農民たち (1981年)
浦野 文子

朝日新聞社 1981-07

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身近な視点で,ノベライズした感のある記録。地裁判決前までの被害者の動きと,東邦亜鉛の欺瞞の歴史。

安中 大地のいのちをいつくしんできた人びと 安中の農民、五〇年の証言

安中公害裁判原告団平凡社,1988
浦野文子の本の後,1987年まで整理されている。簡単ではあるが,よくまとまった記録集。
一部勝訴の前橋地裁控訴審の和解交渉−公害防止協定の交渉。公害防止協定の調印と控訴審和解(1986.9.22)。
訴状の受け取りを拒否する前橋地方裁判所(1972.3.31 岩野徹所長,千代崎昇一事務局次長,植村秀三裁判官ら)。
植村裁判長は,訴状受取拒否,訴状救助申立の全員却下,原告の入廷拒否,被害地の検証の拒否などの不公正な訴訟指揮等を続ける。
 原告は裁判官忌避の申し立てをするが,却下。ただし,忌避申立却下決定の中で「裁判官の公正に対する不信感が単に裁判官の性格,能力,思想傾向などの一般的資質に発する言動,態度に由来するものならば,内容によっては,当該裁判官に対する弾劾の問題が生じる」と,別な裁判官が植村秀三裁判官について言及。
 なお,忌避申立理由の証拠として提出された陳述書によると「原告代理人がいくら説明をもとめても発言をさせないで,裁判官が一人でまくしたてる有様で,冷静さを欠いた感情まるだしの裁判官らしからぬ態度にまったくおどろいてしまいました。」「原告代理人が発言しようとするとこれをさえぎり,発言させるよう求めると,『裁判官には介入権がある』と開き直り,裁判官自ら絶え間ない弁説でまくしたて,威圧せんとする態度を示した」「大声で怒鳴り,原告弁護団を恫喝するなど,冷静で公平でなければならない裁判官の資質にもとる行為を法廷の場で平然とおこなってきました。」「原告側弁護士が話している最中にもかかわらず,関係のない自分の意見を強引に話し始めるなど,裁判官として最も大切な,人の意見を聴くという態度が全く欠如している。」などの有様だったよう。