指定管理者の管理運営の評価について−みずほ情報総研調査から

 指定管理者制度については,博物館,植物園等の事例を中心に本ブログでも多々触れているところである。特に,施設の管理を指定管理者に委ねた場合に,公共サービスの質がどれだけ維持できるのかを見てきたところである。
 地方自治体が,施設の管理に関し,どのようにガバナンスを行えば,当該施設での公共サービスの質を維持を担保できるのか。また,雇用・賃金を含め,地域の公共の福祉を守れるのか,試行錯誤が続いている。
 このたび,経営シンクタンクみずほ情報総研株式会社が,全国の地方自治体に対して「指定管理者のモニタリングに関するアンケート」調査を行ったということで,その調査レポートが出ていた。
 調査の目的は,地方自治体の関心が,指定管理者制度の導入目的を達成するためにいかにモニタリング・評価を実施していくかに移っていくとの考えのもと,モニタリングに焦点をあてたものとなっている。
 結果の概要は次の通り。

・モニタリング・評価について、「必要性を強く感じる」としている自治体が317団体(29.8%)、「ある程度、必要性を感じる」としている自治体が 623団体(58.6%)となっており、両方で全体の9割近くを占めている。新制度導入により新たに管理運営主体になることが認められた民間企業に対しては、従来の外郭団体等に対する職員派遣や予算を通じたガバナンスは機能せず、協定に基づく一種の契約的関係による統制が求められていることが、モニタリング・評価の必要性をより強く認識させる一つの要因になっているものと考えられる。

・モニタリング・評価について全庁的立場からこれを検討・推進する担当部署が「ある」とした自治体は243団体(22.8%)、「ない」とした自治体は 787団体(74.0%)となっている。また、モニタリング・評価に関する統一した指針等を策定しているとした自治体は28団体(2.6%)、「策定中」と回答した自治体は18団体(1.7%)、「今後、策定する予定」と回答した自治体は85団体(8.0%)にとどまっている。モニタリング・評価の必要性を強く感じる一方で、組織的に取り組んでいる自治体はまだ少数であった。

・モニタリング・評価の課題としては、「評価基準や指標の作成が難しい」(713団体、67.0%)、「モニタリング・評価自体の負担が大きい」(335 団体、31.5%)、「モニタリング・評価の手順・実施方法がわからない」(295団体、27.7%)などが指摘されている。

もう少し詳しくは,みずほ総研のページhttp://www.mizuho-ir.co.jp/research/shitei061221.html
 モニタリング・評価については,必要性を感じながら,各担当部局のみで検討,または試行錯誤している現状が浮かび上がってくる。
 地方自治体全体としての指針の,または,施設の性格に応じたネーションワイドな基本指針の議論が必要かもしれない。
 しかし,かといって,サービスの質の評価を定量的に「のみ」図ろうとするととんでもないことが起きる。
http://d.hatena.ne.jp/ironsand/20061118#p1で,全国博物館大会において行われた「評価」についてのシンポジウムに触れた際,『幻の「普遍的な」評価のためのツールを濫用してしまうと,「普遍的な」理念・目標・計画を持つ博物館が生まれかねません。』と書いたとおりです。
 各博物館ごとに,何を保存し,何を展示し,どんな活動をするのか,博物館の運営側の理念,地域住民のニーズや期待が異なる中で,「普遍的な評価指標」を用いて定量的に評価を行い続けると,全国に金太郎飴のように同様な博物館ができていくばかり。
 図書館であれば,博物館ほどのバラエティーは必要ないと思われがちですが,やはり図書館ごとに運営側,住民のニーズ・期待が異なることで,博物館は多様化し,活性化する。
もし,「貸出冊数」という「評価指標」を用いて「定量的に」評価しようとすると,どこもかしこも,無料の貸本屋さんになってしまうだろう。
 そんな砂漠のような図書館文化は,人々が求めるものではないと思うのは私だろうか。

 思考訓練としては面白いんですけれどね。