横浜市の命名権問題続報

7月12日の読売新聞神奈川版の記事から

命名権売却に市民意見 市、手続き指針策定へ
横浜市は、施設運営の財源確保策として導入を進めている命名権ネーミングライツ)の売却について、事前に市民や利用者から意見を聞くなどの基本的な手続きを定めた独自の指針を策定することを決めた。市民の反発で売却の検討を断念した経緯などを踏まえたもので、自治体が命名権売却の指針を定めるのは全国でも珍しいという。
 市共創推進事業本部によると、指針には、命名権売却を検討する施設について、市民アンケートなどを実施して意見や賛否を聞くことを盛り込む。さらに、企業が売却対象でない施設の命名権購入を希望する場合、同本部が相談窓口になることも明記する。また、売却先企業については、現在、市の施設やホームページなどに有料で広告を掲載する際の基準に準じ、風俗業や消費者金融などを除外しているが、新たな規定を設けることも検討する。
 指針は、本部内での検討を経て秋をめどに策定し、市民に公表する方針。
同市の命名権売却は、2004年の「日産スタジアム」(横浜国際総合競技場港北区)が最初で、以後、「ニッパツ三ツ沢球技場」(三ツ沢公園球技場神奈川区)、「はまぎんこども宇宙科学館」(横浜こども科学館磯子区)と導入が進められている。
 一方で、「横浜開港資料館」(中区)と「市歴史博物館」(都筑区)の命名権売却を検討したが、「公共性が高く、企業名を冠するべきでない」などと資料の寄贈者らから反発が相次ぎ、今年2月に断念している。昨年12月から購入企業を募集している「野毛山動物園」(西区)についても、来園者から「『野毛山』の名を残してほしい」との声が強く、企業に「野毛山」を残すことを希望している。
 市議会からも「売却を市だけで決めるのではなく、幅広く市民や議会の意見を聞くべきだ」との声が上がっていた。

横浜市が博物館等機関の施設にネーミングライツ(命名権)を導入しようとする件については,この日記でも2007年12月12日の「博物館にネーミングライツ?」(追記有り)や2008年3月5日の「野毛山動物園の命名権(ネーミングライツ)販売の状況」でも触れたところです。
「愛称権」というべき「権利」を行政が作り出し,議会や市民に諮ることなく売却するという公共施設のネーミングライツは,議会で議決された正式名称を軽視するものであるとともに,寄付や寄贈・その他の市民の支援を排除しかねないという問題を抱えています。
また,博物館は市民からの支援をもとに,資料を収集し,価値を創出し,発信をする組織が,施設と一体的に活動を行っているところですから,主に単なる施設として認知されている競技場や一部文化ホールとは事情が異なります。
施設に「はまぎんこども宇宙科学館」という名称が着いていても,そこで行われる様々な活動,例えば子どもへの教育,天文に関する研究と発表などは横浜市民の「横浜こども科学館」という機関としての活動であり,決して「はまぎん・・・」としての活動ではないはずです。しかし,結局,施設の名称だけでなく,教育活動・研究活動も,市民のものという性格が排除され,「はまぎん」による活動として誤解を受ける状況を招きかねません。
今回の横浜市の方針については一定の評価をしますが,野毛山動物園命名権の募集については,公共財からの市民の排除を防ぐためにも,少なくても,指針策定まで停止して欲しいものです。

10月3日追記

横浜市命名権提案を受け付けるという制度を発足。詳細はこちら

いいかげん,野毛山動物園の公募は引っ込めなければ,論理に一貫性がなくなるよ。