栃木県子ども総合科学館の愛称命名権

博物館に類似した施設の愛称命名権については,2007年12月12日の記事「博物館にネーミングライツ?」,2008年3月5日の記事「野毛山動物園の命名権(ネーミングライツ)販売の状況」,2008年7月13日の記事「横浜市の命名権問題続報」,2009年7月20日の記事「厚木市子ども科学館が命名権導入」,2010年12月9日の記事「野毛山動物園のネーミングライツ問題」で触れてきました。
寄贈等も含め,より住民からの支援が大事な博物館への命名権の導入はあまり進んでいませんが,科学館についてはいくつか導入事例があります。特に栃木県子ども総合科学館は,約5年前の記事で触れたように,かなり早い導入事例でした。栃木県のページにもあるように,5年間,2008年4月から2013年3月まで,すなわち来年3月末までの期間の契約で,グランディハウス株式会社が命名権を取得していました。
この栃木県子ども総合科学館の命名権が本日ニュースになっています。12月13日の産経新聞栃木版の記事から

県施設ネーミングライツ 「子ども科学館」見送り
県が募集していた県施設のネーミングライツパートナーで、県行政改革推進室は12日、県子ども総合科学館(宇都宮市)の選定を見送ったことを明らかにした。同館はこれまで不動産会社のグランディハウス(同市)をパートナーとして「わくわくグランディ科学ランド」の名称を使ってきたが、来年4月から元の名称に戻る。
同室によると、6日の選定委員会で応募した1社の価格条件を審査した結果、県の希望価格1800万円を大きく下回り、選定を見送ったとしている。また、県とちぎわんぱく公園(壬生町)でも、応募した1社の提示額と県の希望価格1700万円との価格差が大きく、選定を見送った。
ネーミングライツパートナーは12施設で募集し、8施設の募集は締め切った。8施設中2施設に応募があり選定委員会で審査した。
県総合文化センター(宇都宮市、希望価格4千万円)▽県立宇都宮産業展示館(同市、同1700万円)▽県なかがわ水遊園(大田原市、同1600万円)▽とちぎ花センター(岩舟町、同950万円)−の4施設はパートナーを募集中。

現在のグランディハウス株式会社との契約は年額2000万円。県の希望価格,最低落札価格ともいうべきものでしょうが,1800万円。応募したのがグランティハウス社だったのかどうか,金額にどれぐらいの開きがあったのかは出ていません。もし,グランディハウス社であれば,看板の取り替え等にかかる事務経費は少なくてすんだのでしょうが,いずれにせよ希望価格に満たなかったとのこと。
県の公式発表資料にも,申し込みが1者だったこと,「審査項目「価格」において、本県の希望価格との乖離が大きかったため、選定」しなかったことしか書かれていません。
希望価格がどのように算定されているのかわかりませんが,寄付ではなく,範囲を明確にした契約上の債権ですので,最低価格はあって然るべきでしょう。
しかし,まずそのまえに,愛称命名権を設定し販売したことについての評価が行われ,公表されて然るべきではなかったかと思います。
子ども総合科学館は (財)とちぎ未来づくり財団が指定管理者になっています。施設の設置者であり,ネーミングライツの販売主体となった県は,運営を担っている(財)とちぎ未来づくり財団からの意見聴取も含めて,ぜひネーミングライツについての評価を今からでもしていただきたいと思います。

同日追記

栃木県議会の議事録を見てみると,2008年度のネーミングライツ販売収益は,科学館の宇宙の科学、地球の科学コーナーの展示更新経費に用いられる予定と説明がなされています。また2012年度には屋外利用者の利便性を高めるための第2ビッグパラソルの新設の経費に用いられると説明がなされていますので,2009〜2011の各年度でも,科学館の経費に使われたと推定することはできるかと思います。
県議会の議事録では,県議さん方の意見からは,ネーミングライツ推進の意見しか見えてきません。
名称が分かりづらいことや,名称を1企業が独占することにより広く支援を求めることが困難となるなどのデメリットと,毎年確実に命名権収入があることのメリット。子ども科学館ではどうだったのか,率直な評価を知りたいところです。

同日追記 千葉市美浜区の花の美術館のネーミングライツ

11月8日の毎日新聞千葉版の記事から

ネーミングライツ:「花の美術館」命名権、最終日に複数企業応募 千葉市“再挑戦”実る
千葉市が、昨年「応募企業ゼロ」に終わり、今年も再募集をかけていた同市美浜区の「花の美術館」の命名権ネーミングライツ)のスポンサー募集が7日締め切られ、複数企業から応募があったことが分かった。今年は企業への支援策など「万全の体制」で臨んだ同市は、待ちに待った応募企業が現れたことにほっと胸をなで下ろしている。
同美術館の命名権募集は昨年に続き2回目。昨年は隣接の「稲毛海浜公園プール」の命名権とセットで年間300万円以上(3年以上)で販売したが、応募はゼロだった。
「費用対効果が得られるのか疑問」などという企業からの厳しい指摘を受け、今年は、名称変更に伴う道路案内標識など看板設置費約120万円を市が負担。市のホームページなどに企業広告を無料で掲載できるようにしたほか、施設無料招待券を年間1000枚提供するなど、多くの特典を設けて“再挑戦”した。
応募締め切り時刻(午後5時)まで3時間を切っても応募企業は1件もなく、職員のやきもきは続いたが、午後3時過ぎに応募第1号となる企業がついに現れ、締め切り時刻までには複数企業からの応募があったという。市公園管理課は「今年はきっと大丈夫だという手応えがあった。信じて待っていてよかった」と安心した様子だった。【斎川瞳】

まあ,美術館と名が付いていますが,公園内の観光施設という意味合いの方が強い施設ではあります。