女ぎらい−ニッポンのミソジニー

女ぎらい――ニッポンのミソジニー

女ぎらい――ニッポンのミソジニー
定価:¥ 1,575
レビュー平均:4.34.3点 (20人がレビュー投稿)
5.05.0点 ミソジニーからの解放
5.05.0点 奥深い問題に冴えた分析が光る
5.05.0点 うすうす思ってたことを容赦なく明らかに。
出版日:2010-10-06
出版社:紀伊國屋書店
作者:上野 千鶴子
ページ数:288
by amazon通販最速検索 at 2011/05/14
人類学の成果も使いながら現代日本社会を捉えています。昔の著作を著した時点では,もう少し人類学よりのところがあって,分析は興味深いものの,学問から離れ運動論に向かうにはなかなか辛いところがありましたが,最近は,現代社会,現代日本社会の部分をより明らかにしてきていて,これは運動論への活用も見込まれるかもしれません。
 男としては,克服,超越されるべき部分がたくさんありますが。。。
 特に,男からみた「第三の性」が,社会的な男性に与える影響など,興味深く。 ・・・そして,下部構造がほとんど変わらない中で,かなり大きな変化の到来も予想されるところに,期待と不安も感じられます。
妻子のいる人間としては,本書の次の部分にも,ハッとしています。ここだけ取り出すと誤読される不安も無いわけではありませんが,興味深いので一部引用。

フーコーの四つの「抑圧仮説」の背後には,「性の私秘化(Privatization)」という機序が横たわっている。性を公的世界から放逐し,秘匿し,私領域,すなわち家族へと囲い込むこと。家族がいちじるしく性的な存在になったのはそれ以降のことである。ただし急いで付け加えておかなければならないのは,私秘化によって性は抑圧されたのではなく,特権化されて人格と結びついたことである。フーコーが指摘するとおり,「抑圧仮説」とは字義どおりの「抑圧」を意味するわけではなく,「それについて語れ」という「告発」という制度を背後にともなっていた。禁止と命令は一組のセットとして性を特権化し,「どんな性行為をするか」が,その人の人格の指標となるに至った。
性が私秘化されて以来,「プライバシーに関わること」と言えば,そのまま「性的であること」の代名詞となった。家族が「性的家族」となり,夫婦が性的絆の代名詞となり,婚姻が性行為の社会的なライセンスになり,「初夜」が性関係の開始を告げ,セックスレスが夫婦関係の「病理」となる・・・・という今日知られている結婚と夫婦に関する「常識」は,このようにして成立した。
「プライバシー」の語源はラテン語の「剥奪された」からきている。公的権利を剥奪された領域,転じて公権力の介入を拒否する領域が私領域だが,その領域はそのまま公権力の届かないブラックボックス,公法の立ち入れない「無法地帯」となった(上野,2006a,『生き延びるための思想」など)。こうして,家父長の専権的支配のもとに妻や子どもが従属する「家族の闇」が成立したことは近代家族史に詳しい。かくしてプライバシーとは,強者にとっては公権力による掣肘のない自由な支配を,弱者にとっては第三者の介入や保護のない恐怖と服従の場になったのである。
 プライバシーはだれを守るのか。強者を,というのが,セクハラやDVの被害者,性的マイノリティの答えだった。


釈迦内柩唄

釈迦内柩唄
定価:¥ 1,575
出版日:2007-09
出版社:新日本出版社
作者:水上 勉
ページ数:157
by amazon通販最速検索 at 2011/05/14
戯曲。
 花岡鉱山の朝鮮人労働者と隠亡が取り上げられています。お勧め。
 構成としては,戯曲の他,作者による小文「『釈迦内柩唄』をなぜ書いたか。」「そして,なぜいま花岡なのか。」など。演出ノート/『釈迦内柩唄』の上演に想う/秋田県につたわるかぞえ歌ならびに花づくし歌/花岡事件を中心とする中国人・朝鮮人強制連行事件関係資料など。

ルポ 若者ホームレス

ルポ 若者ホームレス (ちくま新書)
定価:¥ 798
レビュー平均:4.54.5点 (15人がレビュー投稿)
5.05.0点 中身の充実した力作です
5.05.0点 丁寧な取材で全体像を浮き彫りに
5.05.0点 衝撃作 -あっけない転落への道-
出版社:筑摩書房
作者:飯島 裕子 ビッグイシュー基金
ページ数:229
by amazon通販最速検索 at 2011/05/14
一番最後の話もせつない。

夏目家順路

夏目家順路
定価:¥ 1,575
レビュー平均:3.03.0点 (2人がレビュー投稿)
3.03.0点 さまざまな思いがあふれる
3.03.0点 いやがおうでもつづく
出版社:文藝春秋
作者:朝倉 かすみ
ページ数:208
by amazon通販最速検索 at 2011/05/14
朝倉かすみさんの本は,やはり面白い。 何となく,自分から少し離れたところで,人生像を眺めてしまうような本です。
 本書では,故人の生き方と,お葬式にきた,少し親しい親戚の生き方を,ちょっと傍観者的に見ているような。

シノダ!鏡の中の秘密の池

シノダ!鏡の中の秘密の池
定価:¥ 1,365
出版日:2006-11
出版社:偕成社
作者:富安 陽子
ページ数:269
by amazon通販最速検索 at 2011/05/14
児童書。信田の森の狐に,もとの題材を借りた本。 伝承なり,昔話というのは,長い年月にさらされた強さを持っていて,だからアレンジにも耐えられるのだろうなと思います。 面白いシリーズです。本書はシリーズの中ではイマイチの部類か。

そのほか,まあ良かった本として『偉いぞ!立ち食いそば』,『線路を楽しむ鉄道学』,『バーナード・ショー名作集』の中から「ピグマリオン」,『狼と香辛料(14)』など。