国立文化施設等に関する検討会の議論から
9月24日から,文化庁で「国立文化施設等に関する検討会」が開催されています。
趣旨は「独立行政法人制度により運営されている国立美術館、国立文化財機構、日本芸術文化振興会及び国立科学博物館について、独立行政法人化後の現状と課題について整理するとともに、政府全体の独立行政法人制度の見直しに関する議論を踏まえつつ、今後の望ましい運営の在り方について検討する。 」というもの。政府全体の独立行政法人制度の見直しに関する議論というのは行政刷新会議の事業仕分けのこと。事業仕分けに対応した動きと思われます。
今,ホームページには第1回目の配付資料と議事要旨,第2回目の配付資料が掲載されているところです。
第2回目の配付資料の中に「主な論点に対する委員の意見」が出ていますが,ちょっと見ただけでもなかなか踏み込んだ意見の様子。国立の博物館だけでなく,公立や私立の博物館も元気になるようなことを文化庁が主導でやってくれるとありがたいけれども。
以下,委員の意見からめぼしいものを。
- 指定管理者制度導入による自治体の文化施設の疲弊は、自治体の財政難や市町村合併の影響などと相まって、目に余るものがある。このような公立の文化施設のおかれている困難な状況は、国の制度設計に起因するところが大きい。
- 個別法がある図書館、博物館・美術館でさえ、地方自治法の規定の改定により、指定管理者制度が導入されている(個別法は一般法より優位にあるのではなかったか)。「劇場法」のない劇場については、劇場概念が未成熟であり、「文化会館」「市民会館」などと同列に見られるという現実もあり、さらに状況は悪い。
- 指定管理者制度は文化施設にはなじまないということを強調し、個別法のある分野については見直しをかけるなどの強い措置が必要である。また、現在の地方独立行政法人法では文化施設については独立行政法人化することは認められておらず、大阪市の「特区」申請も却下された。地方独立行政法人法を改正し文化施設を独立行政法人として認可する道を開く必要がある。
- 地方自治法の改定の問題点は公の施設をひとからげにして「直営または(期間の定めのある)指定管理者制度の導入」の二者択一にしたところにある。委託制度の復活や独立行政法人化など選択肢をふやし自治体の「自治」にゆだねるべきであろう。
- 各館の「増収部分」の一翼を担う特別展収入は、展覧会経費の大半をマスコミが負担し、国がリスクを負わず、入場料収入の一部を会場費のような形で一律に取る仕組み。明治以降続いてきた、この「究極の民活」システムは、リーマン・ショック後の経済状況を考えると、今後難しくなってくる局面も考えられる。欧米とは全く違うこの「日本型」システムについても、根本的問題として、今後検討していく必要があるのではないだろうか。
- (登録制度が)社会に求められる博物館として実質的な活動の量・質を審査する仕組みとなっていない。
- (登録制度が)登録博物館としての水準の維持を十分に担保する制度になっていない。
- 独立行政法人は自己収入を得ることを求められている。博物館法(第23条)では、原則とはいえ、入館無料を規定している。この矛盾をどう解消するか?
- 「劇場法」を制定する動き(がある)。→その構想では、劇場法の中に国立劇場を明確に位置付けるという方向で検討がなされている。→ この並びでいけば、博物館法にも国立博物館を位置づけるべきではないか?
- 独立行政法人のしくみを含めた、国立文化施設としてのあり方、国として担うべき役割を明確に打ち出していってはどうか。 その際、指定管理者制度で疲弊している地方公共団体の文化施設に対しても、行き過ぎた効率化、市場主義から方向転換を図れるよう、何らかのメッセージを含むものとしたい。
国立博物館も博物館法の対象にすべきと思います。入館料は原則無料化。公立博物館に対して法律で定めながら,国立は入館料を取るよというのがなにしろ今の日本国の文化施策なんですから。
10月22日追記
第1回の議事要旨から個人的にめぼしいものを挙げてみます。
加茂川国立美術館東京国立近代美術館長
博物館法では入館料無料が原則だが,例外の運用がなされており,その趣旨を踏まえ,より低廉な価格,できれば無料の対象者を拡大する形で多様かつ良質な鑑賞環境が確保されるべき。
なるべく無料にしたいと語られる東近美館長。
遠藤国立文化財機構理事
収入はあるが,公共施設として現行以上の入館料を取ることは難しく,また,収入は流行に左右(支配)される。
現行以上の入館料は実際上無理と語られる国立文化財機構理事。言い換えれば現行の入館料は是認されている。