博物館法改定等が衆議院文部科学委員会可決

5月16日のエントリーで博物館法改定等が衆議院文部科学委員会で審議に入ったことを書いたところでしたが,早速,5月23日の衆議院文部科学委員会にて,社会教育法等の一部を改正する法律案が賛成多数(日本共産党が反対,家庭教育への行政の関与が強まるのではないかとの懸念などが理由か)で原案の通り可決すべきものと決しています。また,あわせて,自由民主党民主党・無所属クラブ,公明党社会民主党市民連合の4派共同提案による附帯決議が起立総員で付することに決したところです。
なお,この附帯決議は政府及び関係者への特段の配慮を求めるものです。概略は次の通り(聞いてまとめたものなので正確ではありません)。

  • 一 社会教育施設における人材確保及びその在り方について,指定管理者制度導入による弊害にも十分配慮し,検討すること。その際,地域間格差を解消し,円滑な運営を行うことができるよう様々な支援に努めること。
  • 二 個人の学習成果が学校,社会教育施設,地域において行う教育活動として生かされるよう具体的な取組について支援に努めること。その際,自発的意志で行われる学習に対して,行政の介入とならないよう留意すること。
  • 三 各施設が自己評価を行い運営の改善を図るにあたっては評価の透明性,客観性を担保する観点から可能な限り外部の視点を入れた評価となるよう国がガイドラインを示す等適切な措置を講ずるとともにその評価結果について公表するよう努めること。
  • 四 各地方公共団体の取組に係る情報の収集・提供,様々な学習機会の提供の整備・充実やそれらを推進するための改善を図ること。
  • 五 地域における教育力の向上のため学校・家庭・地域等の関係者・機関の連携を推進し,各施設,資料,人材の相互利活用を図るとともに,多様な地域の課題に応じたネットワークの構築を推進すること。その際,重要な役割を果たすPTAについてその活動や運営の実態把握に努め学校支援地域本部事業における連携が進むよう十分配慮すること。
  • 六 社会教育主事,司書,学芸員は多様化・高度化する学習ニーズに対応できるよう専門的能力,知識等の取得について十分配慮すること。また,各資格取得者の能力が最大限有効に活用されるよう資格取得のための教育システムの改善,有資格者の雇用確保など,有資格者の活用方法について検討を進めること。
  • 七 社会教育委員の制度等を積極的に活用・活性化するとともに社会教育委員がその職責と役割を認識するような環境整備を図ること。

まあ,政治的な意味合いでの対決法案ではありませんから,動きは速いんでしょうけれども。
与党・野党共同提出の附帯決議については,なかなか判断しづらいものも入っています。
ここにいたるまでの具体的な質疑については,また国会会議録で確認してみたいと思います。

同日追記 専門「的」職員について

5月21日の衆議院文部科学委員会に於いて民主党の逢坂議員が,なぜ図書館法では「専門的職員」となっているのか,「専門職員」ではいけないのかと質問しております。
ご存じ,博物館法も同じ整理ですね。
これに対する政府参考人(生涯学習政策局長)の答弁によると「専門的職員」とは「高度な専門的知識・技能を有する(図書館の)スペシャリスト」という意味で,「専門職員」と全く同義であるとのこと。経緯としては先に制定された教育公務員特例法において「専門的教育職員」という用語が用いられていて,この例に倣ったのではないかとのこと。
ちなみに,その答弁に対し,逢坂議員は,同じ意味ならば「的」は取るようにぜひご検討いただきたいと。

5月28日追記 衆院本会議で賛成多数で可決。専門的職員に関する政府参考人の答弁及び附帯決議fix版

社会教育法等の一部を改正する法律案は5月27日に衆議院本会議で賛成多数で可決されています。参議院でも法律案自体は何ということもないんでしょうけれども,委員会でのやりとりは見ていきたいと思います。
さて,21日の衆院文部科学委員会の会議録が出ています。専門「的」職員に関する部分,正確に引用します。

○加茂川政府参考人 委員御指摘なさいましたように、図書館法の四条には専門的職員、的という言葉を使った職の規定があるわけでございます。ここで規定されております専門的職員とは、私どもの理解といたしましては、高度な専門的知識、技能を有する図書館のスペシャリストということを指しておると理解をしておりまして、専門的、すなわち高度な専門的知識、技能を有するという意味でございますので、言葉としては、的がなくてもいいではないかと委員からお話がございました、その専門職員と同じ意味であると理解をしております。
 ただ、法律の条文としてこの専門的職員という用語が使われました経緯を調べてみましたら、類似に、博物館法にも見られるわけでございますが、この図書館法よりも先に制定されてございます教育公務員特例法、これは昭和二十四年にできた法律でございますが、ここでも専門的教育職員という用語が用いられておりまして、法の整備としては、恐らくこの例に倣ったのではないかと思っております。
 的が入っておりますために、その専門性でありますとか専門職員として違ったものという意味ではなくて、中身としては同じもの、同じ専門性を持った職員を指しておるものと理解をいたしておるところでございます。

また,23日の会議録も出ていますので,可決された附帯決議を会議録から引用します。

社会教育法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

政府及び関係者は、本法の施行に当たり、次の事項について特段の配慮をすべきである。

  • 一 国民の生涯にわたる学習活動を支援し、学習需要の増加に応えていくため、公民館、図書館及び博物館等の社会教育施設における人材確保及びその在り方について、指定管理者制度の導入による弊害についても十分配慮し、検討すること。
     また、その際、各地方公共団体での取組における地域間格差を解消し、円滑な運営を行うことができるよう様々な支援に努めること。
  • 二 生涯学習・社会教育に係る個人の学習成果が、学校、社会教育施設その他地域において行う教育活動として生かされるよう、各個人の学習活動と地域社会の教育活動との循環につながるような具体的な取組について支援に努めること。
     また、その際、自発的意思で行われる学習に対して行政の介入とならないよう留意すること。
  • 三 公民館、図書館及び博物館が自らの運営状況に対する評価を行い、その結果に基づいて運営の改善を図るに当たっては、評価の透明性、客観性を確保する観点から、可能な限り外部の視点を入れた評価となるよう、国がガイドラインを示す等、適切な措置を講じるとともに、その評価結果について公表するよう努めること。
  • 四 生涯学習の振興、社会教育の推進に当たっては、各地方公共団体における取組に係る情報収集及びその提供を行うとともに、様々な生涯学習・社会教育のための機会の整備充実やこれらを推進するための改善等を図ること。
  • 五 地域における教育力の向上のため、学校、家庭、地域等の関係者・関係機関の連携を推進し、各施設資料の相互利用や人材の相互活用などを図るとともに、多様な地域の課題等に応じた機能を持つネットワークの構築を推進すること。
     なお、その際、学校、家庭、地域の連携を推進する上で重要な役割を果たすPTAについて、その活動や運営などの実態把握に努め、「学校支援地域本部事業」における連携が円滑に進むよう十分配慮すること。
  • 六 社会教育主事、司書及び学芸員については、多様化、高度化する国民の学習ニーズ等に十分対応できるよう、今後とも、それぞれの分野における専門的能力・知識等の習得について十分配慮すること。
     また、各資格取得者の能力が生涯学習・社会教育の分野において、最大限有効に活用されるよう、資格取得のための教育システムの改善、有資格者の雇用確保など、有資格者の活用方策について検討を進めること。
  • 七 社会教育の推進に当たっては、社会教育委員の制度等を積極的に活用・活性化するとともに、社会教育委員がその重要な職責と役割を十分に認識するような環境整備を図ること。
追記

6月3日に参議院文教科学委員会で審議,採決が行われ,6月4日に参議院本会議で採決が行われています。参議院での附帯決議等については6月3日のエントリーに記載してあります。