博物館の職員募集

博物館には学芸員とともに様々な業務を担当する職員がいる。
その学芸員の募集は考古学であるとか西洋美術,古生物等,担当の専門分野を明確化して募集されることが多く,また,しばしば必要条件(足きり)として学芸員資格(正確には学芸員となる資格)を取得(取得見込みを含む)している者という形で募集されることが多い。
最近は大学で学芸員資格をとる学生が多く,年間約1万人もの有資格者が生まれているそうだが,博物館の学芸員としての募集は少なく(1%程度か?),かつ専門分野が限られるため,学芸員として職を得るのは困難というより運任せの状態である(たとえ専門分野について修士,または博士を持っていても同様である)。
一方,学芸員以外の職員の募集が最近目立ってきたように思う。
公立博物館であれば,以前は学芸員以外の職員は一般職員の異動でまかなってきた。ところが最近は一般職員の異動ではなく,独自に博物館が採用をする例が増えているようである。
その要因としては,(1)財政の悪化に伴い,常勤の公務員数を減らし,パートタイム・非常勤を増やしてきていること,(2)指定管理者制度の導入に伴い,公務員でなく,施設を運営する企業や財団で募集をする例が増えてきたこと,(3)これは良いことでもあるが,博物館に対する評価が厳しくなり,博物館活動の活性化を目指して,教育や広報等の分野でより専門的な人材を求めることが増えていることなどがあげられる。
募集の時期は一般的な公務員の募集である夏〜秋が一つのピークであるが,翌年度計画が明らかとなる2月頃がもう一つのピークをなしている。
そういえば,国立科学博物館でもサイエンスコミュニケータ養成講座担当非常勤職員,広報担当非常勤職員,人類学担当研究官(任期付き)などを3月になって矢継ぎ早に募集している。http://www.kahaku.go.jp/about_us/job/index.html
募集情報については,いろいろな検索方法があるが,以前は2ちゃんねるの社会教育板にある博物館情報スレッドが情報量が多かった。最近はyondaroさんによる学芸員就職課http://yondaro.fc2web.com/掲示板が充実している。
ただ,非常勤や任期付きの募集が多いことについては,危惧感を抱く。博物館は標本を未来に残すことが最も重要な役割の一つである(様々な資料や現象が持つ価値を見つけ,何を保存するかを決めることとともにね。それに対して,教育や広報は,博物館の社会的役割からすると大きな活動ではあるが,標本を未来に伝えるための組織の存続を図るための「単なる」手段ととらえることもできる)。このような機関が任期付き職員をとるというのは自己否定に繋がりかねないと思う。3年とか5年の期間を区切られた指定管理者制度が抱える問題も同様である。
まあ,募集が増え,博物館に主体的にかかわろうという方が増えるのは喜ばしいことではあるんでしょうけれどね。