クジラに関するニュース

ヒゲ3トン宙に浮く 商業捕鯨時代の“遺産”

 商業捕鯨が禁止されて以来、貴重品となったシロナガスクジラなどのひげ約三トンが使い道がないまま、宙に浮いている。大阪市の会社経営者が知人から譲り受けたものだが、かつてはクジラのひげで作られていたものも、石油化学製品におきかわり、ひげ自体の使い道が少なくなっている。このため、いっこうに量が減らないうえ、保存に手間とコストがかかることもあり、最近は廃棄も考え始めたという。
 ひげはシロナガスのほか、ナガス、イワシの三種類がある。イワシクジラ以外は調査目的でも捕獲できず、そのひげがこれほど大量に保管されているのは珍しい。
 このひげは捕鯨が制限されていなかった時代、クジラ漁の出資者に土産として渡されたものといい、もともと鯨関連の文化団体の会長を務めていた知人が所有していた。
 極上とされるセミクジラのひげは人形浄瑠璃のからくりに使われることで有名。ナガスクジライワシクジラのひげも、さまざまな工芸品のほかつりざおなどの素材になるという。
 これまで、この経営者のもとには元来、くじらのひげで作られていた祇園祭の山ほこのかねをたたく「かねすり」三百六十本分の量の注文がきた。京都のしにせ扇店が制作した扇を人間国宝の歌舞伎役者が公演で使ったこともあった。古い資料でくじらのひげで作った扇が舞台で使われていた、とあったことから役者自ら要望したという。
 このほか、耳かきやネクタイピンなども独自に作って売っているが、全体の売り上げはわずかで倉庫のひげはいっこうに減らない。経営者は「貴重なものとは理解しているが、このままでは維持費がかかりすぎる。いい活用方法はないでしょうか」と困惑している。(産経新聞から一部改変)

海の中のことはまだまだわかっていないことが多く,今のままでの商業捕鯨の再開は,希少種に与える影響は大きい。
希少種でなくても,種の中での地理的に隔離されたグループ,その他のグループの減少を招くこともあり,種の遺伝的多様性を損なうことも考えられるだろう。
しかし,文楽など,さまざまな伝統文化にクジラのヒゲが使われるなど,食文化以外にも,さまざまな面で日本人はクジラを利用してきている。
少なくても,これらのヒゲは廃棄ではなく,何らかの活用を図ってもらいたいと思う。

イルカ・クジラに関する講座

http://www.kahaku.go.jp/event/student/
国立科学博物館で中学生高校生向けにイルカ・クジラに関する連続講演会。