朝日新聞に今更ながら博物館法改定に関する記事

8月30日の朝日新聞の記事から

博物館法改正、期待外れ
夏休みに博物館に出かけた人は多いのでは。統計では1人が年2度以上は訪れる博物館。それにまつわる法律、博物館法が初夏の6月に改正された。半世紀ぶりの大改正と期待されたが、結果は「空振り」との声が関係者から漏れてくる。市民の知の館はいま、効率的な運営を求められ、財政難ものしかかる。改正論議から見えてきた、博物館を取り巻く問題とは。
学芸員資格 見直し頓挫
 博物館の現場は、専門教育を受けた学芸員が動かす。収蔵品の充実を図り、展示・普及活動を担う彼らの仕事は、毎年全国で数十人しか就けない狭き門。だが有資格者は1年に1万人以上も生まれる。法改正では、このいびつな現状にメスが入る見通しだった。
 資格は国の試験でも得られるが、約98%の人は大学で取る。現在の博物館法は、大学で12単位を修めるよう求めているが、博物館概論などの講義と、2週間程度の実習で済むので、負担が軽すぎるという指摘が長くあった。
 そこで、大学卒業時点では「基礎資格」にとどめ、本来の学芸員資格は実務を1年経験した後に得られることにするという案が出た。また一定年数以上の経験者を対象に上級学芸員資格を設ける案もあったが、ともにつぶれた。
 学芸員養成課程を持つ186の大学でつくる全国大学博物館学講座協議会(全博協)は、反対署名を昨年、伊吹文科相(当時)に提出した。委員長大学の国学院大の青木豊教授は「卒業と同時に資格が得られなければ大学教育の『降格』になる。また、実務経験後の身分保障が無いところには学生を送れない」と言う。
古い規定 がんじがらめ
 東京国立博物館国立西洋美術館国立科学博物館。3館そろって、実は博物館法に基づく“正規”の博物館ではない。こんな現象が半世紀以上もまかり通っている。
 博物館法でいう博物館は、登録博物館と博物館相当施設の2種。年間の開館日数や建物の広さ、設置者などで区別される。先の3館は「相当施設」なのだ。
 また、文科省によると05年現在、博物館は5614を数えるが、約8割の施設が博物館法の枠の外にあり、博物館類似施設と呼ばれている。
 この妙な現象は、博物館法が、登録博物館の設置者を自治体の教育委員会や財団法人などに限ったことが主な原因。戦後間もなく出来た同法は、地方や民間の博物館の保護・育成が主目的だった。
 文科省は06年、この整理を意図して「これからの博物館の在り方に関する検討協力者会議」を設置。昨年には「登録博物館と相当施設の一本化」「国立や自治体の首長部局、大学なども登録博物館の設置者として認める」などの案を出した。類似施設を博物館法の枠内に取り込もうとの期待もあった。
 だが実現はしなかった。肝心の現場が盛り上がらなかったという。相当施設や類似施設は、登録博物館に「格上げ」してもらう利点がほとんどないからだ。以前は施設整備の補助金や、旧国鉄の輸送費割引などの利点があったが、行政改革で廃止された。
 また、もしも国立施設が登録博物館の枠に収まると、博物館法が登録博物館を想定した「公立施設の入館料は原則無料」という規定が厄介だ。国立施設は今や、収益を期待される独立行政法人になっているからだ。「博物館法は、文科省の法制度の中でがんじがらめだ」と関係者は言う。
 博物館は、おしなべて台所が苦しい。日本博物館協会の調査では、資料収集の予算がゼロという館が全体の半数。100万円未満も2割という有り様だ。
 法改正に際しては、寄付金の税を控除するなど、資金調達の支援策を、公立博物館にも適用しようという話もあった。しかしこれも、かき消えた。
 「今の時代、新たな財政措置を設定するのは無理だった」。文科省の担当者は、そう話す。
質の向上へまず一歩
 「実質的に、ほとんど得るものがなかった。議論した年月を返して欲しい」。改正案作りに関与した博物館学の研究者が愚痴までこぼす、今回の「空振り」。
 まずまず前進と言えるのは、努力規定ながら(1)学芸員の研修の充実(2)博物館の自己評価の推進、が盛られたことだ。学芸員に研修機会を保証し、展示の力量や、来館者との対話能力を磨けば、充実した展覧会やワークショップなどにつながる。博物館が自身を査定する制度が充実すれば、来館者の要望に敏感になるだろう。
 また、学芸員資格の取得に要する大学の単位数を増やすような小変更は、文科省令の改正で実現しそうだ。先の青木教授も個人的には「単位増に賛成」という。「それで受講者が減っても、質を上げるのが今後の流れでは」
一週間の実習、負担重く
 熊本市立熊本博物館で27日、1週間続いた博物館実習が大詰めを迎えた。参加者は市内の大学などに在籍する3、4年生7人。博物館の福西大輔学芸員が展示品のキャプション(解説板)の作り方を細かく指導する。
 実習は、学芸員の資格取得のための必修科目。希望者は博物館に申し込み、1〜2週間、座学や実務などの講習を受ける。「実習は年に2回受け入れるので、準備などを含めて計1カ月近く、そのために通常業務が滞る。正直、負担は軽くない」と福西学芸員
 「資格取得だけが目的と思われる実習生もいる。でも、彼らは実習を通じて博物館への理解を深めてくれるはず。そう思ってやってるんですよ」(小川雪、宮代栄一)

今更ながらではありますし,制度面だけの話で,住民からはほど遠い議論ばかりのあまり未来のない記事です。取り上げないよりはいいんですけれどもね。