人権問題等に関する独立行政法人の活動の見直し

科学技術振興機構労働政策研究・研修機構が「廃止」という,行政改革推進本部?の「リーク」については9月27日28日のエントリーで書いたところです。
その行政改革推進本部の行政減量効率化・有識者会議独立行政法人の見直しのためのヒアリングが行われたようです。議事概要がまだ出ていないので詳細はわかりませんが,行革側の方向性は資料から見て取ることができます。

労働政策研究・研修機構

まず,10月10日の労働政策研究・研修機構では,行革側としては(1)「民間企業、大学、地方公共団体、他省庁等の政策研究機関と重複する研究開発の廃止」,(2)「研究業務以外の業務(労働大学校関連業務を含む)について民間委託、市場化テストの実施」,(3)「研究者等の海外からの招へい・海外派遣業務の規模の縮小」を求めているようです。
 その求めに応じて,法人側は「厚生労働省が要請・指示する中長期的な労働政策の課題についての中期目標期間を通じた研究」を重点化し,「機構が自主的にテーマを設定して行う研究」を廃止するとともに「研究者等の海外からの招へい・海外派遣業務の規模の縮小」を行うと。行革側としては,ILOなど,本音としては邪魔なんでしょうし,労働問題のグローバル化や自主的な調査研究の進展を押さえたいということなんでしょうけれども,それを公言するかのような状況はどうなんだろうかと思います。厚生労働省側も,「国民の福利」の観点から,反論すべきところは反論していただきたいところです。

科学技術振興機構

また,科学技術振興機構では,行革側は(1)「日本学術振興会との統合等による重複分野の排除による財政支出の削減」,(2)「文献情報提供システムを抜本的に整理することによる多額の欠損金が生じない仕組みの構築」,(3)「関連公益法人等との契約の削減」を求めているようです。
 (3)はそんなものでしょうね。(2)はよくわかりません。(1)は法人側から「両法人は、目的・性格が大きく異なり、業務の重複は無い」。日本学術振興会の支援する「研究者の自由な発想に基づく研究」と,科学技術振興機構の支援する「政策に基づき将来の応用を目指す基礎研究」は別物で,いずれも大事なものというようにここはきちんと反論しているようです。ただ,科学技術振興機構の研究支援「対人地雷探知・除去技術の研究開発の推進」は今年度で廃止されるようです。

青少年教育振興機構

ちなみに,青少年教育振興機構(オリンピック記念青少年総合センターや青少年の家)については,行革側は(1)「青少年教育指導者等に対する研修業務を民営化(又は民間委託・市場化テスト)」,(2)「保有施設(特に稼働率の低いもの)の売却」,(3)「国立女性教育会館との統合」を求めているようです。
 法人側は青少年教育指導者への研修は国としても実施することが必要,ミッションも資源も異なる女性教育会館との統合は全く効率的ではないと反論。保有施設の売却についても反論しているようです。青少年の家は,ところによっては売却してもよいところもあるかもしれませんが,あまり実際的ではないでしょうね。

国立女性教育会館

10月12日の国立女性教育会館についても,行革側は(1)「女性教育指導者等に対する研修業務を民営化(又は民間委託・市場化テスト)」,(2)「保有施設の売却」,(3)「国立青少年教育振興機構との統合」を求めると,ワンパターン。
 これはいずれも法人側は反論。
 ・政策・方針決定過程への参画が低い ・男性の育児・家事等の時間は少ない ・四年制大学への進学率が低い ・配偶者による暴力の増加 などの状況の中,福利厚生の面でも,人権への視座からも,また経済発展の視点からも,政策として男女共同参画を進めることが大事だとは思いますが。この有識者会議の委員ですら,15名中3名しか女性を登用していないからしょうがないんでしょうけれどね。
 事務局の男女比も知りたくなります。


 このヒアリングは,「(ネオリベラル)行革」の議論を進めていく途中段階。リークがあったように,さらにドラスティックな主張がなされる可能性もあるようです。労働や人権,科学技術に関する政策決定が,ネオリベラル主導のこんなレベルで行われるのは極めて異常な事態かと思います。