現天皇の博物館像?

欧州訪問を控えた記者会見で5月14日の,天皇の発言から

分類学の研究を通じて標本を保管することの重要性を学んだということがあります。動植物それぞれの命名規約に、同一種に複数の学名が付けられている場合、古い方の学名を採用することが規定されています。その関係から古い学名を調べるに当たり、1828年に採集された標本を調べましたが、そのように長く保管された古い標本でも色彩の特徴が確認できました。これはリンネの標本がロンドン・リンネ協会に大切に保管されているように、欧米の博物館が研究に役立てるために、標本を大切に保管してきたからです。今日、日本の博物館も標本の保管に関して十分な配慮がなされるようになりましたが、かつては博物館は教育機関としての役割のみが強調され、標本は展示のために利用されていました。国立科学博物館も明治10年に教育博物館として建てられ、標本を含む教育機材が展示されていました。当時、産業の振興は国にとって大変大切なことでしたが、もう少し自然史や分類学に関心が寄せられていれば、例えば田沢湖クニマスのような絶滅を防げた動物もいたのではないかと残念に思っています。

「かつては」ではなく,いまでも教育機関としての役割のみが強調される嫌いがあるように思っていたので,この発言には賛同します。
強いて言えば,自然史や分類学の研究や,資料の継承という活動の充実があってこそ,博物館の教育機能は一層充実を図れるのではとおもっていますので。

国立科学博物館をはじめ,国内の自然史博物館,もちろん歴史博物館や美術博物館も含め,標本の継承が重要なことを,中の人は知っているんでしょうけれども,博物館行政を担う教育委員会とか議員さんとかがもっと認識してほしいと思います。
もちろん,この日記でも4月26日に触れたみたいに,博物館法の改正を検討している文部科学省にも。