国際ミュージアムフォーラム

月刊ミュゼhttp://www.musee-um.co.jp/musee01.html第77号に掲載されていたLearning Innovation Network代表黒岩啓子氏の報告より。
国際ミュージアムフォーラム"The Museum: A World Forum"は,英国のレスター大学大学院の博物館学研究科が,開設40周年を記念して開催したもの。様々な国から約280人の参加者があったとのことです。
講演の一つ「21世紀のミュージアム:その目的と範例」では"Museum Management and Curatorship"の編集長Robert Janes博士が「ミュージアムは公益のために存在し,社会的な問題解決のために寄与しなければならない」と,カナダのミュージアムの実践例を紹介しながら,博物館の社会的責任について語ったとのこと。黒岩氏は,感想の中で,日本では今日,市民とミュージアムスタッフの二極的な構造や思考が見られるが,そもそもミュージアムは市民によるものであり,「さまざまな問題に対して,ミュージアムは多様なアプローチが可能であり,社会的責任を果たすことは私たちがミュージアムスタッフとして,そして市民としてその責任を果たすことに繋がる」とのJanes博士の発言が印象に残ったと記述しています。
「21世紀のミュージアムとコミュニティー」では,国立オーストラリア博物館で実施しているRepatriation Program(収蔵品を現地へ返還するプログラム)について述べ,「返還はミュージアムが自主的,または強制されて義務として実施することが多いが,むしろそれを好機として捉えるべきであり,地域との対話や調査など,ミュージアムが変換プログラムから,有形無形の恩恵を得ることができる」と語ったとのこと。それにしても,文化的遺物については,大英博物館に対しても,エジプト政府からロゼッタストーンの返還要請があるなど,国境を越えた返還運動が今後,ますます盛んになるでしょうし,自然史・民族史資料についても,人骨等をはじめ,国内・国際的レベルでの返還の動きが盛んになるでしょう。日本の博物館も例外ではありません。なお,下に紹介しますが,アメリカ自然史博物館とイヌイットの人骨について翻訳本が出ています。
フォーラムの最終日にはPyramid Gameというゲームがあったとのこと。このゲームは,参加者に一枚の紙片が渡され,「Museum must ・・・」で始まる文章を各自が作成し,それを集めてシャッフルした上で,一人一人に配り,その紙片をもとに参加者が1対1でディベートし,勝敗を決めるものです。ディベートに負けた方は,負けた紙片を「ゴミ」として捨て,勝者につきます。最終的には2グループでディベートする仕組みになります。ちなみに「ゴミ」については,その都度司会者が紹介します。例えば「ミュージアムは多様な人々の声・意見に耳を傾けるべきである」という「ゴミ」紙片については,「ミュージアムは多様な人々の声・意見に耳を傾けるべきでない」と紹介されてしまいます。参加者からは苦笑が起こったとのこと。最終ディベートまで残ったのは「Museum must communicate or die」「Museum must make me laugh」。双方の支持者から意見が活発に飛び交い,最後の勝者は「ミュージアムはコミュニケーションに努めなければ死するのみ」。Challengingなゲームです。

父さんのからだを返して―父親を骨格標本にされたエスキモーの少年

父さんのからだを返して―父親を骨格標本にされたエスキモーの少年

父さんのからだを返して―父親を骨格標本にされたエスキモーの少年