四日市・死の海と闘う (小さな政府の正体は?)

四日市・死の海と闘う

四日市・死の海と闘う 岩波新書 青版』を久々読みました。

四日市・死の海と闘う (岩波新書 青版)四日市・死の海と闘う (岩波新書 青版)
田尻 宗昭

岩波書店 2002-06-12
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初版は1972年の本ですから,だいぶん昔のものです。海上保安庁に身を置いた著者が,四日市の海に危険や汚染をもたらす企業に立ち向かっていく話ですね。
いま,健康と生活,そして自然を守っている水質規制は,この田尻さんの戦いや,その当時の反公害闘争と,人々の意識の高まりで生まれてきたものです。そして,企業サイドにとっても,結局のところ,それが企業価値を高めることにもつながってきました。
いま,「小さな政府」を旗頭に,様々な規制緩和が政策として進められていますが,構造設計偽造問題やライブドア村上ファンド問題にも現れているように,いたずらな規制緩和は,人々の健康と生活,自然への脅威となる可能性を有しています。企業サイドにとっても結局企業価値をおとしめてしまったり,また余計な政府支出を増やしてしまう可能性もあります。
拙速な指定管理者制度の導入が,いたずらに無駄金を増やしてしまうことと同様,「小さな政府」に向かう現在の政策は,「官」から「民」への資産流出にとどまらず,むしろ政府支出の増大を招いてしまうのではないか。そういうことを念頭に置く必要があります。