学芸員は,追求し,保存し,伝える。

東京都の江戸東京博物館で“大(Oh)水木展”をやっています。
ご存知ゲゲゲの鬼太郎水木しげるですね。
「いいなあ〜」と感激。人を呼びそうな面白い展覧会をやっているからだけではありません。
文化史的に,妖怪を取り上げ,また今の人々の妖怪観を形作るにあたり大きな影響を与えた水木を「きちんと保存し,きちんと伝えよう」という姿勢が見えるし,そのような学芸員がいるとわかるからです。

博物館は社会教育の機関でもありますが,
研究機関でもあります。そこにいる専門的職員である学芸員は,様々な現象を観察し,新たな価値を自ら創造しています(それが研究であり,その現象の証拠である標本に価値を与える)。

そして,「何を保存し,何を伝えるのか」を考えています。
伝えるということは,即時的に伝える部分もありますが,より「未来」の人に伝えることも考えています。

そのため,ここでは,特に学校の教員の方々へのお願いですが,
ぜひ,博物館には,「何を保存するのか」と考えている職員(学芸員)がいることを伝えていただければと思っています。

例えば,昆虫少年がそのまま大きくなったような,博物館の学芸員を知っています。
研究としては,甲虫を研究し,その成果により世界中で注目されています。
博物館の業務で,または科学研究費補助金で彼が外国に行った際にその研究の目的とする昆虫を探し,また採集します。
しかし彼は,それらの収集が終わった後,さらに広い種類の昆虫を探し,大型の甲虫やチョウ類を採集し,標本とします。

また,ある博物館の学芸員は,日本の技術史の発達に関心を持ち,調査を行い,
さまざまな論文を発表するとともに
機会があるごとに,それらの資料について,会った人に寄贈を強くお願いし,やむをえなければ,現地での保存をお願いしています。

二人とも,それらの標本や資料がきわめて大きな意味を持ち,
もちろん自分で研究する部分もあるのですが,
これが公共財として
現代の人々や未来の人々の役に立つ−だからいま,とっておくんだ
と仕事をしています。

博物館というと,展示を見てお終いになりがちですが,
学校で,事前でも事後でも,
そんな人がいるんだということを伝えてもらえるとよいなと思います。

好きだから,身銭を切って,市内,県内,日本国内,場合によっては世界あちこちに行き,採集したり,持っている人にお願いをする。
何か好きなものに一生懸命になる生き方はたくさんありますが,学芸員もその一つだということを。

また,野原や山に出かけて,たくさんの植物に囲まれた中で,興味深いもの,大事なものを選り分けて採集してくる学芸員。新種かもしれないし,分類学的に大きな価値のあるものかもしれません。それを見分ける学芸員のその知識や,見る方法,これも博物館に出かける機会があれば,見て欲しいし,また学芸員は伝えたいと思っています。
#研究から入ってきた学芸員もいるし,「伝えたい」から入ってきた学芸員もいるけれど,
#「未来にとっておきたい,伝えたい」という思いは共通です。

今日は,ちょっとしたきっかけでありまして,とりわけ,学校の先生に見てもらいたいと
メモがてら。

#なお,公立,特に県立や国立の博物館だと,学芸員等博物館職員募集の際に,やはり研究者としての能力が求められることが多いです。ただ,最近,そして今後コミュニケーション能力がより評価される時代が来るかもしれません。
そのことについては,良い部分もありますが,悪い部分も当然あります。