千代田区の図書館に関する行政の疑問
「千代田区教育委員会の権限に属する事務の委任等に関する規則」(平成19年10月31日教育委員会規則第28号,平成20年3月25日改正)
千代田区教育委員会の権限に属する事務の委任等に関する規則 千代田区教育委員会の権限に属する事務の委任に関する規則(昭和27年千代田区教育委員会規則第6号) の全部を改正する。 (委任) 第1条 千代田区教育委員会(以下「教育委員会」という。)は、地方自治法(昭和22年法律第67号)第 180条の7の規定により、千代田区長(以下「区長」という。)の補助機関である職員に次の事務を委任 する。 (1) 就学児童の調査に関すること。 (2) 学校その他の教育機関の営繕に関すること。 (3) 千代田区立(以下「区立」という。)麹町小学校及び和泉小学校の施設維持管理に関すること。 (4) 区立軽井沢少年自然の家(メレーズ軽井沢に限る。)の施設維持管理に関すること。 (5) 区立四番町歴史民俗資料館の施設維持管理に関すること。 (平20教委規則4・一部改正) (補助執行) 第2条 教育委員会は、地方自治法(昭和22年法律第67号)第180条の7の規定により次の事務を区長の事 務を補助する職員に補助執行させる。 (1) 教育委員会の情報に係る情報公開請求の受付及び公開決定通知等に関すること。 (2) 区立図書館の指定管理者による管理に関すること並びに区立図書館のあり方の検討に関すること。 (3) 公共施設利用システムによる区立軽井沢少年自然の家、区立小学校(和泉小学校目的外利用、麹町 小学校・千代田小学校・昌平小学校コミュニティスクールに限る。)の利用申込の受付(使用料等の収納 を含む。)に関すること。 (4) 社会教育主事及び社会教育委員に関すること。 (5) 社会教育団体に関すること。 (6) 文化財の保護及び活用、並びに保護思想の普及に関すること。 (7) 四番町歴史民俗資料館に関すること。 (8) 国、東京都等に対する各種調査、報告等に関すること。 (平20教委規則4・一部改正) 第3条 前条の補助執行事務に係る事務の専決は千代田区教育委員会事務局文書専決規則(昭和27年千代 田区教育委員会規則第7号)によるものとし、その区分は次のとおりとする。 (1) 副区長 教育委員会事務局における教育長の区分による。 (2) 部長 教育委員会事務局における部長の区分による。 (3) 課長 教育委員会事務局における課長の区分による。 附 則 この規則は、公布の日から施行し、平成19年4月1日から適用する。 附 則(平成20年3月25日教委規則第4号) この規則は、平成20年4月1日から施行する。
補助執行って何なんでしょうね。
千代田区立図書館の運営については指定管理者に関する条項等がある千代田区立図書館条例(千代田区:条例第17号)や千代田区立図書館条例施行規則(千代田区教育委員会:教育委員会規則第19号)で定められていて,文言上は明らかに教育委員会が所管です。
ところが,図書館の運営に関して区議会で質問があったときに,教育長ではなく,首長部局の職員が答弁に立っているんですが。それすらも"補助"執行のうちなんでしょうかね。
なお,地方自治法(昭和22年法律第67号)第180条の7は次のような条文。
第百八十条の七 普通地方公共団体の委員会又は委員は、その権限に属する事務の一部を、当該普通地方公共団体の長と協議して、普通地方公共団体の長の補助機関である職員若しくはその管理に属する支庁若しくは地方事務所、支所若しくは出張所、第二百二条の四第二項に規定する地域自治区の事務所、第二百五十二条の十九第一項に規定する指定都市の区の事務所若しくはその出張所、保健所その他の行政機関の長に委任し、若しくは普通地方公共団体の長の補助機関である職員若しくはその管理に属する行政機関に属する職員をして補助執行させ、又は専門委員に委託して必要な事項を調査させることができる。ただし、政令で定める事務については、この限りではない。
2月10日追記
一本足の蛸さんのエントリー「教育委員会の事務の補助執行」で引用いただきました。ありがとうございます。
実際問題として教育委員会事務局には区長部局に"投げてしまった"事務を担当する部長も課長もいないのだから、本来、教育委員会事務局の部長が答弁すべきことは、代わりに区長部局の部長が答弁することになるだろうし、・・・決裁のときの読み替え規定と同様に対応することになるのだろうと思う。
とご指摘いただいて,千代田区の教育委員会事務局組織を調べてみました。
千代田区の2007年2月14日のプレスリリース「次世代育成部門と教育部門を統合し 教育委員会に新組織を設置−保育園・児童館なども教育委員会で一体的に−」(魚拓)に改組前後の組織図が出ています。
図書館に関して言えば,改組前は部長級は教育委員会事務局次長,課長級は図書文化財課長だったわけですが,改組後は担当する組織は教育委員会事務局内には確かになくなっています。 ふ〜ん。
学校基本調査の問題も興味深い。
2月10日追記
千代田区の件ですが,文化財については,引き続き教育委員会所管ですね。
個人的にちょっと面白いなと思っているのは,千葉県生物多様性センター。生物多様性センターが設置されている場所は,教育委員会所管の千葉県立中央博物館ですが,生物多様性センター自体は首長部局の環境生活部自然保護課が所管しているんですね。
とページにはありますが,そのスタッフとは千葉県立中央博物館のスタッフとも(一部?)重なっているようです(中央博物館スタッフの中に自然保護課併任の人がいますのでおそらく)。
それ自体,別に良いのですが,埋蔵文化財センターが教育委員会所管なら,生物多様性センターも教育委員会所管もあって良いように思いますし,逆に言えば,なぜ文化財が(歴史的経緯はともかく)教育委員会所管なのかもわからなくなってきました。
追記終わり
あとは,長いので,メモです。
千代田区議会の会議録(平成20年第3回定例会(第2日))から。
次に、区立図書館について質問します。
指定管理者制度を導入して1年半がたちました。入館者数100万人突破という華々しさの報道の一面、問題点や不安な点も少なくありません。図書館評議会の評議結果を見ると、冒頭に「本事業の契約業者が3社のコンソーシアムの形態をとっていることに懸念の声があった」と述べています。また、指定管理者制度の導入に当たり、我が党が最も心配した専門性についても、報告は「レファレンス業務の経験豊かなベテランの増員を求めたい」などと指摘しています。
さて、渡海前文部科学大臣はことし6月、参議院の委員会で注目すべき答弁をされました。図書館への指定管理者制度の導入率が低い理由として2点指摘しています。1つは、指定期間が5年ぐらいと短期であるために、長期的視野に立った運営が難しいこと。もう一つが、職員の研修機会の確保や後継者の育成等の難しさであります。その上で、「図書館に指定管理者制度はなじまない」と述べられました。
実際に図書館に指定管理者制度を導入した自治体は少数であります。その中で、中央館にまでこの制度を導入した上、図書館長まで民間にゆだねた自治体を私は千代田区のほかに知りません。5年間という短い指定期間の中で、長期的視野に立った図書館運営の困難さと、職員研修の確保と後継者の育成の難しさという、2つの困難をどう払拭されたのでしょうか。また、この2つの点に照らして、現在の図書館運営を区はどう評価されているのでしょうか。答弁を求めるものであります。
その上で、具体的に3点質問します。1つ目は、職員の専門性と安定性の確保についてです。図書館では多くのパート職員が働いています。指定事業者のパート募集内容を見ると、時間給は時給830円から920円となっています。この時給で専門性の確保ができるとお考えでしょうか。報告が求めるベテランの増員は可能なのでしょうか。また、評議結果報告は、図書館員の自己研鑽について、個人的な努力の範疇にのみとどめるのでなく、業務の一部に位置づけ、職員を採用する企業体の責任としていかなくてはならないと述べています。指定事業者において、研修の改善はなされたのでしょうか。答弁を求めます。
2つ目は、図書館の運営と組織についてです。
区立図書館は3社によって運営されています。そのため、報告は「各部門内の情報伝達が十分かつ迅速に行われること」、「各部門が利益追求に陥らず図書館全体の目標に向けて協同がなされること」等の注意喚起をしています。私も同感であります。
ここで伺いたいのは、千代田図書館は図書館長の上にジェネラル・マネージャー(GM)がいる組織体制になっていることです。GMは、3社のうち企画を担当する企業の社長であります。千代田図書館の運営は、図書館長がGMの判断を仰いで意思決定がなされる仕組みとなっていると理解していいのでしょうか。だとすると、利潤第一の運営にならないでしょうか。答弁を求めます。
3つ目は、千代田図書館サポーターズクラブについてです。
会則によると、この目的は「すぐれた図書館文化の醸成と図書館運営を側面から支援し、地域の発展に寄与すること」とあります。年会費は、法人1万、一般会員2,000円、区民の場合1,000円です。会員には特典があります。「サポーターズゾーンの利用」、「セミナー等の優先参加」、「附帯施設に試験的なサービスの優先享受」などであります。また、活動の一例として、閉架書庫内の貴重な資料を活用できるよう環境整備しているといいます。一般の利用者とは違った閉架書庫の活用を可能にするということなのでしょうか。これらはサービスの有料化への道につながらないでしょうか。答弁を求めます。
関連して、区長が招集あいさつで触れた日比谷図書館の移管について質問します。
第1に、日比谷図書館が区への移管がなされた場合、やはり指定管理者制度を導入することになるのでしょうか。第2、日比谷図書館の利用者は図書館に何を求めているか。2002年10月に都立図書館が実施した実態調査によると、日比谷図書館を利用する理由のトップが「資料が豊富であること」でありました。また、蔵書内容についてどう思うかの質問に、「現状では不十分」の声が「現状でよい」を上回り、必要な資料として「芸術・スポーツ」「歴史・地理」「経済・経営・財政学」「文学」と続きます。2004年12月の実態調査では、「今後期待するサービス」の設問に対し、やはりトップは「蔵書の充実」でありました。日比谷図書館では、実に利用者の6割がそれを期待しています。このように、利用者の願いは図書資料の充実にあるのです。区は、この声にこたえる自身と覚悟があるのでしょうか。答弁を求めるものであります。
◯区民生活部長(高山三郎君)
木村議員のご質問のうち、区立図書館に関するご質問にお答えいたします。
区立図書館への指定管理者制度導入の趣旨は、専門的な能力を持つスタッフを確保するとともに、民間が有するWeb技術やコンシェルジュサービスなどのノウハウを活用することで、都心に立地し豊富な文化資源に恵まれた千代田区の特性等を踏まえた、かつ費用対効果にすぐれた質の高い公共サービスを提供することにあります。
導入に当たっては、区の責任において図書館運営の方針を明らかにし、その運営経過及び実績について、第三者から成る図書館評議会による評価を含め適切な運営評価を行っていくこととして、そのことを重視しております。
まず、ご質問でございますが、長期的に視野に立った図書館運営についてでございますが、区が、貴重なコレクション資料の整理などの蔵書構築の方針など、長期的な視野に立った運営方針を明確に示すことで、一定の解決がなされているものと考えており、今後とも区の方針を徹底してまいりたいと考えております。
また、研修と後継者育成についてでございますが、図書館評議会での指摘を踏まえ、今年度から、サービス部門全体での研修会やレファレンス事例研究会などを定期的に企画、実施するなどの取り組みを行っております。今後とも、計画的な後継者対策の検討とあわせて、引き続き改善に努めてまいります。
なお、現時点における図書館の評価についてでございますが、おおむね順調に運営がなされており、多くの新規サービスの実施や新たな利用者の掘り起こし、また、それに伴います利用者の大幅な拡大など、また社会的認知度の向上、これらのことを総合して勘案いたしまして、区の期待を十分に達成しているものと考えております。
次に、職員の専門性と安定性についてでございます。評議会報告にある「ベテランの増員」は、専門性の高い業務として、正規職員対応となっているレファレンス部門に対してなされた指摘であると考えております。パート職員につきましては、貸し出しカウンター業務など、必ずしも専門性を有せずとも、従来でも委託されていた業務について従事しているものでございます。司書資格を有する職員の配置は、指定管理者導入により初めて実現できたものでございまして、指摘を踏まえまして、今年度におきましてもレファレンス部門に司書の増員をいたしました。その結果、サービス部門全体で16名の司書資格を持つ有資格者職員を配置していることになっております。
次に、ジェネラル・マネージャーにつきましてですが、指定管理者を構成する3社間の調整を主たる任務としております。図書館運営の意思決定を行う立場には、したがって、ございません。意思決定は、行政による評価と監督のもとで図書館長が行っており、利潤第一の運営にはなり得ないと考えております。
次に、サポーターズクラブでございますが、個人会員などの外部人材の知見等の活用を通じて図書館運営を支援することを主たる目的としてございます。いわば利用者と図書館の協働活動と言えるものであると考えております。内田文庫などの特別コレクションについて、会員の知識を広く募って評価や研究を行っていただき、その価値を広く区民にアピールするためのそのご協力を得ているところでございます。特別コレクションは、一定の手続でどなたでも無料で利用することができ、図書館法第17条に定める図書館利用の利用に対する対価とは全く性質を異にするものと認識しております。
最後に、日比谷図書館についてでございます。もし仮に千代田区に移管されるということになれば、専門的能力を持つスタッフの確保や民間のノウハウの活用により、質の高い公共サービスを効率的に提供していくという見地から、指定管理者の導入も含めて運営方法を検討していくことになると考えております。また、日比谷図書館の立地条件や利用者ニーズなどを十分に踏まえた蔵書構成の拡充を図ることで、現状よりもさらに蔵書の質的向上が図れるものと考えており、利用者ニーズにこたえていけるものと考えております。