島根県立図書館協議会の意見書

5月16日の山陰中央新報の記事から

島根県図書館協議会が意見書提出
島根県立図書館(松江市内中原町)の館長諮問機関である県立図書館協議会(長野忠議長、十人)が、将来の同館の在り方についての意見書を富田真智子館長に提出した。指定管理者制度導入については、収益を目的とする民間管理はなじまないと判断、「公設公営で運営されるべきだ」としている。
 同協議会は県図書館条例で設置が定められ、学識経験者らで構成する。
 提出された「今後の県立図書館のあるべき姿についての意見書」の要旨は、▽課題解決を支える図書館▽図書館サービスの地域格差是正▽「無料の原則」と指定管理者制度−など六項目。指定管理者制度の項では、図書館業務の効率的運営を掲げた上で、「収益を生む公共サービスではなく民間運営は難しく、教育機関として管理運営が一体化している必要がある」としている。
 長野議長は「分離分割方式を含め、無料サービスを基本とする図書館業務に民間委託はなじまない」と話す。富田館長は「意見書をしっかり受け止め、策定中の図書館振興計画に反映して、新しい図書館像をつくっていきたい」とした。
 同館への指定管理者制度導入について昨秋、県教委は本年度導入を見送る方針を示している。他方、三月に開かれた県改革推進会議の行政改革専門小委員会では、「公の施設」の見直し作業に入っている。

意見書は,県立図書館のページにも挙がっています。いくらかそのまま引用。

日本図書館協会は、以下の理由から、民間企業者を図書館の指定管理者とすることは避けるべきであるとしている。(『公立図書館の指定管理者制度について』2005年8月)
・ 図書館サービスの発展には図書館間の連携・協力やネットワーク化の整備が不可欠であるが、競争関係に立つ民間企業者間で、このことを効果的に達成することは難しいと考える。
 ・ 県立図書館は市区町村立図書館に対して、資料の貸出、相談業務、職員研修など協力事業や県域の図書館振興策の立案などを行っている。市区町村立図書館では、学校に対する出張サービス、地域との繋がりによる読書普及活動、地域資料の発掘収集などが行われている。これらのサービスを民間企業者が行うことは適切であるか疑問が残るところである。
 ・ 公共図書館事業はいわゆる事業収益が見込みにくい公共サービスであり、営利を目的とする団体が管理を行うことには自ずと無理がある。
指定管理者は、図書館固有の業務を全うできるであろうか。連携協力は県内市町村の図書館ばかりではない。
 他県立図書館や国立国会図書館および大学図書館との連携協力は十分に行えるか。県内図書館全体の振興に責任をもつことができるか。図書館未設置町村の教育委員会に対して支援をすることができるか。一貫した方針の下に継続した蔵書構築が可能であるか。中期・長期的計画の策定と実施は可能か。図書館の専門性を維持・発展できる能力をもった職員を継続的に確保できるか。このように懸念される点は多い。
・・・
無料のサービス機関である図書館は、利用が増大するほど経費が嵩むのであるから、利潤追求の企業とは相容れないものである。美術館や博物館は、利用者が増大するほど入館料が増大する点で、利潤追求を目的とする民間企業と共通性をもつ面もある。しかし図書館は、どの側面から見ても利潤追求とは逆のベクトルをもつのである。

島根県議会も,このような議論が行われていたりしますから,「出先機関」の持つ協議会の意見書がどこまでちゃんととりあげられるのか不安です。しかし,意見書,かなり短く,簡潔で不十分なところも多いようにも思いますが,重要な点を指摘しています。この点をないがしろにして議論が進んでしまっては図書館の未来は不幸です。