施設の指定管理者に危機管理マニュアル策定義務づけるよう県に勧告

山陰中央新報2月20日の記事から

財政的支援団体の監査結果報告
島根県監査委員会の山粼悠雄代表委員が十九日、県が出資金や補助金などを出している外郭団体や指定管理者など、二十六の「財政的援助団体」に対する二〇〇七年度の監査結果を溝口善兵衛知事に報告した。
 同時に、昨年、出雲市出雲ゆうプラザで発生した男児の水死事故を踏まえ、指定管理者に公的施設の管理・運営を委託する際、危機管理マニュアルの策定を契約協定書に明記するよう求めた。
(以下略)

危機管理マニュアルさえあれば良いというものではないが,必要条件として危機管理マニュアル策定を義務づけるのはガバナンス側としても妥当な方針だろう。
博物館や美術館への指定管理者制度導入も,あちこちの自治体で行われているが,これらの機関は,利用者の安全確保のみならず,人類共通の財産であるコレクションの保全を行うことが重要であり,施設の管理者に危機管理マニュアル策定を義務づけるのは全面的に賛成します。
ただ,課題は(少なくとも)二つ。
 一つは危機管理マニュアルを職員で共有するとともに,それに基づいて様々なシチュエーションで訓練を定期的に行わねば,マニュアルが有効性のあるものにならないこと。
 もう一つは,地震や火災,盗難など,ハード面の充実が必要なこと。ハード面で欠陥があれば,マニュアルは勢い精神主義的なものにしかならない。つまり,危機管理マニュアルの策定を指定管理者に義務づけるということは,策定の過程でハード面の欠陥が明らかになったとき,自治体側は速やかに改善・整備を行うことが義務づけられるということである。自治体側でその手当ができなかったときは,自治体側の責任であることが明確になる。

追記 当日

読売新聞の同日の記事により詳しく出ていました。

危機管理マニュアル 県指定管理14施設「なし」 監査報告
県が指定管理者に運営委託する16施設で、事故が起きた際の「危機管理マニュアル」が無かったり、不十分だったりしたことが19日、県監査委員が溝口知事に提出した監査結果報告書でわかった。
 報告書などによると、出雲市NPO法人を指定管理者に選定し、管理運営を任せていた健康増進施設「出雲ゆうプラザ」で昨年8月、男児が死亡した事故などを受け、県監査委員がマニュアルの有無を確認した。その結果、監査対象の16施設のうち、県民会館(松江市)、県立水泳プール(同市)の2施設を除き、県立サッカー場益田市)や県立体育館(浜田市)、県芸術文化センター「グラントワ」(益田市)など14施設では危機管理マニュアルがなかった。水泳プールなどの2施設でも詳細な計画がなく、不十分だった。
 このため、監査委員は、指定管理者に対し、想定される事故などを分析して、具体的な対応を盛り込んだマニュアルの策定と定期的な点検、訓練を要求。また、それぞれの施設を所管する県の各課にも、指定管理者が確実にマニュアルを作るように契約時の協定書に盛り込むよう求めた。
 監査委員は、今回監査の対象外だった10施設にもマニュアル作成を求め、6月末までに全施設の進ちょく状況を確認し、発表するとしている。

定期的な点検,訓練も求めると言うことですね。
ただ,利用者の安全を確保する手段も危機管理マニュアルや避難訓練,研修などいろいろな方法があります。
 利用者の安全を図ることは,指定管理者には求められていると思いますが,既に契約が結ばれている中では,利用者の安全を図るためにどのような方法を取るかは指定管理者に委ねられているのではないでしょうか。
 避難訓練を行うにせよ,研修を行うにせよ経費がかかります。追加で何かを県が指定管理者に義務づけるんだったら,委託費を増額せよという要求にも県は応えなければならないようにも感じます。