川辺川ダムの現状

国が川を壊す理由−誰のための川辺川ダムか

国が川を壊す理由(わけ)―誰のための川辺川ダムか国が川を壊す理由(わけ)―誰のための川辺川ダムか
福岡 賢正

葦書房 1996-05
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約10年前の本。一人の新聞記者が川辺川で失われる生物環境,川辺川の目的の欺瞞性,水没予定地に住む人々の暮らしなどを追っている。興味深い本です。
 発行から10年。住民も,県行政も川辺川ダム建設計画が及ぼす生物的,経済的,生活的な悪影響を精査する中,ただ一人,組織としての国交省だけが反省という言葉を知らず,ダム建築の必要性を主張している。計画発表から40年がたった昨年,国は漁業権の強制収用を熊本県の収用委員会に申し立てていたが,実質却下。国による「ばら色」の利水計画は住民にそっぽをむかれ,さらに住民同意の手続きに政府による違法手続きがあったことも明らかに出て,誰も望まない利水計画はすでに破綻。「ばら色」の治水計画,地域振興もその欺瞞性が顕わになってきている。
「ニーズを作り出す」のも,行政の一つの役割であるが,欺瞞が明らかになったいま,新たな地域共生に向けて再検討,再構築が必要なのはダム計画ではもはやなく,国交省本体かもしれない。