トンデモさんをとりあげた産経新聞

産経新聞2005年11月14日のニュース http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051114-00000012-san-bus_all によると,

 八十六歳の元中小企業経営者が、ガソリンなどの燃料を必要としない、環境にやさしいエンジンを開発し、注目を集めている。太陽電池などのわずかな電力と、空気圧で駆動する画期的なエンジンだ。
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 このエンジンを開発したのは、村上技術開発研究所(東京都江東区)の村上栄三郎代表(86)。共同出願者で友人の長谷川清さん(80)、渡盛雄さん(78)の二人とともに実用化を目指している。
 エンジンには、左右隣り合った二つのピストンがあり、片方のピストンが伸びると、片方のピストンが縮む仕組みになっている。ピストン内には圧縮空気が充填(じゅうてん)され、モーターなどで起動させると、縮んだほうのピストンに反発力が生じる。その力を回転運動に変えて駆動する仕組みだ。
 シリンダー同士をつなぐ軸棒の支点の位置を移動するところが大きなポイントで、小さな電力でも永続的に大きな力が出せるという。「自転車だけでなく、自動車やボートのような大型の装置にも利用ができる」と、村上さんは説明する。

というもの。エネルギー保存という概念を持っていれば,この「エンジン」と呼ばれているものの動作原理が理解不能であることがわかる。このような技術がもし開発されたのであれば,物理学上の大きなブレイクスルーが必要であるが,そのような事実はもちろんない。
この産経新聞の記者(石垣良幸)やデスクはよほど自然科学に無知なのか,それとも,タイアップする何らかの事情をもっていたのか。1月15日の産経新聞では第二報が出ているし。
いずれにせよ,産経新聞には一般成人や青少年の「科学離れ」「知離れ」を指摘,批評する資格はなさそうである。
このエンジンについてだが,http://www.industry.city.shinagawa.tokyo.jp/mono/techno/syouei.html 株式会社祥栄が「夢の」エンジンを組み立てたと主張している。上記URLでは,この会社は昭和9年に設立したこととなっているが,http://72.14.203.104/search?q=cache:WtXmvbT8ipUJ:www.ipf-net.com/main/gotocompany.asp%3Fr%3D9%26acctno%3D50262820%26HeadingID%3D239160+03-3492-4434&hl=ja&lr=lang_ja によると,1960年設立とのことである。
また,特許については,http://www.geocities.co.jp/Technopolis/7934/column06/list.htmlを見ていただいてもわかるように,出願し,自動的に公開されるところまでは,審査はないのである。
「村上栄三郎」でブログ検索してみると,産経新聞の論調に載せられてただただ賛美しているブログばっかり!疑問をなげかけているブログはhttp://psyadvice.exblog.jp/2597675をはじめ,わずかに見られるのみ。

2009年1月20日追記

ちょっと気になって調べてみましたら,審査の上,2006年3月3日に登録番号3776382で特許として登録されています。

【発明の名称】EMロータリーエンジン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】 ガソリン燃料等を使用せず自然エネルギー空気を出力に変換し排気公害を無くす機関を提供する。
【解決手段】いつでもどこでも空気のある所、携帯空気入ポンプで充填できる圧縮空気の反発力を動力源として活用するもので充填圧力自体のエネルギーで排気行程なしでエンジン回転部に充填圧力から増圧器を介して倍増の圧力を交互、脈拍の如く加圧ずれば各種バッテリー回転誘導に伴ないエンジンは恰も心臓の如き働きをなす。これらを一方向回転力に用いたことを特徴とするEMロータリーエンジン

ちなみにEMというのはEizaburo Murakamiの略称です。