今日は南風が強くなってきた。こういう風は好きだ。

昔,初めて東京に出てきたとき,海が見えない,山が見えないことに,少し寂しさを覚えた。風はそこを癒したのではないか。
だから,風が吹くと葉音が聞こえる,そんなところに住みたいと思った。
いま,職場からの帰り,緑の多いところを通る。草原がサワサワと鳴る。林からドウドウと音がする。
宮沢賢治の文章では,「ドウドウと」風が吹いている。初めて読んだときはよくわからなかったが,実際,林の音はドウドウと鳴っている。


それにしても,今年は暖かい。ドウダンツツジが赤く鳴るのも遅かったように思う。イチョウの葉っぱも,木にようやく別れを告げ始めている。
風は,季節の移り変わりに気づかせてくれる。
風は,予兆であり,コンタクトであり,実体である。