スミソニアン,そして人権の博物館

National Museum of American Indian (全米アメリカインディアン博物館)が2004年9月21日に,スミソニアン機構の一員として開館した。http://www.nmai.si.edu/ 1989年に法案が可決されてから15年。喜びとともにオープニングを迎えた。
法案可決までの流れとしては,議員立法で法案が提出される。その法案には「スミソニアン機構の中に全米アメリカンインディアン博物館を設置する」とし,目的,そして予算措置を謳う。もちろん全米規模の博物館を,また国立の博物館をスミソニアンの一員としなければならないというわけではないが,そのあたりは,連邦行政,また国民のスミソニアンに対する信頼もあるのだろう。全米規模の博物館を設置しようという場合,しばしばスミソニアンに置くということとなる。
さて,昔,博物館が「白人で,経済的に豊かな層」のものである時代があった。しかし,多人種,多民族の国の中で,市民権運動のたかまりとともに,多くの人に博物館が開かれるために,学芸員はいわゆるアウトリーチ活動などで博物館からスラムや移民街に飛び出して行った。そしてさらに,単に出ていくだけでなく,まさに博物館が扱う価値あるものとして様々な民族の文化を扱い,そして様々な文化が出合える場所として,様々な民族による博物館が増えてきた。まさにそれはインリーチ活動,またはインリーチ活動の発展と名付けて良いであろう。
2003年,National Museum of African American History and Culture (全米黒人歴史文化博物館)を設置するという法案が可決した。素晴らしいことだと思う。http://www.si.edu/nmaahc/

多民族国家日本では,アイヌ民族に関する博物館が複数存在する。
北方少数民族資料館ジャッカ・ドフニ
http://homepage2.nifty.com/jakka_duxuni/
平取町立二風谷アイヌ文化博物館
http://www.ainu-museum-nibutani.org/html/mainN.htm
静内町アイヌ民俗資料館
http://www1.ocn.ne.jp/~sibchari/ainu.htm
川村カ子トアイヌ記念館
http://www.g-web.co.jp/ainu/history/
北海道立ウタリ総合センター
http://www.frpac.or.jp/link/ainu_center.html
アイヌ民族博物館
http://www.ainu-museum.or.jp/index.html
その他,屈斜路コタンアイヌ民族資料館,阿寒湖アイヌコタンなど。
しかし,朝鮮・韓国民族に関する博物館はひじょうに少ない。
丹波マンガン記念館
http://www6.ocn.ne.jp/~tanbamn/
高麗博物館
http://www.40net.jp/~kourai/
のほかには思いつかない。

「職員や評議員のほとんどがアメリカ先住民,アジア人,中南米系,黒人であり,かつ,利用者の大部分がこのようなマイノリティであるか,または博物館の目的がマイノリティの文化を保存しまた伝えていく」minority museum (少数民族博物館)。(アメリカ博物館サービス機構(現IMLS)による定義)。マイノリティミュージアムははゆっくりと社会に多文化を知り,尊重することを伝えていく装置である。

非常にプリミティブな感想にしか過ぎないが,冬ソナをきっかけとした韓流ブームが,今後継続的に日本国内の朝鮮・韓国文化を知りたいという動きにつながれば,朝鮮・韓国民族の文化を正しく保存し,正しく伝え,またいわゆる日本民族も含め様々な民族が出会うことができるminority museumの発展の何かのきっかけになるかもしれないが。