図書館への指定管理者制度導入に対する福岡県知事候補者の回答

ライブドアパブリックジャーナルニュースで,「福岡の図書館を見つめる会」が提出していた図書館への指定管理者導入等に関する公開質問状について,県知事候補からの回答が記事となっていた。

【PJ 2007年03月24日】−「福岡の図書館を見つめる会」(世話人代表・力丸世一氏)は3月9日付で、福岡県知事選に立候補する三氏に、「図書館政策について」の公開質問状を提出していた。18日までに回答を得たので、早速公開したという。PJは博多区図書館を利用しているが、本日(3月23日)同公開質問状が、資料としてフロントに展示されていたので、見る機会を得た。三候補が公共図書館についてはどのように考えているのか紹介する。

(質問)3)統計で見る福岡県立図書館は全国レベルで見ると大変低い位置にあります。県民一人当たりの資料費は14円、全国平均の28.5円にも及びません。第一位の鳥取県は185.1円。約12分の一です。また図書館の専門職である司書は年々減少、県民約1万6000人に1人と47都道府県の中で46番目。劣悪な状態です。(以下略)

イ)司書の専門性と継続性についてどのようにお考えですか?
ロ)県民1人当たりどのくらいの資料費が考えられますか?
ハ)福岡県として適正な蔵書数をどのくらいとお考えになられますか?
(以下略)

(質問)4)(略)中馬元国務大臣は「図書館は地域・国の財産」とまで発言しています。指定管理者制度との整合性を考えるとき、あなたはどのようにお考えかお教え下さい。特に他県と比べ、福岡県は指定管理者制度導入が一番多い県で、図書館政策が後退している現実は、次代の子どもたちへの読書教育・生きる力を養う観点からもご意見をいただきたいと思います。

稲富修二候補
3)(回答)イ)司書の方は、図書館に集まる何十万冊の本や資料の中から、その情報を吟味して利用ができるようにしてくれています。従って、その専門性と継続性は重要であると認識しています。
ロ)せめて、全国平均並に拡充していくことが必要。
ハ)県内すべての図書館の蔵書数は約1100万冊ですが、1人あたりの冊数は2.12冊であり、これについて当面は全国平均の2.7冊を目指して取り組んでいく必要があると思います。
4)(回答)県立図書館への指定管理者制度の導入は現在検討の段階と聞いていますが、図書館は「地域と県民の財産」であると認識していますので、県立県営で行うべきであると考えています。また今後の図書館の姿を考えると、NPO、ボランティア団体などとの協力を進め、図書館活動全体を充実させていく必要があると考えています。

麻生渡候補
3)(回答)イ)図書館における専門的なサービスを提供する上で、司書は大切な役割を担っており有資格者を確保し、サービスの向上に努めているところです。
ロ)ハ)できるかぎり多くの予算を確保し、蔵書が多ければそれにこしたことはありませんが、財源にも限りがありますので、できる限り効率的に資料を確保し県民の皆様のニーズにお応えしているところです。
 福岡県では、一般的な資料を市町村が、より専門的な資料を県が整備するという分担収集を行っております。これらの資料につきましては、県内のすべての公共図書館で「相互貸借」を行い、必要な資料を他の図書館から借りることができます。
 今後とも、県民の皆様が必要とする資料を効率的に収集して参ります。
 なお、福岡県は、県と市町村の資料費の合計額は全国で7番目、蔵書数は全国で10番目、年間受け入れ冊数は全国8番目であります。
4)(回答)福岡県立図書館は県が直接運営しております。

平野栄一候補
3)(回答)イ)図書館にとって専門職である司書の配置は必要不可欠で継続性を考えて正職員を配置すべきです。
ロ)県の財政力からして全国平均の28.5円は即可能です。計画的に県民一人あたり50円の資料費に引き上げます。
ハ)現在の蔵書数(05年度末)は64万6107冊(雑誌・新聞を除く)ですが、毎年5万冊づつ増やし5年後には90万冊といたします。・・・当面の計画。
4)(回答)図書館の運営は利益優先、コスト削減をめざす指定管理者制度に本来なじみません。直営を堅持して図書館を利用する県民の立場にたった運営を行うべきと考えます。県民一人あたりの教育費が全国41位、図書館の資料費(一人あたり)が全国平均の半額に満たない教育行政をあらゆる面で見直し、公立図書館(市町村立)の充実に努めます。

 同会のメンンバーは次の16団体で構成されている。
苅田町の図書館を語る会」、「筑後市公民館図書館を支える会」、「志摩町 水口」、「若宮市のわたしたちと図書館をつなぐ会」、「高田町 夢図書館の会」、「うきは市に図書館をつくる会」、「図書館フレンズ粕屋」、「みはし町の図書館を育てる会」、「柳川市ブックスタートボランティアネットワーク」、「柳川市おはなしネットワーク」、「三橋町 トトロ文庫」、「大和町 アリスの会」、「大和町 えほんの森」、「三橋町 村田」、「大和町 堤」、「身近に図書館がほしい福岡市民の会」以上【了】

パブリック・ジャーナリスト 徳島 達朗【福岡県】

稲富修二候補と平野栄一候補は図書館は県直営でやるべきと回答。
麻生渡候補は,回答を避けています。県の責任としての資料の整備についても,論点をずらしたというところでしょう。現状,福岡県の人口は全国9位ですから,県と市町村の資料費の合計額は全国で7番目というのは,「平均」という考え方から言えば,十分及第点でしょうけれど。
 麻生候補の言い分からは,その分,市町村に負担が行っているのは目に見えます。実は,県がある程度収集しなければ,市町村の図書館が重複して本を購入せざるを得ない場合も増えてきます。出版社にとっては良いことですが,人々の興味関心が多様化している生涯学習時代の今日では,希少本をより積極的に県が購入し,資料の相互貸借を行うことでより多くの住民ニーズに応えることができるのは明らかなんですけれどね。