陸前高田市立博物館の小山さんの話

6月21日の朝日新聞の記事から

あなたのタグがあったから−陸前高田の博物館 不明職員の力作 収蔵品回収の命綱
東日本大震災で被災、職員全員が津波にのまれた岩手県陸前高田市立博物館。がれきに紛れた貴重な収蔵品探しに、「防水タグ」が手がかりになっている。行方不明の嘱託職員の小山典子さん(53)が10年がかりで付けたタグだった。
「ダイナオシカンナ」。見つかった古い大工道具には登録番号や寄贈者、保管棚が書かれたタグが付けられていた。15万点の収蔵品のうち数万点に付けた「小山さんのタグ」だ。
小山さんが勤め始めたのは20年前の発掘を手伝うアルバイトがきっかけ。「几帳面な仕事ぶり」が見込まれてスカウトされ、資料整理や事務をこなしてきた。
10年前、紙のタグは破れやすいから、と防水タグを作り始めた。単調で正確さが求められる作業。収蔵品に一番詳しくなり、新しい学芸員は小山さんに資料の場所を尋ねていた。
被災後、避難者名簿で小山さんを見つけた元館長の本田文人さん(72)は「博物館の復興は大丈夫だ」と思った。だが、名簿は間違いだった。夫の仁一さん(59)が探し回ったが、姿はどこにもなかった。
「先に寝て」と、持ち帰った仕事をする妻を思い出す。結婚27年。「来年、新婚旅行先の九州を裁縫しよう」との約束はかなえられそうにない。でも、仁一さんは「真面目に生きた証しが残ったんだな」と話す。
所蔵品を真水で塩抜きする元同僚がぽつりと言った。「小山さんがいてくれればなあ」。みんながうなずいた。(波多野陽)

記事はいささかオーバーかと。 でも,タグが資料を救っている。
合掌。