カニは横に歩く 自立障害者たちの半世紀
誤解を恐れずに言えば,過去一時期,障害者解放運動の中で光芒を放っていたCP(脳性マヒ)者による青い芝の会。その闘いの歴史の中心にいた人に寄り添い,また突き放しながら,単なる
ルポルタージュでなく,角岡さん自らの生き様も重ねながら記された本です。本書は,障害者解放運動に,人権問題に,もちろん青い芝の会に様々な意味で関心を持った人にも,全ての人にもぜひ一読願いたいと思います。
森見さん特有の不思議な時空の中。少年とお姉さんと少女,その他の少年たちのお話。甘酸っぱさと寓意に満ちて読み応えあり。
鳥籠荘の今日も眠たい住人たち
アンニュイの背後に充ち満ちる清冽さと,とんがり具合。深みは感じないが,クリアさが心地よい。続編はいずれ。
十字架
重松氏の本は『
再会』以来。重い。きらめくわけでもない。心の中の対話が重く,辛く,でも道にもなる。この人の本は好きです。
おっぱいとトラクター
原題は,『
ウクライナ語版ト
ラクター小史』。
ロシア革命以前からの
ウクライナの歴史の中で翻弄されて現在に繋がるある老人の娘を語り手に進むどたばた喜劇。なぜか,最寄りの図書館では
ヤングアダルトのコーナーに置いてあるんですが,
ロシア革命が通底するテーマになっているものですし,一般書のところに置いた方が明らかに良い。特に伝えていませんが。
チビ竜と魔法の実―シノダ!
信太の森の葛の葉伝説を借景とした小説です。以前紹介した『
樹のことばと石の封印』と,同じシリーズの中で比較すると,第1巻のこちらの方は少し弱い。とはいえ,児童書ではあるのですが,このシリーズは読んでいきたい。
その他,お勧め本として,官僚の仕事の進め方(必ずしも悪い意味ではない,緻密さという意味で)が興味深かった『
官邸敗北』,
映画化された自伝ドキュメンタリー『
奇跡の6日間』もお勧め。
今二つのものとして,『封印』。
amazonのカスタマーレビューでは評価が高いのだけれどもどうもお勧めできない。
元
産経新聞社会部記者が書いた自叙伝的小説。
大阪府警の賭博ゲーム機
汚職事件の取材についてのお話。文章がひどく,つまらないところをくどい言い回しで400ページ以上の大部となっているが,中身はない。取材記者と警察,検察の癒着の話として以上の価値はない。それにしても,『ガラスの巨塔』の今井氏にしてもそうだが,どうしてマスコミの人の自叙伝的小説というのは誇大妄想気味にして気色悪く感じるんだろう。