ゼンショーすき家の過酷な労働環境の良くわからないニュース

すき家」を運営する(株)ゼンショーの残業代未払い問題は,もう有名なところです。ウィキペディアの「すき家」のページにも,わざわざ「残業代未払い問題」と項を立てて,その問題を取り扱っています。
どうも,残業代を払わない(株)ゼンショーならではの理由もあると書かれていて,それは,「会社とアルバイト間の関係は「労働契約」関係ではなく、「業務委託」関係である」との不可思議な考えに基づくようです。アルバイトの「請負業務」に関して会社側が実質的に労務管理を行い,会社が定めた「時給」で「給料」が支払われて,さらに「時給」に基づく「給料」から「源泉徴収」が行われているとのこと。飲食産業の労働環境の悪化のリーディングカンパニーといったところでしょうか。
さて,2010年8月27日の共同通信の記事に次のようなものがあります。

すき家」未払い残業訴訟終結 ゼンショーが請求認める
牛丼チェーン「すき家」などを運営する外食大手「ゼンショー」(東京)に対し、アルバイト3人が未払い残業代など計約99万円の支払いを求め東京地裁で争っていた訴訟で、ゼンショー側が原告の言い分を認めて争わない意思を示す「認諾」をし、訴訟が終了したことが27日分かった。
原告を支援する首都圏青年ユニオン(東京)が明らかにした。
ユニオンなどによると、仙台市の女性(43)ら3人は2000年以降、同市のすき家店舗でアルバイトをし調理や接客を担当。多いときには月169時間の残業もしたが、ゼンショー側は支払いを拒否し、話し合いにも応じる姿勢を示さなかったため、08年4月提訴。ゼンショー側は今年8月26日、認諾したという。
ゼンショー広報室は認諾の事実を認めた上で「コメントは差し控えさせていただきます」としている。
共同通信

さすがに,(株)ゼンショーも,自分のトンデモ主張を貫くことができなかったかと,アルバイトの労働環境も,少なくても,一時的には良くなるだろうと思っていたところ,本日次のようなニュースが同じく共同通信の記事にありました。

すき家のアルバイト女性が提訴 団交に応じないのは不当と
外食大手「ゼンショー」(東京)が経営する牛丼チェーン「すき家」でアルバイトとして働く仙台市の福岡淳子さん(43)と支援する東京公務公共一般労働組合が13日、同社が未払い賃金などに関する団体交渉に応じないのは不当として、計約360万円の損害賠償を求め東京地裁に提訴した。
訴状によると、福岡さんは2000年、仙台市の店舗にアルバイトで入り調理や接客を担当。組合は福岡さんらの時間外手当の支給などを求め同社に団交を申し入れたが07年以降、話し合いに応じず、未払い賃金約60万円のほか、組合活動にかかる集会費用や交通費などで約300万円の損害を被ったとしている。
福岡さんの代理人の弁護士は「労組と一切テーブルにもつかない状態が長期間続くのは聞いたことがない」としている。
共同通信

どうも,ゼンショーの姿勢は,「残業代は払います。でも,組合とは交渉しません」というものだったようです。
東京都労働委員会ゼンショーに対する「団体交渉に誠実に応じること」という命令(2009年11月4日)に対し,ゼンショー中央労働委員会に再審査を申し立てていました。そして,まさに上記記事にある2010年8月26日,中労委は「団交申入れに応じないことが不当労働行為に当たる」として,再審査を棄却したことをゼンショーに伝えています→命令書(厚生労働省のサイトです)。合わせ技で,残業代も,団交も認めたということだと思っていたのですが,そうではなかった。なかなか斜め方向に飛んでいく会社のようです。


安く飯が食えるのは嬉しいことではあります。しかし,例えば片や不当労働行為を働くブラック会社ゼンショーすき家,片や労働基準法を守っている会社・○○が,自由マーケットで競争するとどうなるのか。労働基準法を守る会社は例えば,利益を上げられなくなり撤退するか,またはブラック化への道を踏み出すことは十分考えられます。
最低限のルールがあるから,自由なマーケットの良さが働くのであって,ブラック会社だ政商だが出てくると,マーケットはとたんにその自由さを失う。10円安い20円安いと言っている場合じゃなくなるわけです。
というわけで,すき家には行っていません。