全国障害者スポーツ大会と福岡県行政

10月9日の毎日新聞の記事から

障害者国体:福岡県「予算不足」で辞退させる/地区大会優勝の2チーム
10〜12日に新潟県で開かれる第9回全国障害者スポーツ大会(トキめき新潟大会)の団体競技部門で、福岡県の知的、聴覚障害の男子2チームが、九州地区大会で優勝したにもかかわらず、県から予算不足を理由に出場を辞退させられたことが分かった。県は「大会の趣旨は競技で勝つことではなく、障害者の社会参加」と説明するが、関係者からは「実力で勝利しても選手として扱われないのか」と憤りの声が上がっている。【夫彰子】
全国障害者スポーツ大会は、国体に続き開催される「障害者の国体」。今大会事務局によると、団体競技は全国6地区の優勝チームや開催地チームが参加する。九州地区大会は4〜5月に各地で開かれ、福岡県の団体は▽男子バレーボール(聴覚)▽男子バスケットボール(知的)▽グランドソフトボール(身体)▽女子バレーボール(知的)−−の4チームが優勝した。
 しかし県は6月「予算の都合がつかない」として、4チームのうち男子の2チームに全国大会の辞退を通知した。大会事務局によると、予算不足を理由に地区の優勝チームが参加しないのは福岡県だけという。
 県障害者福祉課によると、全国大会参加者の宿泊・交通費は全額県が助成する。県は今年度予算で、これらを含む「障害者スポーツ振興事業費」を約2000万円計上したが、全国大会出場関連費は2チーム分だけ。4チームすべてが全国大会に出ると、300〜500万円の予算が不足するという。
 そこで県は、全国大会への出場回数が少ない女子の2チームを選出。男子の2チームに辞退を通知した。男子2チームの関係者は「補正予算で対応できないのか」「自己負担になっても良いから出場させて」と訴えたが、認められなかった。
 県体育スポーツ健康課によると、主に健常者を対象とする国体の場合、出場チームの増加などで宿泊・交通費が当初予算を上回った場合は、補正予算を組むという。障害者スポーツ大会との対応の違いも問われそうだ。
 県障害者福祉課は「全国大会に行きたい気持ちは分かるが、大会の趣旨は障害者の社会参加。限られた予算で幅広い人に全国大会を経験してもらうための判断だった」と話す。
 これに対し、辞退させられたチーム関係者は「障害があってもなくても、勝利を目指すアスリートであることに変わりはない。全国大会への道を阻むことが『社会参加』なのか」と反発している。
◇夢を断つ「お役所対応」、県「自己負担の前例作れぬ」◇
 「全国優勝」という選手たちの夢は「県の予算不足」という思わぬ形で断たれた。10日開幕の全国障害者スポーツ大会(トキめき新潟大会)への出場を、福岡県に辞退させられた二つの男子チーム。選手を間近に見てきたコーチの一人は「選手たちは悔しさを通り越し、あきらめの心境です」と、やりきれない思いを訴えた。
 「おれたちが地区大会で優勝しても、県は喜んでくれん……」
 今回の大会への不参加が決まった知的障害の男子バスケットボールチーム「福学クラブ」の選手たちは、山下尚子ヘッドコーチ(43)に対し、無念の思いを口にした。
 福学クラブのメンバーは、10〜30代の計13人。00年のシドニーパラリンピックで日本代表に選ばれた田仲武弘選手もメンバーに名を連ねる。練習は毎週日曜日の午後。メンバーは働きながら、あるいは通学しながら、週1回の練習で実力を磨き、九州屈指の強豪に成長した。
 九州地区大会を制した自負を胸に「次は全国優勝」と夢を膨らませようとした矢先の、県からの辞退通知。チームは「予算不足が理由なら、足りない分は街頭募金で県民に支援を訴えてでも自分たちでかき集める」と訴えた。だが、県から返ってきたのは「自己負担の前例は作れない」という「お役所言葉」だった。
 「大会の趣旨は勝敗ではなく社会参加」と説明する県。山下さんは憤りで声を震わせながら「可能性を摘み取ることが社会参加なのか」と訴えた。「スポーツは実力勝負だからこそ、強いチームや選手が生まれ、彼らにあこがれた他の選手や子供たちに競技が普及していく。選手の望みは県の施しではなく、健常者と同じアスリートとして扱われることなんです」

調べてみると,第9回全国障害者スポーツ大会福岡県選手団は総計114名(役員46名,個人選手44名,団体競技選手24名)とのこと。
記事で取り上げられたのは団体競技で,グランドソフトボール14名(男子)と,女子バレーボール10名が選手団に加わっているものの,男子バレー,男子バスケは選手団から排除されています。
経緯は,まだ良く分かりませんが,福岡県行政の基本的な立ち位置も含め,注視したいと思います。

10月11日追記

10月10日の毎日新聞の記事から

全国障害者スポーツ大会:福岡県辞退強要 「団体競技は2チーム以内」県が基準−「辞退」繰り返す可能性
第9回全国障害者スポーツ大会(トキめき新潟大会)に、九州地区大会を制した福岡県の男子2チームが県から予算不足を理由に出場辞退させられた問題で、県が今年度から「全国大会の団体競技枠は2チーム以内」との選考基準を設けていたことが分かった。来年度以降も同様の事態が繰り返される可能性があり、関係者は見直しを求めている。
 新基準は「全国障害者スポーツ大会福岡県選手団選考基準要綱」で定められ、今年2月1日に施行された。団体競技だけでなく、個人競技も出場は「通算3回以内」と制限。好成績を収めても、全国大会に出場させないことを容認する内容になっている。
 要綱によると、団体競技は地区大会を優勝したチームのうち「2チームを選考」し、3チーム以上優勝した場合は「連続出場ではない」「過去の出場経験が少ない」チームを優先する−−と規定。個人競技では出場回数を「生涯通算3回まで」に絞り、「原則、2年連続出場は不可」としている。県はこの要綱に沿って、身体障害のグランドソフトボールと、知的障害の女子バレーボールの2チームしか全国大会参加を申請しなかった。
 要綱について県障害者福祉課は「地区優勝チームはすべて全国大会に出られるよう国の補助があれば良いが、県が負担する以上、限られた予算で最低2チームは出場できるよう検討した」と説明する。
 しかし、要綱によって出場制限が常態化すれば「実力のあるチームが全国大会に出られない」という不公平につながる恐れがある。
 福岡県聴覚障害者協会の田口博人理事長は「要綱の内容は障害者スポーツの発展に逆行するもので、県や国に改善策を求めていく」と話している。【夫彰子】

福岡県の立ち位置もそうだが,そもそも,厚生労働省の「全国障害者スポーツ大会」の位置づけに関わる問題のような気がしてきた。

ちなみに,主催者の一人である(財)日本障害者スポーツ協会によると,全国障害者スポーツ大会の目的は,「パラリンピックなどの競技スポーツとは異なり、障害のある人々の社会参加の推進や、国民の障害のある人々に対する理解を深めることにある」とのこと。一方,国民体育大会は,文部科学省が所管をして,スポーツ振興法に定めるスポーツの振興のための措置の一つとして実施されるものである。

全国障害者スポーツ大会を,国民体育大会とセットで実施するのであれば,その位置づけを考え直すことが必要ではないでしょうか。

10月14日追記

10月14日の西日本新聞の記事から

「多くの選手の参加を」 全国障害者大会 出場辞退問題 県スポーツ協会 知事に要望書
新潟県で開かれた全国障害者スポーツ大会をめぐり、県が九州大会で優勝した2チームの出場を辞退させていた問題で、県障害者スポーツ協会は13日、可能な限り多くの選手・団体の参加を求める要望書を麻生渡知事あてに提出した。
 県は2月、予算的な制約を理由に全国大会出場の団体競技を2枠とする選考基準を決定。各競技団体などに通知していたというが、辞退させられたチームの選手や関係者からは疑問や不満の声も出ている。県庁を訪れた城野正治事務局長は「全国大会出場の経験はいろんな面でプラスになる。九州大会で優勝したチームはすべて出ていただきたい」と語った。
 要望書を受け取った吉岡正憲・県福祉労働部長は「優勝チームは(必ず)全国大会に出るという方針は従来もなかった。各団体のいろんなご意見をうかがい、納得いただける基準にしたい」と話した。

国民体育大会への派遣費については,全額県教委が負担している県がほとんどのようですが,調べた範囲では,佐賀県教委は半額補助なんですね。残りは結局,今年度は,県体育協会がをスポーツ振興基金約4億円の中から約3000万円を取り崩しているようです。また,福岡県では,公開競技のトライアスロンについては県教委は負担はせず,正式競技には全額支出しているようですが(トライアスロンについては,県トライアスロン連合が募金を行いました)。
少なくても福岡県においては,全額を県が負担するという国民体育大会への派遣と,予算ありきの全国障害者スポーツ大会への派遣とを,ダブルスタンダードで取り扱っているわけです。どんな結果になるかはともかく,基準の見直しに着手することになります(11月6日追記:吉岡福祉労働部長のコメントは「納得いただける基準にしたい」とのみですね。「見直しを検討する」ということすら行っていない。「見直しを検討する」というのは,ある意味役所用語で,「見直すかどうか,これから検討する」ぐらいの意味のことを考えれば,まだまだ,福岡県行政担当者がとても見直しに着手するとは思えない段階です)。ただ,これは決して,福岡県だけの問題ではない。

10月21日追記

10月20日の毎日新聞九州版の記事から

全国障害者スポーツ大会:福岡県辞退強要 麻生知事「制限妥当」
 ◇予算不足理由「五輪と違う」
新潟県で開かれた第9回全国障害者スポーツ大会(10〜12日)の団体競技部門に、福岡県が九州地区大会を制した男子2チームを「予算不足」のため出場辞退させた問題で、麻生渡知事は20日の定例会見で「勝ったから必ず出られるという考え方で良いのか。予算の事情もある」と、県の出場枠制限を妥当とする見解を述べた。
 県は2月から「地区大会の戦績に関係なく全国大会の出場団体は毎年2チーム以内」とする選考基準を施行。聴覚男子バレーボールと知的男子バスケットボールについて「全国大会出場歴がある」と参加辞退させた。
 麻生知事は「障害者スポーツは強ければ良いわけじゃない。オリンピックとは違う」「(記録を競う)普通のスポーツと同じ考え方をしている人がいるが、本当にそれで良いのか」などと述べた。また「予算が無制限なら問題は生じないかもしれない」と、予算不足が辞退強要の理由だったことを認めた。
 出場できなかった知的男子バスケの山下尚子ヘッドコーチ(43)は「『障害者スポーツは競技性より社会参加』と言うなら、地区大会をする意味はない。勝っても報われなければ『頑張って練習しよう』という意欲がそがれ、障害者スポーツは発展しない」と嘆いた。
 国民体育大会は「予算が足りなければ補正予算で対応する」(県体育スポーツ健康課)としている。【夫彰子】

そうですか。やはり「(記録を競う)普通のスポーツ」じゃないんですか。まあ,全国障害者スポーツ大会自体,確かに「競技スポーツとは異なり」と言っていますからね。でも,それなら,予選も必要なければ,金メダルも必要ではない。知事の恩恵で,エントリー者の中から順繰り,または抽選で参加させれば良い。
でも,それで「障害のある人々の社会参加の推進や、国民の障害のある人々に対する理解を深める」ことが達成できるのでしょうか。

10月23日追記

順番が前後しますが,10月18日の毎日新聞九州版の記事から

全国障害者スポーツ大会:福岡県辞退強要 男子バレー前主将、「悔しい」手話で訴え
◇「なぜ」選手の心に傷
 10〜12日に新潟県で開催された第9回全国障害者スポーツ大会を巡り、九州地区大会の団体競技部門を制した男子2チームを「予算不足」と出場辞退させた福岡県の決定は、仕事や通学の傍ら「日本一」を目指してきた選手たちに、深い傷を残した。「自分たちは勝ったのに全国大会に行けなかった。それが悔しいし悲しい」。出場辞退を強いられた聴覚障害の男子バレーボールチームの前主将(27)が手話で繰り返した言葉は「悔しい」だった。【夫彰子】
◇県との議論平行線
 「もうダメかも。でも何とかならないか」との思いで、前主将が福岡県聴覚障害者協会にメールで助力を求めたのは6月25日。出場枠の制限を巡り、同5日と17日、県と各チームの協議があった。
 選手側は再三「健常者の国体は参加資格のある団体すべてが出場する。なぜ障害者はダメなのか」と訴えたが、議論は平行線のまま。事態を知った協会が県に方針撤回を求めても「予算がない」という結論は変わらない。5日後の同30日、全国大会の参加申請は締め切られた。
 前主将は高校時代にバレーボールに出会った。当時、同じアタッカーだった元全日本エース・中垣内祐一さんにあこがれた。19歳で聴覚男子バレーチームに。以来、平日は地方公務員として勤務しながら毎週土曜日、福岡市内の中学校体育館で練習を重ねてきた。
 昨秋、大分県で開かれた全国大会後に主将を任された。「来年は大分で1回戦負けした愛知県のチームに勝ち、初の日本一になる」と誓った。だが、「自分たちは『予算不足』の一言で出場さえできなかった」。今年の新潟大会で、日本一に輝いたのは雪辱を期した愛知のチームだった。
 昨年の大分大会でも、聴覚男子バレーなど4チームが地区大会で優勝したが、県は「全国大会の派遣費用は2団体分しかない」。過去のユニホームを再利用し、本来6日の滞在日数を2日減らす−−。昨年、不参加チームがなかったのは、県が選手らに“節約”を課したからだ。
 「自分も他の選手も皆、勝ちたいから練習し試合をしてきた」と前主将。新潟行きが途絶えた後、チームから2人が去った。残ったメンバーは今も毎週、練習を続けている。

「新潟行きが途絶えた後、チームから2人が去った。」


10月21日の毎日新聞九州版の記事から

全国障害者スポーツ大会:福岡県辞退強要 勝っても報われぬ 知事発言に関係者ら怒り
新潟県で開かれた第9回全国障害者スポーツ大会(10〜12日)の団体競技部門に、福岡県が予算不足を理由に九州地区大会を制した男子2チームを出場辞退させた問題で、麻生渡知事は20日の定例会見で「障害者スポーツは強ければ良いわけじゃない」と述べた。県の出場枠制限を肯定する発言に、関係者からは「頑張って練習し勝利しても報われない。悔しさを知事は理解していない」と失望と怒りの声が上がった。
 2月に実施された同制限は「地区大会の戦績に関係なく、全国大会出場は2団体以内」とする内容。今春の地区大会を制した聴覚男子バレーボールと知的男子バスケットボールは「全国大会出場歴がある」として参加を辞退させられた。全国障害者スポーツ大会に先立ち同一会場である国民体育大会について県は「予算が足りなければ補正予算で対応する」としている。
 麻生知事は「障害者スポーツはオリンピックとは違う。今回、(記録を競う)普通のスポーツと同じ考え方をしている人がいるが、本当にそれで良いのか。予算の問題も考えなければならない」と話した。
 この発言に、聴覚男子バレーの前主将(27)は「障害者スポーツは勝負することに意義がある段階まで発展し、日本一を目指すチームも存在する。出場枠制限を撤廃し、チーム数が多ければ自己負担でも参加を認めてほしい」。知的男子バスケの山下尚子ヘッドコーチ(43)は「勝敗を評価しないなら地区大会の意味がない。選手が求めているのは『障害者だから』という特別扱いではなくアスリートとして尊重されること」と憤った。【夫彰子】

麻生知事の会見での発言から

今回、問題になっているバスケットなどの2チームですが、バスケットのチームは、確かに強くて、九州で6連覇しています。それ自体は立派なことですが、全国大会に出場するということになると、このチームは6連覇したうちもう4回出場しています。そのような状況から、今回のような場合には、予算の制約もあるため、新しいチームに譲ってやって欲しいという考え方でやっているわけです。

「譲ってやって欲しい」ということを福岡県行政のトップが発言しています。でも,福岡県行政が言ったのは「出るな」ということです。
「譲る」ということは,例えば,地区予選で優勝したチームが,「我々は全国大会の出場経験があるから」と言って準優勝のチームに譲るということです。予選を勝ち抜いた1チームのみが全国大会に出られるときに,それを譲ると言うことです。
今回の福岡県行政がやったことは,そうではなくて,県の恩恵として2チームを全国大会に出場させる。地区予選を勝ち抜いたのが4チームあったとしても,4チームのうち2チームにのみ,県行政トップの判断で恩恵を与えると言うことです。それを「譲ってやって欲しい」とは,税金の執行権を持っているからといって思い上がりもいい加減にしろと言いたい。

11月6日追記

11月6日の毎日新聞九州版の記事から

障害者スポーツ大会辞退:出場枠制限は福岡県のみ/「勝敗より社会参加」の県見解に主催者から疑問
全国障害者スポーツ大会の団体競技派遣チーム選考の際、地区予選の成績と関係なく予算の都合で出場枠を制限しているのは、全都道府県・政令市で福岡県しかないことが、毎日新聞の調査で分かった。県は「大会の趣旨は勝敗より社会参加にあるため」としているが、大会主催者は「趣旨を適切に解釈していないのではないか」と疑問を呈している。
 福岡県は「予算不足」を理由に今年2月、障害者スポーツ大会の出場枠を2チーム以内とする選考基準を導入。今春の九州大会で県内4チームが優勝したが、10月に新潟県であった第9回全国大会には、過去に複数の出場歴がある男子2チームを参加させなかった。
 毎日新聞は他の46都道府県と18政令市に、地区大会の戦績以外に選考基準を設けているかなどを聞いた。その結果、静岡県が「設けている」と回答したが「本人に参加意思があり、職場・学校の協力が得られるか否かを配慮する」との内容で、福岡県のようにチーム数に上限を設けた自治体はなかった。
 また、地区大会の優勝チーム数が予想を超えて派遣費が当初予算を上回る場合については、29都府県12市が「補正予算で対応する」と回答。15道県5市は「その他」を選び、「派遣する役員数を減らす」(熊本県)や「個別に対応を検討する」(宮城)などと付記した。神奈川と奈良の2県は「当初予算内で対応する」が、チーム数は制限していない。
 全国大会の開催基準要綱は団体競技について、全国六つの地区大会を「予選会」と位置付け、出場チームは原則「予選会によって決定されたチーム」と明記している。
 この点について、厚生労働省は「チーム数が少なく予選ができない種目もあるが、予選を実施した場合は、その結果が第一義的に優先される」と指摘。厚労省などと大会を主催している日本障害者スポーツ協会は「出場歴を考慮するなら、初出場者を登録メンバーに加えるなどの方法を取るべきで、福岡県の対応は疑問」と話している。【夫彰子】
 ◇アンケートの概要◇
 全国障害者スポーツ大会について選手団派遣元である都道府県と政令市を対象に実施(福岡県は除く)。質問は<1>選手団派遣に要する宿泊費や交通費は全額公費負担か<2>派遣費が当初予算を超えた場合の対応<3>派遣選手を選ぶ際、試合記録以外で独自の選考基準を設けているか<4>過去に好記録の選手・チームが自治体の独自基準で全国大会に出場できなかった例はあるか。


理念はともかく,大会の予選については制度的も分からないところもあって,全国大会の開催基準要綱では,当然,予選会が全国障害者スポーツ大会のブロックごとの予選会という位置づけになっていますけれども,都道府県・指定都市レベルでは,都道府県・指定都市が派遣選手を選考するための予選会として独自に定めていることになっています。その「派遣選手を選考する」部分で,毎日新聞がアンケートを行った結果が記事になったものということです。
そしてその結果,福岡県以外は,全国大会の開催基準要綱を尊重している。そういうことが明らかになったと。
少し前ですが,同じく毎日新聞九州版の10月28日の記事から

全国障害者スポーツ大会:福岡県辞退強要 「予算ない」知事発言に疑問の声
第9回全国障害者スポーツ大会(10〜12日)の九州地区大会を制した福岡県の男子2チームを、県が「予算不足」で全国大会出場を辞退させた問題で、麻生渡知事が、20日の定例会見で出場枠制限は妥当との見解を示したことを巡り、全国の障害者団体やスポーツ選手から疑問の声が上がっている。
◇競う場をなぜ与えぬ 差別の容認に等しい
 全国大会は選手たちが競い合って出場を勝ち取る場なのか、行政が障害者に与える「社会参加の機会」なのか−−。発言とそれへの批判は大会の意義そのものを問いかけている。
 「知事は障害者スポーツを一体どう認識しているのか非常に疑問。真剣に練習する選手たちの姿を見たことがあるのでしょうか」。水泳選手の成田真由美さんはそう憤る。
 96年のアトランタ大会以来4回連続でパラリンピックに出場し、計15個の金メダルを獲得したが、当初は「スポーツ担当記者にさえ『パラリンピックって何?』と言われるほど社会の理解がなかった」。障害者スポーツを競技として普及・発展させてきた第一人者として「実力があるのに競う場を与えてもらえなかった選手たちを思うと、『勝てば良いわけではない』という発言は非常に残念」と語る。
 一方「予算が足りなければ補正予算で対応する」(県体育スポーツ健康課)という国民体育大会との違いを問題視する意見も多い。
 日本障害者協議会常務理事の藤井克徳さんは「日本が署名した障害者権利条約は、障害を理由としたあらゆる差別を禁止している。県の対応は条約の精神に明らかに背く」と指摘。「知事発言は、県政の最高責任者が行政による障害者差別を容認したに等しく、看過できない」と厳しく非難する。
 障害者への差別・虐待問題に詳しい田中幹夫弁護士も「障害者スポーツだけ全国大会への出場枠を制限するのは差別的」と批判的だ。

藤井日本障害者協議会常務理事のコメントに全面的に賛同します。
また,10月30日の毎日新聞九州版の記事から

全国障害者スポーツ大会:知的障害種目「出場」事前協議で調整
◇九州各県担当課長「地域均衡図るため」 ◇「密室談合」と指摘も
 第9回全国障害者スポーツ大会(10〜12日)の九州地区大会終了前、九州各県の担当課長が知的障害種目に限り、各県から派遣するチームを調整していたことが、29日分かった。身体、精神障害者については調整はなく、関係者は「差別ではないか」と嘆いている。同大会では九州大会を制した福岡県の男子2チームが県から出場を辞退させられている。【夫彰子】
同日の福岡県議会決算特別委員会で、高橋雅成議員(公明)の質問に県が答えた。
 それによると、4月に各県の障害福祉の主管課長らが佐賀市内に集まり、自県チームを出場させたい種目を挙げ、希望が重複しないよう協議した。ただ、宮崎県は「地区大会優勝チーム」▽佐賀、大分、鹿児島の3県は「希望なし」−−とし、調整を求めなかった。
 一方、福岡県は既に地区優勝していた男子バスケを「第1希望」に挙げた。しかし翌5月、女子バレーも優勝したため、全国大会出場初出場の女子バレーだけを派遣した。長崎と熊本は希望した各1チームが出場した。
 知的障害者団体競技は7種目あり、うち4種目で4〜5月に地区大会が開かれた。2種目を制した福岡県以外では宮崎、長崎のチームが優勝し、全国大会不参加は福岡の男子バスケだけだった。福岡県はこのほか身体障害者団体競技でも、地区大会を制した聴覚男子バレーが出場を辞退させられた。
 高橋議員は「密室の談合とも言える主管課長会議を廃止し、地区大会のみを基準とすべきだ」と指摘。これに対し、吉岡正憲・県福祉労働部長は「出場チームが一県に集中しないよう均衡を図る必要がある」と正当性を主張したが、改めて麻生渡知事の答弁を求めることになった。課長会議を知った福岡県知的男子バスケの山下尚子ヘッドコーチは「話し合いで決めるなら、地区大会を開く意味がない」と話した。
 委員会では加地邦雄(自民)、守谷正人(民主・県政クラブ)の両議員も福岡県が独自に設けている障害者の出場枠制限について質し、吉岡部長は「納得できる選考にするため、関係団体や各県との協議が必要と思う」と答えた。

11月10日追記

11月7日の毎日新聞西部朝刊の記事から

全国障害者スポーツ大会:出場問題 数制限撤廃が焦点 麻生・福岡県知事、見直し明言
福岡県が全国障害者スポーツ大会の団体競技部門に派遣するチーム数を地区予選結果に関係なく制限している問題で、麻生渡知事は6日の県議会で、選考方法を見直す考えを明らかにした。知事の発言を受け、県は近く関係団体と新たな選考方法について協議する考えで、出場枠の制限を撤廃するかどうかが焦点になる。
 県議会で麻生知事は、先月の同大会で2チームの出場を辞退させた対応に「妥当ではないという声が強い」ことを認めた上で「皆さんが納得できるよう新しいルールを検討する」と明言した。ただ、辞退させる原因となった出場枠制限自体の撤廃については明言していない。
 今後の協議について、県障害者福祉課は「どの団体と協議するかや、新基準の内容は現時点では未定」としているが、出場枠制限を撤廃するかどうかも検討対象となるのは必至だ。
 全国障害者スポーツ大会の開催基準要綱は、団体競技の出場チームを「予選会で決定」と明記している。国体と異なり、選手は地区予選の遠征費を自己負担しており、選手の間では「自分たちの力で地区優勝したのに、なぜ全国大会に出られないのか」との不満が出ていた。
 知事の発言に対し、団体競技の関係者らは「協議の場に競技団体も参加させてほしい」「勝敗を懸けて真剣にスポーツに取り組む障害者もいる。出場枠制限は撤廃してほしい」と訴える。他県からも「チーム数の少ない競技は予選自体開けないのが現実だが、予選ができる種目については『優勝チームが全国大会に出場できるよう県は予算措置をする』と、共通ルール化した方が望ましい」(大分県)などの声が上がっている。【夫彰子】

知事が選考方法を見直し,「新しいルールを検討する」と明言したとのこと。毎日新聞GJ!ですね。
さて,障害者スポーツ大会をどう捉えるかについては,さまざまな意見・見方があるところで,パラリンピックについても,ルールが変わってきているところであって,本来,今回の問題についても福岡県だけの話ではないと考えております。しかし,見直すという機運が出たことは素晴らしい。ぜひ,当事者を交えて議論いただきたいと思います。

2010年7月10日追記

福岡県議会予算特別委員会(2010年3月17日)の会議録から

◯高橋雅成委員 公明党の高橋です。
 カナダで冬季のパラリンピックがあっています。障害者スポーツの頂点の世界の大会だと思いますけど、国内の障害者スポーツの最高の戦いの場は、競技の場は、全国障害者スポーツ大会であります。昨年から問題にしましたけれども、この全国障害者スポーツ大会は、国体の後に国体開催地で行われている障害者スポーツの祭典でありまして、昨年は新潟県で行われております。
 この際に、九州ブロック大会で優勝した福岡県の二チームが、予算がないという理由で、福岡県から全国大会の出場を辞退させられたという問題が起こりました。ゆゆしき問題だと私は思っております。この問題で、昨年の決算特別委員会で、私もしましたし、自民党の加地先生と民主党の守谷先生も質問しました。その場で知事は、今後どうするかを各県、各団体と話し合いながら、皆さんが納得できるような新しいルールを検討すると答弁をしております。さらに、この議会の一般質問で私は、いつまでにこの新しいルールをつくるのかということを質問しました。知事は、できるだけ早い時期にという答弁でありました。
 まず、吉岡部長にお伺いしますけど、知事が昨年の決算委員会で、皆さんが納得できるような新しいルールを検討すると言われた、この皆さんというのは何ですか。
◯新村雅彦副委員長 吉岡福祉労働部長。
◯吉岡福祉労働部長 この障害者の団体競技にかかわってある方々と理解しております。
◯高橋雅成委員 障害者スポーツにかかわりのある方々ですか。障害者スポーツをやられているという方ということで理解していいですか。
◯吉岡福祉労働部長 やられている方ももちろんでございますし、そうでない方も含めて、障害者スポーツとはそうあるべきであろうと考えております。
◯高橋雅成委員 この質問に当たりまして、私、また今回も障害者スポーツに携わっている方に、吉岡部長が言われました、まさしく携わっている方にお話を、複数の方にお話をお伺いして、この場に立っております。
 この方々の話の要約ですけれども、「全国障害者スポーツ大会は、交流の場ではなく、競技の場である。親睦的な交流の場はほかに幾らでもある。パラリンピックでさえも、昔はお祭りであり、リハビリの場でした。しかし、今は競技の場となっております。九州大会で勝ったチームは全国大会に参加させるべきです」。それから、「交流の場ということにいつまでもこだわっていたら、障害者スポーツの発展はありません。全国大会でトップに立ち、それから他の条件もクリアして、パラリンピックに出場できるんです。障害者は勝たないと出られないと、当然のこととして思っております。若い人が力をつけて、今のトップ選手やチームを追い越すように訓練しなければならないと思います。県はそのために何も努力してくれておりません。一番大事なのは、スポーツをやっている人がどう感じているかです。障害者スポーツをやっている人に直接意見を聞いてほしい」とおっしゃっておりました。
 そこで、課長にお伺いしますけど、昨年の決算特別委員会から今日まで、選考基準要綱の改定、あるいは納得できるルール作成への検討状況はいかがか、また、そのどういう方たちと検討してこられたのか、話し合いの内容や結果はどうだったのかについてお伺いします。
◯新村雅彦副委員長 亀川障害者福祉課長。
◯亀川障害者福祉課長 全国障害者スポーツ大会にできるだけ幅広く多くの方に参加していただいて、また、障害の程度や運動能力の違いを超えて参加していただく、そしてスポーツに親しみ楽しむ、そして元気になっていただくことが大切であろうと考えております。この考え方のもとで、昨年の十一月以降、団体競技の選考方法について、身体、知的、精神の各障害者団体の代表の方と個別に意見交換を行いました。また、ことしに入ってですが、一月二十五日、二月二十五日に、全体での協議を行ったところです。
 二点目の協議のメンバーでございますけれども、これは九州ブロック大会を主催するなど、この大会に関係する団体でございまして、身体障害者関係では身体障害者福祉協会、身体障害者施設協議会、盲人協会、聴覚障害者協会、知的の関係の団体では手をつなぐ育成会、知的施設協議会、精神の関係では精神障害者福祉会連合会、それと精神科病院協会でございます。それと、この大会の県の事務局でございます障害スポーツ協会のこの九団体でございます。
 話し合いの内容についてでございますけれども、協議の中では、全国障害者スポーツ大会の趣旨、目的については、ほとんどの団体が、パラリンピックなどの競技性の高いスポーツとは異なって、障害者の社会参加の推進や、国民また県民に対して障害者の理解を深めることにあるという理解でございます。
◯高橋雅成委員 今、さまざま団体を挙げていただきましたけれども、結局、障害者スポーツをやっていた人、あるいは現にやっている人というのは、ほとんどこの中に入っていないんですね。それで、障害者スポーツにかかわっている、本当にかかわっている人、やっている人、経験者、そういった方から意見をもっと聞くべきだと思うんですけれども、いかがでしょうか。
◯亀川障害者福祉課長 先ほど申し上げました、協議、今、参加している方の中にも、実際にチームでプレーされている方もおられます。そのほかの競技関係者につきましては、今回の協議の内容を踏まえまして、必要に応じて意見をお聞きしたいと考えております。
◯高橋雅成委員 しっかり意見を聞いてほしいんですけど、先ほどの答弁で、ほとんどの団体が競技スポーツとは異なるという意見だということで一致していますという答弁でした。ほとんどとおっしゃいましたけど、私が聞いた中で、この中のメンバーでも、違うと、競技の場ですとはっきり言った方もいらっしゃいますと私、聞いていますけれども、ほとんどということが、逃げたのかどうか知りませんけど、よく本当にそういう方の話を聞いてください。
 それと、昨年の決算特別委員会のときに、現場の人に会って話を聞いてほしいと、知事に私、お願いしました。その折に、吉岡部長にもぜひというお願いをしたわけですけれども、部長はお会いしていただいたんですかね。
◯吉岡福祉労働部長 その団体の皆さんという意味ではお会いはしておりません。
◯高橋雅成委員 それでは、いつまでに新しいルールに変えるのか、それから、ことしの全国大会に間に合うのか。四月には九州ブロック大会があります。この二点についてお伺いします。
◯亀川障害者福祉課長 現在、障害者団体と協議をしております。こうした障害者団体の意見を踏まえまして、九州各県、政令市と協議を行い、できるだけ早い時期に策定したいと考えております。ことしの全国大会が十月二十三日から二十五日に千葉でございます。それに間に合うようには策定したいと考えております。
◯高橋雅成委員 これ、決めるのは何月ですか、九州代表で決めるのは。十月に間に合うということは、いつまでに決めないといけないんですか。
◯亀川障害者福祉課長 九州ブロックの代表として決めるのは六月末でございます。
◯高橋雅成委員 改めて確認しますけど、昨年、私の調べた限りでは、その辺で九州主管課長会議というのがあって、その場で決めるということでしたけれども、それまでには新しいルールが決まっておって、その新しいルールのもとで、十月の大会に、だれもが納得できる新ルールで行かせるということでよろしいんですね。
◯亀川障害者福祉課長 九州ブロックの代表チームというのは、九州各県、また政令市との協議も必要になっている部分もございます。ことしの場合は、五月二十七、二十八で九州各県の課長会議がございますので、その場で県として提案し、一定の方向性を出したいと考えております。
◯高橋雅成委員 それでは、予算委員会の場ですので、予算の話を聞きますけど、一昨年は大分大会でした。去年が新潟大会、ことしは、ことしはというか、二十二年度ですけれども、千葉大会になるわけですけれども、それぞれの予算を示してください。
◯新村雅彦副委員長 よろしいですか。
◯亀川障害者福祉課長 二十一年度でございます。一千五百四十二万八千円。二十二年度でございます。一千三百十五万でございます。
◯高橋雅成委員 答弁抜け。大分大会の。
◯新村雅彦副委員長 大分大会の分。
◯亀川障害者福祉課長 申しわけございません、一千三百万でございます。
◯高橋雅成委員 予算が全然、去年は新潟で若干、去年というか、二十一年度は若干多いんでしょうけど、この予算の中身は前年同様ということは、二チームという今までの方針、これを変える気はないということですかね。
◯亀川障害者福祉課長 選考方法については現在協議中でございますけれども、これまでもできるだけ多くの方に参加していただきたいということで、全国大会の出場チームについては二チームを基本に考えてきております。その考え方に基づきまして、二十二年度も同様の積算、計上をお願いしているところでございます。
◯高橋雅成委員 国語の問題ですけれども、できるだけ多くの人に参加してもらいたいということと、二チームに限定するということですね、この二つをきちんと理解しようと思ったら、できるだけ多くの福岡県以外のチームを出したいと、そう言っているということになりますけれども、そういう理解でいいですか。
◯亀川障害者福祉課長 申しわけございません、できるだけ幅広くということでございますけれども、先ほど申し上げました、九州ブロックの出場種目、団体競技種目が十二競技ございます。それに、九州各県、政令市を入れますと十団体でございます。そういった各県、政令市等のバランスもありますので、今のような表現になったものでございます。
◯高橋雅成委員 全然理解できないんですけど、新しいルールができて、どのようなルールになるか知りませんけれども、この予算じゃ足らんということになったら、補正予算は組まれるんでしょうか。
◯亀川障害者福祉課長 現在、選考方法について検討しております。実際にどのような選考方法になるかというのは、今わかりませんけれども、現時点でお願いしているのは、従来の基本的な考え方で予算を当初予算でお願いしているというところでございます。
◯高橋雅成委員 昨年の決算のときから一緒なんですけれども、答弁を聞いていて、県の皆さんの頑迷、暗愚、この態度に、はっきり言って、もううんざりしております。ただ、私は、県の障害者スポーツの発展ということと、ここに携わっている人たちの本当に思いをかなえるために、この場に立っております。余りにも今の部長、課長の御答弁と、皆さんがこうやってほしいと願っていることの差が大き過ぎますので、大変しつこいようで恐縮ですけれども、もう一度知事にお伺いしたいので、知事保留質問をよろしくお願いします。

福岡県議会予算特別委員会(2010年3月24日)

◯高橋雅成委員 公明党の高橋雅成です。御苦労さまです。
 全国障害者スポーツ大会への県の姿勢についてということで質問いたします。
 昨年から何回か質問して、我ながらしつこいなと思っていますけれども、障害者福祉課の対応が、私が考えるに余りにも不誠実だと思っておりますので、改めて質問させていただきます。
 カナダのバンクーバーで、この間まで冬季パラリンピックがあっておりました。日本の成績は、金が三個、銀が三個、銅が五個、合計十一個のメダル獲得で、前回のメダル九個を上回り、さらに二けたのメダルという目標をクリアしたという大変すばらしい成績を残しました。
 この大会を通じて私が一番感動したのは、最も印象深い選手に贈られる、「ファン・ヨン・デ功績賞」に、アイススレッジホッケー主将の遠藤隆行選手が選ばれました。遠藤選手は受賞のときに、この賞をもらっただけで終わらせるのは罪になる。経験で得た自信が生きる力になるというメッセージをこれからも伝えたいと話しておりまして、感動しました。このアイススレッジホッケーでは、開催地、地元のカナダを日本が敗りました。試合に敗れた日の夜に、カナダの選手と家族が集まった席でこう言ったそうです。日本チームがメダル争いに絡んできたことで、我々のスポーツがさらにレベルを上げておもしろくなっていくだろう。皆で日本チームの活躍に乾杯しようと、スポーツマン精神を見せたとある新聞に載っており、これにも非常に感激をいたしました。
 パラリンピックという名称は、もともと半身不随(パラピレジック)プラス、オリンピックの造語ですけれども、一九八五年から、並行(パラレル)プラス、オリンピックで、もう一つのオリンピックと解釈されるようになりました。戦争で負傷した兵士たちのリハビリテーションとして始まったパラリンピックですけれども、今や障害者スポーツの世界最高の競技の場であることは、だれもが認める時代になったと思っております。
 そこで、パラリンピックに日本から出場するための国内の登竜門の一つが、全国障害者スポーツ大会です。世界最高の競技の場としてのパラリンピックと、日本の全国障害者スポーツ大会の関係を知事はどのように認識されておるでしょうか。まず、そのことをお伺いいたします。
◯江口吉男委員長 麻生知事。
◯麻生知事 ちょっとよくわからないんですけれども、全国障害者スポーツ大会がパラリンピックのために置かれていると私は考えていません。どこまでも、この全国の大会というのは、障害者の皆さんが、その障害の程度はいろいろ違いはありますけれども、できるだけスポーツに親しんで、大いに心を広げ、友達をつくっていくんだという精神のもとに各県で開かれている障害者スポーツ大会、その延長として行われているのであって、パラリンピック用の選手を養成したり、あるいはつくるためにやっておるとは私は理解していません。
◯高橋雅成委員 私は、パラリンピック選手を養成するためにこの全国大会があると言っているわけではなくて、この全国障害者スポーツ大会に優勝する、そういう選手がパラリンピックの選手として選ばれていくんですね。そこだけじゃないです。それプラス、世界大会に出場経験があるとかいろいろな条件がその後かまされてきて、パラリンピックの選手になる。ですから、登竜門の一つと私は申し上げました。そういう意味のパラリンピックと、全国障害者スポーツ大会の関係ということで認識をお伺いしましたけれども、知事はそういう認識だということですので、そういうふうに理解しておきます。
 それで、全国障害者スポーツ大会に出場する選手、団体は、県とか九州で最高の選手であるべきだと私は思っております。それがスポーツマン精神だと思います。できるだけ多くの人に参加させるという、私にとってはよくわからない理由で、二番手、三番手の選手を参加させるというのは、全力を尽くす他県からの選手やチームに対して非常に失礼だと考えますけれども、いかがでしょうか。
◯麻生知事 繰り返し申し上げておりますけれども、私どもがなぜ障害者の皆さんのスポーツ大会を毎年開いておるかというと、これはどこまでも、障害者の皆さん、障害の程度とかいろいろあるんですけれども、障害者の皆さんにスポーツに親しんでもらう。それによって友達も得てもらうし、健康にもなってもらいたい。あるいは、そういう元気な姿を県民の皆さんに見せることによりまして、県民の皆さんから、障害者の皆さんのいろいろな活動に対する心からの理解、応援を得る、そのような機会をつくるためにやっているわけなんですね。
 全国大会に出るのに、一番になったら当然出ろという話で、ここが違ってくるんですけれども、私どもは強いということに対しては確かに敬意を払います。払いますけれども、強いチームは毎年強い。毎年強くて、ここ何年かの間同じチームが全国大会に出るというのは、これは強いという条件で敬意を払いますけれども、ほかの二番手、三番手のチームがおるんだから、そういう方々にもチャンスを与えてもらいたいと。ついては、毎年優勝して何回も出るチームについては、少し遠慮をしてもらって、そして、二番手、三番手と言われますけれども、二番手、三番手の方にも機会を与えるような出場方式をとろうということでやってきたんですね。
◯高橋雅成委員 パラリンピックが、当初それこそリハビリの大会であった時代から、今競技の場と変わってきましたね。私は全国障害者スポーツ大会も、確かに厚生労働省の管轄で、そういう大会ではあるんですけれども、そこに参加している選手の意識というものが、パラリンピック同様に今変化している。要するに競技の場だという認識が、出場している障害スポーツに取り組んでいる方その人たち自身に、そういう意識の変化が起こっている。そのことをわかってほしいんですね。ですから、二番手、三番手でもいいとおっしゃいますけれども、競技している方々その人が、優勝しないと出られない、優勝するから出られるんだと考えていらっしゃるんです。そのことを私はわかっていただきたいと思っています。
 それで、知事は昨年の決算特別委員会のときに、皆さんが納得できるような新しいルールを検討したいと答弁していただきました。それから、今議会でもできるだけ早い時期にそのルールをつくるんだという決意をいただきまして、私はそのことには大変満足しています。
 ただ、その答弁に対する障害者福祉課の対応が、私はちょっとおかしいのではないかと思うんです。今私が言ったように、だれよりも、競技に取り組んでいる選手の話をまず直接会って聞くべきだと思うんです。新ルールづくりをことしの全国障害者スポーツ大会に間に合わせたいということでしたので、できるだけ早く、競技に参加している個人やチームの意見を直接聞くべきだと。また、とりわけ昨年、全国大会参加を辞退させられたチームの関係者に、知事にとは言いませんけれども、担当者が会うべきだと思います。そして、そこで意見をちゃんと聞くべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。
◯麻生知事 繰り返し申し上げますけれども、我々は障害者スポーツ大会を、アスリートを育てるとか、今だんだん障害者スポーツもプロ化してきましたけれども、そんなすごい選手を育てるためにやっているんじゃないんですよ。それはそれで私は敬意を払います。払いますけれども、それはやっぱり別の考え方なのでありまして、私どもは広く障害者の皆さんに参加してもらいたいという考え方でやっているんですね。この考え方を繰り返し私は申し上げました。その考え方のもとに我々は今調整をしているということなんですね。どうも話を聞いていますと、とにかく勝ったから出さないのはけしからんではないかという、頭からそういう態度をとられても、やっぱり我々はそういう考え方をとっていませんから、どうしてもなかなか溝が埋まっていないのが現状ではないかと思います。
◯高橋雅成委員 知事も柔道有段者でスポーツをやっていらした方ですので、それこそよくわかって、釈迦に何とかかもしれませんけれども、競技に取り組んでいれば、当然自分自身が強くなりたいですよね。うまくなりたい、上手になりたい、強くなりたい、勝ちたいというのが、どんな競技に取り組んでいてもそうだと思うんですね。私はそれを、パラリンピックに出るような選手を私たちが育てるとか、そんなことで申し上げているのではなくて、強くなりたい、うまくなりたい、そして勝ったらまた次の大きな大会に行きたいという気持ちを大切にして、健常者にとってごく当たり前な、そういう大会にしたらどうですかと提案をしているのであって、知事がおっしゃっているみたいに、そんな物すごい選手を育てるんだとか、パラリンピックに出るような選手を育てるんだとかいうことではないんです。そこは、溝とおっしゃいますけれども、知事も私のを少し違うように誤解している感じがしますので、わかっていただきたいと思います。わかってくれなくてもいいですけど。
 それで、この三月に障害者競技団体の五チームが集まったそうです。団体チームがですね。そのとき話し合った際に、昨年辞退したチームから、要綱を変えることを前提で私たちは辞退したんですという話が出たそうなんです。ですから、彼らの思いを反映した要綱の変更を望みます。いつまでというのは、知事、いつごろまでにこの要綱を変更する、できるだけ早い時期にということでしたけれども、お考えはありますか。
◯麻生知事 障害者の皆さんが、スポーツをして強くなりたいという気持ちを持つという、それ自体は私は別に否定しておるわけでもないし、立派なことだと思うんですね。ただ、障害者スポーツを、よく私どもが考えておかないといけないのは、障害の程度というのは随分違うんですよね。違う程度の皆さんを一律に、ただ強くなるということの精神を余りに強調しますと、やっぱり障害の程度のひどい人たちはなかなかスポーツに入ってこれないということにもなりかねないものですから、そこは私は非常に慎重に考えなければならんと言っているんですね。
 それから、競技団体の意見を聞けと言いますけれども、競技団体の意見というのは、どちらかというとスポーツ、さっき言ったようなアスリート型というか、この前もだれか言っておられましたが、アスリートになりたいんだという方々が非常に多いんだけれども、一方で、いろいろな、いわゆる障害者の皆さんをお世話している障害者団体、あるいは施設があるわけですね。その方々の意見を聞きますと、これはむしろ今のようにできるだけ多くの皆さんが参加できるような精神のもとにやってもらいたいんだというのが、圧倒的に多いんですね。という実態の中で我々は調整しておるということです。
 時期は、いつやれるかというと、これはちょっとまた、今どういう調整段階か私はよく承知しておりませんので、いつということはちょっと申し上げられませんけれども、そのような考え方で、私どもは何とか道を見つけ出していきたいということでやっておることを申し上げておきたいと思います。別に、決して不誠実にやっておるわけではないということを申し上げたいと思います。
◯高橋雅成委員 じゃあ、もう最後にしますけれども、障害者の施設とかの関係団体、障害者じゃない方がたくさんいらっしゃるわけですよ。障害者スポーツにかかわっていないというだけではなくて、障害者ですらないという方、健常者の方でそういう面倒を見ていらっしゃる方もたくさんいます。だから、私はなるべく現場に近い、そしてそういう障害者でスポーツに取り組んでいる人たちに話を聞いてくれということを申し上げておるわけです。なかなか溝が埋まらないということで、これ以上話しても無駄みたいな気がしてきましたのでやめますけれども、課長は必要があれば聞きますと言いました。必要性を感じているのかどうか僕はわかりませんけれども、ぜひ聞いていただきたいと再度要望して終わります。ありがとうございました。(拍手)

麻生だからしょうがないと言っているばあいじゃないな。機会の平等すら侵害。


そして,今年もまた,選考委員会で,九州大会で優勝したグランドソフトボールチームを出場させないことを決定。
簡単に7月10日のエントリーで触れています。