日弁連シンポジウム「女性と貧困」

3月7日の日本弁護士連合会のシンポジウム「女性と貧困」での国立社会保障・人口問題研究所 阿部彩氏の講演から抜粋(解放新聞2418号より)。

子供の貧困率を比較すると,日本はOECD諸国のなかでも真ん中より少し高い程度だ。しかし,これが母子世帯の貧困率となると2番目に高くなる。母子世帯の就労率は,2005年統計で4番目であり,日本の母子世帯の特異性を一文にまとめるとするならば,「母親の就労率がひじょうに高いのにもかかわらず,経済状況が厳しく,政府や子どもの父親からの援助も少ない」といえるだろう。
どの国にも貧困層に類される子どもはいる。しかし政策によって貧困率は大きく改善されている国がほとんどだ。日本では,政策による貧困削減効果が少なく,女性の就労による貧困削減効果も少ない。それでも保険料や厚生年金などはあがっているから,苦しい状況だといえる。
2005年統計で,所得再分配後の貧困率が再分配前より高くなっているのは18か国で日本だけである。つまり,社会保障制度や税制度によって,日本の子どもの貧困率が悪化しているということだ。日本政府がいまとりくむべきなのは,「少子化対策」ではなく,「子どもの幸せのための」対策。まず貧困を防止する機能を整備しなければならないのである。・・・・