博物館法施行規則改定関連のパブコメ結果

1月18日のエントリー『博物館法施行規則改正関連(パブリックコメント開始)』や,2月19日のエントリー『学芸員養成の充実方策について(報告)が出ています』で触れた,文部科学省の「これからの博物館の在り方に関する検討協力者会議第2次報告書」などに関するパブリックコメントの結果が,e-govに出ています。
「学芸員養成の充実方策について」(これからの博物館の在り方に関する検討協力者会議第2次報告書(案))に関する意見募集の結果概要について
「博物館実習ガイドライン」(案)に関する意見募集の結果概要について
自分の意見は反映されなかったパブコメ,他の方はどんな意見を出していたんだろうと読んでみましたが,なかなか興味深く,面白いです。感想と方向性を混ぜて。
○単位数が増えるのは必ずしも良いこととは思っていませんでしたが,さすがに同様の意見の方も多い。(理由は多岐に渡ります)
○特に,「博物館資料保存論」は,重要そうな科目に見えつつ,実は学芸員の本来の専門性を見失っての報告案となっていました。そのため,博物館資料保存論は不要という意見が多く見られます。また,講師の確保が困難で,例え施行規則を改定しても全く意味のない科目になり,学生の博物館離れを促進しかねないことが懸念されます。
○「博物館教育論」については,多様な意見が見られますが,「博物館教育」に関する学問は未だ成立していないように思いますし,「技術に流れがち」という批判のある「博物館展示論」と一体のものとして取り扱い,「博物館展示・教育論」とすることが妥当に思います。
○「博物館経営論」についても,「博物館経営(ミュージアム・マネージメント)」について学ぶと言いながら,「博物館経営(ミュージアム・マネージメント)」って,そりゃ一体なんだろうと疑問ばかり。コレクションマネージメントとかも含めて博物館運営技術=ミュージアムマネージメントという概念はありますが,ミュージアムマネージメント=博物館経営って何。まあでも,非営利組織の経営学の手法を用いて博物館を見るのは意味があるように感じました。
○全体を改めて見て,今回の報告書が,「学芸員」を特化・分化させようとしているのか,それともMuseum Basicsに焦点を当てようとしているのか,全くわからなくなりました。資料を担当する「学芸員」には自ら研究できる能力が不可欠で,大規模博物館ではそれに特化することもできますし,中・小規模博物館では特化するわけにもいかない。そういう事情はありますが,そういう事情を書くこともなく,報告書ではあっちふらふら,こっちふらふらのつまみぐい。
○「今回のパブリック・コメントの募集期間はあまりにも短すぎる。せめて募集期間を1か月程度設ける・全国の博物館等には周知を徹底する,等の手順は必要である。今後考慮してもらいたい。」という趣旨の意見が5件寄せられていたようです。今後,施行規則改定にあたっては,行政手続法に基づくパブリックコメントがあるものと思います。

行政手続法
第三十九条  命令等制定機関は、命令等を定めようとする場合には、当該命令等の案(命令等で定めようとする内容を示すものをいう。以下同じ。)及びこれに関連する資料をあらかじめ公示し、意見(情報を含む。以下同じ。)の提出先及び意見の提出のための期間(以下「意見提出期間」という。)を定めて広く一般の意見を求めなければならない。
 第一項の規定により定める意見提出期間は、同項の公示の日から起算して三十日以上でなければならない

施行規則改定に関するパブリックコメントは,単に法定の30日ということだけではなく,日本博物館協会や県博協など,多様な手段で周知されるよう,文部科学省に期待します。