博物館法改定続報

参議院の文教科学委員会で,社会教育法等の一部を改正する法律案の審議が行われ,4人の質問のあと,採決が行われ,全会一致で可決されています。
なお,同様に附帯決議案についても,全会一致で付することと決したとのことです。
インターネット国会中継から,付帯決議案を聞き取りました(後日,改行等を修正しています)。

政府及び関係者は,本法の施行に当たり,次の事項について特段の配慮をすべきである。

  • 一 生涯学習の振興、社会教育の推進に当たっては、国民のニーズに応じた学習機会の提供と学習活動の支援に努めるとともに、各地域における学習ニーズの継続的な把握、多様な取組に係る情報の収集と提供など、国民の自発的、主体的な学習が担保されるよう配慮すること。
  • 二 国民の生涯にわたる学習活動を支援し、学習需要の増加に応えていくため、公民館、図書館及び博物館等の社会教育施設における人材確保及びその在り方について検討するとともに、社会教育施設の利便性向上を図るため、指定管理者制度の導入による弊害についても十分配慮して、適切な管理運営体制の構築を目指すこと。
     また、各地方公共団体での取組における地域間格差を解消し、円滑な運営を行うことができるよう様々な支援に努めること。
  • 三 生涯学習・社会教育に係る個人の学習成果が、学校、社会教育施設その他地域において行う教育活動として生かされるよう、各個人の学習活動と地域社会の教育活動との循環につながるような具体的な取組について支援に努めること。
  • 四 公民館、図書館及び博物館が自らの運営状況に対する評価を行い、その結果に基づいて運営の改善を図るに当たっては、評価の透明性、客観性を確保する観点から、可能な限り外部の視点を入れた評価となるよう、国が関係団体による評価指標作成等に対して支援する等、適切な措置を講じるとともに、その評価結果について公表するよう努めること。
     その際、公民館運営審議会、図書館協議会及び博物館協議会等を通じて、地域住民等の意見が反映されるよう十分配慮すること。
  • 五 博物館については、多様な博物館がそれぞれの特色を発揮しつつ、利用者の視点に立ったより一層のサービスの向上が図られるよう、関係者の理解と協力を得ながら登録制度の見直しに向けた検討を進めるとともに、広域かつ多岐にわたる連携協力を図り、国際的に遜色のない博物館活動を展開できるような環境の醸成に努めること。
  • 六 地域における教育力の向上のため、学校、家庭、地域等の関係者・関係機関の連携を推進し、各施設資料の相互利用や人材の相互活用などを図るとともに、多様な地域の課題等に応じた機能を持つネットワークの構築を推進すること。
     その際、学校、家庭、地域の連携を推進する上で重要な役割を果たすPTAについて、その活動や運営などの実態把握に努め、「学校支援地域本部事業」における連携が円滑に進むよう十分配慮すること。
  • 七 社会教育主事、司書及び学芸員については、多様化、高度化する国民の学習ニーズ等に十分対応できるよう、今後とも、それぞれの分野における専門的能力・知識等の習得について十分配慮すること。
     また、各資格取得者の能力が生涯学習・社会教育の分野において、最大限有効に活用されるよう、資格取得のための教育システムの改善、有資格者の雇用確保,労働環境の整備,研修機会の提供など、有資格者の活用方策について検討を進めること。
  • 八 社会教育の推進に当たっては、社会教育委員の制度等を積極的に活用・活性化するとともに、社会教育委員がその重要な職責と役割を十分に認識するような環境整備を図ること。

    右決議する。

指定管理者の弊害については,衆議院での附帯決議よりも分かりやすく,はっきりとしています。
また,5項目めが,特に博物館について触れられていることが新しいですね。登録制度の見直しを進めるべしとの「国民総意」とのことで。。。。。
4項目めの自己評価について,衆議院では「国がガイドラインを示す等」となっていましたが,「関係団体による評価指標作成等に対して支援する等」と替わりました。日本博物館協会でも評価指標の検討を行っているとのことで,そのあたりも整理がついてきたのかもしれません。

6月4日追記

参議院本会議で,賛成多数で可決されています。

衆議院文部科学委員会での審議については5月26日のエントリーで触れています。

6月26日追記

6月11日に社会教育法等の一部を改正する法律(平成二十年法律第五十九号)が公布されています。
あわせて,文部科学省令第十八号として「社会教育法等の一部を改正する法律の施行に伴う文部科学省関係省令の整備等に関する省令」が定められています。博物館法施行規則関係については次の通り。

第三条 博物館法施行規則(昭和三十年文部省令第二十四号)の一部を次のように改正する。
  第五条列記以外の部分中「左の」を「次の」に,同条第二号中「学芸員補に相当する職又
 はこれと同等以上の職として文部科学大臣が指定するもの」を「法律第五条第二項に規定す
 る職」に改める。
  第七条第二項中「第二項」の下に「各号及び大学通信教育設置基準(昭和五十六年文部省
 令第三十三号)第五条第一項第二号」を加える。

ここの構造が分かりにくいところです。

短大で博物館に関する科目を修得した人が,3年以上学芸員補の職にあった場合は,学芸員の資格を取得できます(法第5条第1項第2号)。
また,短大で博物館に関する科目を修得した人が,博物館の事業に類する事業を行う施設における職で,文部科学大臣が指定する職(博物館相当施設や国立博物館・学校(一条校)・教育委員会において資料の収集・保管・展示・調査研究を行う職,社会教育主事,司書)に3年以上あった場合も,学芸員の資格を取得できました(法第5条第1項第2号&旧法第5条第2項)。
今回の法改正では,第5条第2項において「博物館の事業に類する事業を行う施設における職」が「官公署,学校又は社会教育施設(博物館の事業に類する事業を行う施設を含む。)における職」と範囲が広くなっています。そのため,短大で博物館に関する科目を修得した人が,例えば,必ずしも博物館の事業に類する事業を行っていない図書館で司書の職に3年あった場合でも学芸員の資格を取得できるようになったわけですし,また教育委員会社会教育主事に3年あった場合でも学芸員の資格を取得できるようになったわけです(この解釈で正しいのでしょうか>詳しい方教えてください)。


一方,博物館法施行規則では,法第5条第1項第3号を受けて,試験認定について規定されています。その中で,短大卒(博物館に関する科目はとっていなくて良い)であって学芸員補の職,または文部科学大臣が指定する職(博物館相当施設や国立博物館・学校(一条校)・教育委員会において資料の収集・保管・展示・調査研究を行う職,社会教育主事,司書)に3年以上あった者は受験資格があるとなっていました(旧規則第5条第2号)。
今回の規則改正では,「法律第五条第二項に規定する職」と改めることで,「官公署,学校又は社会教育施設(博物館の事業に類する事業を行う施設を含む。)における職」という規定が追加された形になります。とはいえ,実際上,制限が厳しくなったわけではありません。


結局,規則改正は「学芸員補の職に相当する職」が,これまで施設による限定があった部分と,施設による限定がなかった部分があったので,そこを整理したということだと思います(この解釈で正しいのでしょうか>詳しい方教えてください)。



さて,文部科学事務次官都道府県教育委員会等宛の「社会教育法等の一部を改正する法律等の施行について(通知)」(平成20年6月11日 20文科生第167号)という文書があります(日本図書館協会のサイトにアップされています。なぜか文書番号が抜けていますが)。この文書の中に「留意事項」として,補足的な説明がなされています。ちょっと興味深い部分もあるので,博物館関係のものを引用します。(追記文部科学省のサイトにもアップされています(pdf)。)

1 社会教育における学習の機会を利用して行った学修の成果を活用して行う教育活動その他の活動の機会の提供等について(博物館法第3条第1項第9号)
 各号で規定している「教育活動その他の活動」とは,具体的には,例えば,学校における「学校支援地域本部事業」として行われるボランティア等による支援活動,図書館における子どもへの読み聞かせ活動,博物館における展示解説活動などが挙げられる。
 このような活動の機会を提供する事業の実施については,社会の要請や地方公共団体や各教育機関等における必要性などの観点から,最終的には教育委員会が,学校長や社会教育施設の長の判断を尊重しつつ,判断するものである。したがって,学校,社会教育施設及び教育委員会は,このような活動の機会の提供に関する地域住民等の要望についても,これを受け入れるか否かを適切に判断することに留意すること。
2 公民館,図書館及び博物館の運営状況に関する評価及び改善について(博物館法第9条)
 公民館,図書館及び博物館の運営状況に関する評価の具体的な内容については,第一義的には評価の実施主体である各館が定めるものであるが,その際,利用者である地域住民等の意向が適切に反映され,評価の透明性・客観性が確保されるよう,例えば公民館運営審議会や図書館協議会,博物館協議会等を活用するなど,外部の視点を入れた評価を導入することが望ましいこと。
4 図書館協議会及び博物館協議会の委員について(博物館法第21条)
 図書館協議会及び博物館協議会は,地域住民をはじめとする利用者の声を十分に反映して運営を行うために設置するものであり,地域の実情に応じて多様な人材の参画を得るように努めること。なお,今回の改正で追加された「家庭教育の向上に資する活動を行う者」とは,子育てに関する保護者からの相談に対応している者や子育てに関する情報提供に携わっている者等が想定される。これらの者を委嘱するか否かは,他の委員の構成や各館の目的・使命や地域の状況等を踏まえ,設置者である各教育委員会が適切に判断することに留意すること。
5 図書館及び博物館資料における電磁的記録の扱いについて(博物館法第2条第3項)
 「電磁的記録」とは,具体的には,音楽,絵画,映像等をCDやDVD等の媒体で記録した資料や,図書館であれば市場動向や統計情報等のデータ等が想定される。従来もこれらの資料の収集・提供が排除されていたわけではないが,今後こうした資料の収集・提供又は展示が重要さを増すと考えられることから今回明示的に規定したものであること。なお,図書館資料における電磁的記録については,図書館法第17条の規定に関し,従前の取扱を変更するものではないこと。

ボランティア活動等の実施の可否は「最終的には教育委員会が」,「社会教育施設の長の判断を尊重しつつ,判断するものである」という表現は良くわかりませんね。公立博物館ならともかく,私立博物館のことを忘れて欲しくはありません。それに,公立博物館にしても,社会教育施設の長の判断で行って良い部分だと思いますけれども。
評価について,「評価の実施主体である各館が定める」という表現は,良いものだと思います。
あと二つ,電磁的記録を付け加えたわけや,博物館協議会に家庭教育の向上に資する活動を行う者という表現を追加したわけは,依然として良くわかりませんが。

2008年10月28日追記

気がついていなかったので追記

一般社団法人及び一般財団法人に関する法律及び公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成18年法律第50号)から

(博物館法の一部改正)
第二百六十七条 博物館法(昭和二十六年法律第二百八十五号)の一部を次のように改正する。

  第二条第一項中「民法(明治二十九年法律第八十九号)第三十四条の法人」を「一般社団法
 人若しくは一般財団法人」に改める。
  第二条第二項中「民法第三十四条の法人」を「一般社団法人若しくは一般財団法人」に改め
 る。

  第十一条第二項中「左に」を「次に」に改める。
  第十一条第二項中「添附しなければ」を「添付しなければ」に改める。
  第十一条第二項第一号中「写」を「写し」に改める。
  第十一条第二項第一号中「見積」を「見積り」に改める。
  第十一条第二項第二号中「若しくは寄附行為」を削る。
  第十一条第二項第二号中「写」を「写し」に改める。
  第十一条第二項第二号中「見積」を「見積り」に改める。

附則 (平成一八年六月二日法律第五〇号) 抄
(施行期日)
1  この法律は、一般社団・財団法人法の施行の日から施行する。
(調整規定)
2  犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正す
  る法律(平成十八年法律第   号)の施行の日が施行日後となる場合には、施行日から同
  法の施行の日の前日までの間における組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法
  律(平成十一年法律第百三十六号。次項において「組織的犯罪処罰法」という。)別表第六
  十二号の規定の適用については、同号中「中間法人法(平成十三年法律第四十九号)第百五
  十七条(理事等の特別背任)の罪」とあるのは、「一般社団法人及び一般財団法人に関する
  法律(平成十八年法律第四十八号)第三百三十四条(理事等の特別背任)の罪」とする。
3  前項に規定するもののほか、同項の場合において、犯罪の国際化及び組織化並びに情報処
  理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律の施行の日の前日までの間におけ
  る組織的犯罪処罰法の規定の適用については、第四百五十七条の規定によりなお従前の例に
  よることとされている場合における旧中間法人法第百五十七条(理事等の特別背任)の罪は、
  組織的犯罪処罰法別表第六十二号に掲げる罪とみなす。

平成19年政令第275号から

   一般社団法人及び一般財団法人に関する法律の施行期日を定める政令

 内閣は、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成十八年法律第四十八号)附則第一
項の規定に基づき、この政令を制定する。
 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律の施行期日は、平成二十年十二月一日とする。

本年,12月1日から,博物館法第2条の(定義)部分の改訂があるということですね。